クッション爆弾

クッション爆弾

第一章
※ダークマター
宇宙空間に存在し,質量だけをもち,目に見えない物質。暗黒物質ともいう。(コトバンクより)


Mは劣等生でした、のろまでマヌケで、そして何と言っても変わり者でした。
中学校の夏休みが終わって二学期の授業が始まります。
教師「お前二学期早々から教科書忘れたのか、バカが、」
先生はMを大いにナジります。
教師「では夏休みの課題を早速お前に発表してもらおうか、まさか忘れたとは言わさんぞ。」
M「はい、ダークマターについて考えました、宇宙において今観測出来る物質は全体の4%でしかありません、残りの96%はダークマターと呼ばれています、そこで僕はこの比率は今現在生きている生命体と過去に死んだ生命体の総数ではないかと考えた次第であります。
4%は今生きている我々生命の総数、残り96%は既に死んでいる過去の生命生命の総数と言う訳です。圧倒的に過去に死んだ生命体の数の方が多いのです、4:96の比率です。
では死後の世界の方が大きくて広い?
そうかも知れません『無い』のほうが『在る』より絶対に多いのですから、ここで僕はこの4:96の比率を生死不変の比率と呼ぶことにしました。」
教師「これがお前の夏休みの課題か?いつから取り掛かった?」
M「昨日です、昼寝をしてたらふと思いつきました。」
教師「宇宙の謎ってのはなもっと複雑なんだよ、それをお前は簡単かつ稚拙な下らん解釈で結論付けるつもりか?お前の様な考えを持つと誰も深くまで研究しなくなるんだ、分かるか?そしてお前みたいなやつがいるとこの学校の生徒にも悪影響が出るんだ、
お前の昔の作文読んだけどな、
自分の成績の悪さやブキッチョさやノロマさを平和という壁を作って逃げている様にしか見えんのだ、分かったら壇上で皆に謝れ、そしてその下らん説を撤回しろ、さあ早く、」
壇上に上がるとMは、
「生命体の仲間として14年間生きて参りました、そして生命体の長である人間様に下らない説を申し上げた事を深くお詫び致します。」
教師はそれを聞いて煮えたぎるが如く起こりました。
「お前のその言葉が気に入らん、バカにしてるのか、そこに跪け、そして我々に土下座しろ、」
Mは言うとおりにしました。
教師は土下座したMの頭部に蹴りを入れました、Mは鼻血を出して転がります。
教師「もうお前は学校に来なくてもいい、嫌、来てもらっては困る、我が校はエリートを育てる学校だ、お前の様な癌細胞に居てもらっては学校全体、嫌我が国自体が腐敗する、退学だ今すぐ帰れ、二度と来るな。」
M「しかし、中学卒業できないと僕の親が困るんです、親に迷惑かけたくないのです。」
教師「お前の様な腐ったやつには最高の学校を紹介してやる、軍人養成の士官学校だ、そこで腐った精神を叩き治してもらえ、まあそこで生きていければの話だがな、」
Mは泣く泣く学校を後にしました。
この時代は言わば戦時中でしたので教師もここまで厳しかったのです。
Mが出ていった後
A子「先生、さっきのM君のお話4%はあり得る話なのではないでしょうか?アッすみませんもちろん先生のおっしゃったほうがが96%正しいですが、」
D君の独り言「その逆だったりして、、」
教師「その比率はもう忘れろ、そしてMの事もな、」
A子「はい、分かりましたM君の24倍先生は正しいです、」
D君の独り言「その逆だったりして、、」
士官学校に放り込まれたMに意外な展開が待っていました、それは誰も想像だにしなかった事なのです。

第二章
※フィラデルフィア実験

1943年10月にフィラデルフィアで統一場理論の実験が行われ、1隻の駆逐艦の姿が完全に見えなくなり、360キロメートル離れたバージニア州のノーフォークへ瞬間移動したという。また、この事件は新聞でも報じられていたという。

「提督、そろそろ敵艦隊の射程内に入ります。丁度強い追い風ですが」
「よし、では作戦開始だ。各艦から10隻づつ空気注入後発進させるんだ、いや10個づつかな、、」
敵艦隊主力艦にて、
「艦長、そろそろ射程距離内ですが、」
「よし、では敵艦隊を十分に引きつけてから砲撃開始だ、数で行けばこちらが絶対有利だ、偵察機からの情報だと向こうはこちらの半分以下の戦力だ、全員配置に付かせろ。」
「待ってください、艦長、敵の数が、、なな何と四倍に増えてます、しかも更に増え続けております、」
「何だと、どういうことだ、フィラデルフィア実験でも完成させたとでもいうのか、」
「艦長、しかも殆どの敵艦が凄いスピードでこちらに向かってます、ホバークラフト並の速さです、その数5千、」
「何だと本隊の5倍ではないか、」
「信じられません、敵艦のスピードが、早すぎます。」
「え~い、やむを得ん全艦全速後退、悔しいが撤退だ。」
「提督、敵艦隊が撤退して行きます、それにしてもここまで上手くゆくとは、信じられません、」
「向こうは圧倒的戦力を誇っている、それがかえって仇となった様だね、さて我々も呉に戻るとしよう、」
「それにしてもゴム風船で出来た戦艦がここまで功を奏するとは、流石名将であります。」
「おいおい、よしてくれよ、それに名将とか提督とか、その呼ばれ方好きではないんだ。」
こうして茶番『戦艦ゴム風船作戦』は大成功に終わったのです。
祝勝パーティーにて
「おめでとうM提督、それにしてもここまで上手くいくとは私でも想像できなかった。士官学校戦略推進部での君の才能が開花したと言える。」
「あまりにも茶番劇過ぎる作戦でお恥ずかしい限りであります、しかしこの作戦が敵に知れるのは時間の問題です、なので同じ茶番はこれが最初で最後でしょう、」
「この茶番が知れると向こうは怒り心頭だろうな、次の作戦は如何なるものか期待しているぞ。」
「はい将軍、もう既に進行中であります。サイキックゲームがどこまでいけてるかですが、」
サイキックゲームがMの最大の目標でした。
名門中学から士官学校へと放り込まれたMは厳しい訓練を覚悟していたのですが全くそうではありませんでした。
この後は士官学校時代のお話となりますが今回はここまでとさせていただきましょう。

第三章
※史上最大の茶番劇

各戦艦に戦艦型ゴムボートを数隻搭載させ開戦直前にそれらに空気を注入、そして予測していた追い風にのせてホバークラフト並の速さで敵陣に接近、相手方のレーダーには突然数多の戦艦が膨らむように現れ、しかも信じられないスピードで接近している様に映る為即時撤退を余儀なくされた。フィラデルフィア実験の完成かとまで恐れられたが、スパイの情報により作戦内容が判明。

士官学校入学からはや10年以上経ちました。
厳しい訓練集団生活を覚悟していたのですが
意外にも入学初日から贅沢な個室を与えられ好きな分野の勉強をしながらもその分野から全ての科目教科が紐解かれる様な全方向的独特のカリキュラムでしたので、Mは加速度的に知識を増やして行きました、その知識はやがて発見発明となり軍のデータベースに入って行ったのです。
全世界の気象情報や予報、ハッキング等、やがて生物学にハマり、そこからの全方向的且つ画期的な知識、発見、発明が完成する矢先に校長に呼び出されたのでした。
それは敵国が今までに類をみない大艦隊を率いて我が国を侵略してくるとの話でした、
我が軍の脆弱な艦隊ではとても太刀打ち出来ないとの事です。玉砕必至の出陣を決断しなくてはならないとの事でした。Mは考えがあるので自分に艦隊指揮を任せて欲しいと志願しました。
将軍となった校長は待ってましたとばかりにそれを受け入れたのです。
それが「史上最大の茶番劇」の始まりでした、敵艦隊を全て撤退させるという偉業を成し遂げたのです。
怒り心頭な敵国は我が国の首都圏への核攻撃を計画し始めました。
しかし我が国ではMが開発中の生物学における画期的発明が既に成されておりました。
潜在能力を引き出す「サイキックゲーム」から始まり「虫の知らせ」を情報化するマシンを完成させたのです。
つまり虫との対話が可能になったのでした、、、

第四章
※バタフライ効果(コトバンクより)
《butterfly effect》
ある系の変化が初期条件に極めて鋭敏に依存する場合に見られる、予測不可能な挙動のたとえ。もとは、米国の気象学者ローレンツが1972年に行った「ブラジルでの蝶のはばたきがテキサスに竜巻を引き起こすか」という公演の演題に由来する。大気の対流が決定論的な微分方程式に従うにもかかわらず、数値計算の精度をいくら向上させても事実上正確に予測できないカオスの性質をもつことを象徴的に表現したものとして知られる。
Mより「つまり蝶のはばたきが竜巻を引き起こすのです。」

Mが作ったマシンは虫たちとの対話が可能となったのです、
そしてサイキックゲームによりM本人の潜在能力も大いに引出されました。
そしてある日、いわゆる「虫の知らせ」がやってきました。
その虫の知らせによりますと、『この国が危ない、
その事は彼ら虫たちのみならず他の種にも多大なる損害を被る可能性があるので何とかして欲しい』との事でした。
Mはこちらへの核攻撃を示唆したものだと判断しました。
カオス理論を交えての計算後、
『一匹の蝶を呼び出して敵国のある地域で羽ばたいて欲しい』とある地域の蝶に伝達をお願いしたのです。
昆虫、植物に至るまで彼らのネットワークは世界中に広がっています。
これは自分という個ではなく全体の種という生き物だからなのでしょう、
つまりは自分という個より種が大切なのでしょう、
そして生命の危機に関しては特別敏感なのでしょう、
動植物である以上生命の危機には敏感であるのが当然なのですが、
悲しいかな人間が一番鈍感なのでしょう、
『でしょう』が多くなりましたが蝶は快く引き受けてくれたのです。
そして植物のネットワークも連携してくれるとの事でした。
そして気象衛星の画像から突然現れたハリケーンが映し出されました。

しかも一つの狭い地域で長期間停滞しておりました、
敵国のミサイル基地です。
この大嵐では核ミサイル発射は不可能です。
打つ手が無くなった敵国はMが開発した技術を盗む様にスパイに命じました、
そしてその後Mの殺害を命じたのです.

第五章
※R複合体(爬虫類脳)

一般的に、人間の脳の主要部分は「爬虫類脳(R複合体)」と呼ばれている。爬虫類脳は攻撃性や冷血性、所有欲や支配欲、強迫観念や儀式的行動、服従、崇拝といった人間の性質に影響している。爬虫類脳は現在の地位や権力、優位性や自意識を、「生き残れないかもしれない」といった恐怖から守るように作用するため、全ての争いは爬虫類脳から生ずる。また性的刺激やマネーに関わる商品広告は全て爬虫類脳を標的にしたものである。(デビッドアイクより)
爬虫類に悪い気がしますねえ、(Mより)

※マッハの原理

物体に働く慣性力は宇宙にある他の物質との相互作用によって生じる、とする原理。 ... こうしてマッハは、地球上の物体の運動において、地球に対する宇宙全体の相対運動の影響を考慮すべきことを主張した。 これをマッハの原理という。(日本大百科全書より)
水の入ったバケツを回転すると、遠心力で中央部の水面はへこみ、周縁部は盛り上がる。これをバケツは静止していて宇宙の物質が回転することで縁が盛り上がると考える。

やはり天動説もありですなあ(Mより)

Mは自分の部屋、つまり士官学校の研究室で次の研究に取り組んでいました。
その時ドアが開いて誰かが入ってきました。
「久しぶりだな、元気そうで何よりだ、お前がここまで活躍するとは思わなかったよ、友人の校長(将軍)にも感謝されてね、俺としても喜ばしい限りだ、」
入ってきたのは中学校時代の担任の教師でした。
「先生、お久しぶりです、こんな素晴らしい環境で研究が出来て先生には感謝してもしきれません、本当にありがとうございます。」
「こちらもそこまで感謝されては心苦しいのだが、実はお願いがあってここに来たのだ、はっきり言おう、今敵国でハリケーンを起こしているマシンを頂きたいのだがね、断るという選択肢は君には無いと言う事だ、分かってくれるな。」
そして銃をちらつかせておりました。
意外にもMは、
「はい、お渡しするのは構いませんし、宜しければ設計図も差し上げます。唯先生がこれを持って帰ったところでこのマシンは誰にも使えません、脳がR複合体に支配されている状態では無理なのです。このマシンは昆虫や動植物と対話するマシンです。自分達のみならず自分達の種を危機に晒す人間とは対話は出来ても言うことは聞いてはもらえませんよ。」
「なる程、かもしれんな、ならば昆虫やらを騙せば良いはずだ、」
「先生、彼らは生命維持に関しては人間以上に敏感なんです。はっきり言って無理です。実は僕にはこのマシンが既に必要無いのです。僕の脳自体が何時でも彼らと対話できる状態にあるのですから。」
「ならば何故俺が来る前に逃げない?」
「こちらからも最後に訊きたいのですが、平和な国や団体や人物を残酷に侵略するのは先生はどうお考えなのですか?」
「俺だって国に帰れば妻と子供がいる、食わせていくには仕事しか無いんだ、平和は当然望んでいるが侵略はもっと上の連中の企てなんだろうな、贖うことは不可能だ。しかも下っ端の我々だって残酷、侵略を好む様に脳が作られているのだろう、それは教師時代に痛感したよ、そんなクソみたいな世界で勝負が存在しているだけのチキンレースみたいな世界だ。」
「そうですか、でも既に僕はこの世界に一粒のエッセンスを落としたので思い残すことはありません、
そして既に次のステップに進んでいるのです。」
「そうか分かったよ、苦しまずに一思いに逝ってもらおう、」
そういって引き金を引いたのでした。
その瞬間にMはマッハ理論が少し分かった気がしたのです。
「ワームホールでも抜けるかな、、、」
足がビクンと跳ねた感覚で目が覚めました。
隣で寝ていた妻も目が覚めたようです。
「どうしたの?また変な夢でもみてたんでしょう?」
「ああ、誰かに撃たれた様な夢だったかな。」
「変な寝言も言っていたわよ、『種はタネなのか種類なのか』だったかしら?」
それを聞いた途端Mは「これだ!」と叫んで自分の部屋に飛び込んで行きました。
終わり


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