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ごろチキ再現事件〜Goro-Goro Chicken Reproduce Case

日本はカレー大国。おうちのカレーもあれば、カレー専門店、洋食屋さん、定食屋さんにお蕎麦屋さん、エスニック。外食のカレーもよりどりみどり。

カレーには、いくつものスタイルがあります。個人的な印象ですが、欧風カレーはソースがドロリとしていて、インドカレーはさらっとした感じに思います。どれもおいしくて、その日の気分で食べたいスタイルを選ぶのも、選択肢豊富な国ならではの楽しみです。


🍛愛するごろチキ

そんなカレーの中でも、毎年楽しみにしているのがこれ。愛称はごろチキ。

カレーソースに、ごろごろとしたチキンがたっぷりで食べごたえもあるし、なによりスパイシーな味そのものが好みなんですよね。

あまりの人気に、くり返し発売される限定メニューになりましたが、ことしも4月から数量限定で販売されています。これはいかねばなりません。というわけで、さっそく食べてきました。

お店で食べたときの1枚です。

🤔ごろチキの謎

このカレー、食べていていつも気になるのは、スタイルでいうとなにになるんだろうということ。

欧風というにはさらりとしてるし、かといってインドカレーというにはとろみがあるように感じます。はたして、ごろチキとはなにものなのか。

そしてあのチキンも気になります。ごろごろ煮込みというネーミングですが、鶏肉のトマト煮とか、和食の筑前煮とか鶏肉を煮込んだ料理と比較するとなんだかぷりぷりしていて、じっくり煮込んだお肉のほろほろとほどけるような食感とは、明らかに別物。

謎です。色々考えて、もしかしたら蒸せばいいのではないかと思ったり。しかしあくまで仮説は仮説。

💻つくってみよう、その前に

では、それを明かすにはどうする。そう、つくってみようじゃないか。つくって明かす、それでこそトケイヤkitchenです。さあ、やるぜ。

と思ったのですが、念のため調べてみたら、ありゃ。

松屋本家さんが、レシピを公開されてるではありませんか。具のごろごろチキンをぷりぷりに仕上げる秘訣が惜しげもなく公開されてます。なるほど、蒸し焼きか。蒸すという推理、そこそこいいとこまでいってましたね。

よし、では、このとおりつくればいいわけですね。もうなんの謎もないじゃん。と思ったのですが本家さんのレシピを読み進めると…お、お、お。

❓残る謎につくって挑む

カレーは冷凍のオリジナルカレーを使うことになってます。ここに解明すべき謎は残っていた。解かねばなりません。よし、あらためて、さあいくぜ。

というわけで、今回は人気のごろごろチキンカレーをアレンジ再現してみたお話です。

さて、まずはつくる前に、あらためてカレーソースおよび具材の特徴を考えてみます。ざっとあげるとこんな感じではないでしょうか。

  • どろっとはしてないが、ややとろみもある印象

  • けっこう辛めでスパイシー

  • 色はわりと濃いめ

  • チキンはごろごろでふっくら

  • 玉ねぎが大きめでしゃきしゃき

こうして書き出すとなかなか個性的ですね。このキャラクターを再現するにはどうすればいいか。考えつつ、調理法の判明している具材の準備をすることにします。

🔪具からスタート

🍗その①…チキン

まずはチキン。本家のものを見てみると、こんな感じ。

お店で食べた本家のチキンごろごろの様子です。

ごろごろの名にふさわしい、ひと口大のチキンが、7つか8つくらいはいってます。よし、ゴロるぜ。

部位でいうともも肉。ごろごろサイズに切っていきます。

オリーブオイルを揉み込んで、冷蔵庫でマリネしておきます。

🧅その②…玉ねぎ

続いてもうひとつの具、玉ねぎ。具材はシンプルでチキン以外はこれだけです。

本家の玉ねぎ。

けっこう存在感のあるサイズで、食べるとしゃきしゃきしていて、煮込んでとろとろの玉ねぎとは別物です。

本家さんのレシピではクシ型に切るということなのですが、実際に食べるとけっこう長さがあるように感じます。なので、切り方にひと工夫。

半分に切った玉ねぎに、斜めに包丁を入れて切り分けました。縦方向のクシ型より、全長の延長に成功しました。

🍛カレーなる謎解き

🤔推理編

さあ、具材は揃った。その調理法は公式さんレシピを踏襲するとして。あとはカレーだ。どうする。考える。

まずは結果をご覧いただきましょう。

これはアレンジ再現の完成図。

できました、ごろチキ。復活するたびに食べてきたこの舌が、けっこういい感じだと認定するほどの仕上がりです。華麗に謎を解いてしまいました。よっ、名探偵。

たまたまそれっぽいお皿が我が家にあったことも含めて、再現度はなかなかのもの。満足度高し。

さあ、それではごろチキの謎、解明編に進みましょう。

🍛解明編

カレーソースの謎解きは、数年前に話題になり、そしていまやカレーの1カテゴリとして定着した、ここにあるのではないかと推理したことからはじまりました。

そう、大阪から全国に広まったスパイスカレー。ごろチキのカレーソース独特のあの粘度、スパイシーさ。その秘密、ここにありとひらめいたのです。

🍛謎が解けたら再現しよう

🧅香味野菜ベースの秘密

煮込みに使う野菜はにんにく、玉ねぎ、にんじんの王道香味野菜。これでカレーのベースをつくります。

玉ねぎとにんじんはすりおろします。

にんにくはみじん切り。玉ねぎは最後のほうは、小さくなってすりおろしにくいので、できるところまですりおろして、もうだめだとなったら、これもみじん切りにしておきます。

オリーブオイルとバターでにんにくを炒めて、スタートです。

にんにくの香りが出てきたら、玉ねぎとにんじん。すりおろしたときに出た、玉ねぎの汁ごといれてOKです。

そして旨味の秘密はこれ。しばらく炒めたところに、カレー用の牛肉を追加します。

このお肉は今回カレーの具としては食べませんが、ソースを多めにつくれば、スパイスビーフカレーとしても楽しめるし、炒め物なんかに使ってもOK。

🧂スパイス登場

さあ、スパイスカレーなのでスパイスを準備します。

左上から時計回りに、カルダモン、ターメリック、コリアンダー、クミン。

といっても、今回メインにはカレー粉を使います。なので、このスパイスたちはなくても大丈夫。ただ、我が家には色々スパイスがあるのと、気分が上がるのでいれることにします。

野菜とお肉のお鍋に、カレー粉とスパイスを投入。

混ぜながら炒めると、こんな感じに。スパイシーな香りが立ち上ってきました。

🧂赤か黒か

さあ、ここから煮込み第1段階。というのも、いきなり出汁で煮込むのではなく、スパイスの味を強化しつつ、あのごろチキの濃いめの色を出す秘密の材料を加えます。

赤ワイン&漆黒のウスターソースがその秘密。

最初は赤ワインだけのつもりだったのですが、より色濃く仕上げられるうえに、ウスターソースはスパイスと野菜や果物からつくられているので、味に深みが出せるだろうと加えることにしました。それに関西人なもので、ソース好きなんで。魂が呼んでます。

しばらく強火で煮詰めて、水分がほぼなくなる頃には、いい色になってます。

🍅そしてカレーも煮え立った

さあ、煮込みの第2段階です。

お鍋にフォンドボー、トマトペーストを加えます。

水を加えて、煮込み再開。

火加減は強めの中火。煮詰めながら煮込んでいきます。

30分ほどして、全体にこんな感じの泡がふつふつと立ってきたら、煮込みは完了。

いったん冷ましておきます。ね、いい感じの色調ですよね。

🍗なぜ、蒸し焼きに気付かなかったのか

カレーを休ませている間に、具を準備していきます。

鶏肉の皮を下にして、フライパンに並べてから火を点けます。

ふだん、鶏や魚のような皮のある素材を焼くときは、縮み防止のため身の面から焼くことを提唱しているトケイヤkitchenですが、今回はひと口大なので気にしません。なんてったって、本家さんのレシピに皮からと書いてますからね。そこはリスペクトします。

フライパンが温まったら弱火に落とし、蓋をして蒸焼きします。

5分経ったら鶏肉を返して、玉ねぎを投入。

蓋をしてもう5分。

鶏肉の焼き汁がフライパンに溜まってます。おお、おいしそうです。この焼き汁、逃す手はありません、ゲッチュー。

🍛ゴロ時間へ

ところで、カレーを煮込み始めてからの各タイトル、なんか独特なタッチだったでしょ。ついに、この章のタイトルで、なにか気づいた読者もいるかもしれません。

それがなんなのかは、この時点では、いったんみなさんの推理にお任せするとして、ごろチキづくり進めます。

焼き汁を逃がしたくないとくれば、もちろんフライパンのほうに、カレーを合わせるスタイルです。

そして軽く煮込めば、ゴール間近。ごろチキの時間へと歩を進めましょう。

お皿はなににしようかなと、我が家を見渡すと、おおそうだ。

ごろチキが盛り付けられているお皿を、ひと回り小さくしたような耐熱皿があるじゃありませんか。イッツ・ア・ミラクル。これに決まり。

チキンをごろごろ盛り付けていきます。

🍛ごろチキついに再現なるか

さあ、全国のゴロチキニストのみなさん、これでどうだ。

記事の最初のほうで紹介した、ご本家の写真とぜひ比べてみてほしい出来栄えです。ビジュアルは文句なし合格。

ごはんもオリジナル同様、別皿盛り。福神漬も本家で使用の赤くないタイプを用意しました。

個人的な好みでは、やっぱり福神漬は赤くないとね…と思うのですが、今回はそのこだわりは雲の上。アレンジ再現の精神に則って、茶色いほうをスタンバイ。

これがトケイヤkitchenのゴロちき。

見た目、ほんといい感じです。オリジナルを食べたことのある読者のかたにはきっと伝わるはず。

🙌ボーン・イン・マイ・キッチン

さっそくいってみましょう。いざ、実食。

チキンごろごろ。うん、まさにあの食感です。煮込んだチキンのほろほろとは違う、ジューシーで弾力のあるあの仕上がり。

そして玉ねぎ。存在感のある大きさといい、シャッキリ感の残った食感といい、これも完璧。

さすが本家の公式さんのレシピ。あの鶏と玉ねぎの食感の秘密は、間違いなく蒸し焼きです。

そしてカレー。記憶と知識と情報をフルに組み合わせて、スパイスカレー系のつくりかたを選んだわけですが、さてその味やいかに。

ぱくり。

おお、これは。これはまさに、ごろチキ。

ごろチキが我が家で生まれた。 

ボーン・イン・マイ・キッチン。

感動です。

ごはんに載っけてもよし。うまし。

カレーのほうにごはんをいれてもよし。うまし。

🍛いつだって愛は勝つ

今回のごろチキ、いままでいろんなメニューをアレンジ再現してきた中でも、トップクラスの仕上がりです。

ごろごろ、しゃきしゃき、チキチキ。ひと口ごとに謎のフレーズが、軽快なリズムに乗って脳内でリフレインします。

いままで限定発売になるたびに、買いに走っていましたが、これでいつでもごろチキが我が家で食べられる。もう買いにいかなくても…。

いや、違うな。買いにいかないことはなさそうだ。だって、オリジナルのあの味に惚れたわけだから。きっとまた次回の限定リリースの日は松屋さんにいるでしょう。

だとしたら、このごろチキは、今回のアレンジ再現企画だけのための存在なのか。

いえいえ、そうではありません。このカレーがつくれたということは、すなわちこういうこと。

ごろチキ売ってない時期に、めちゃめちゃ食べたくなったら、いつでもつくれる。

これは安心。この事実があるだけで、心が落ち着きます、安定します。もうごろチキの禁断症状に見舞われることはないのです。

今回紹介したカレーの詳しいレシピは、このあと紹介します。全国のゴロチキニストのみなさんには、ぜひ試してみてほしいと思います。

もしまだ本家のごろチキを食べたことないというのなら、もしあなたがこの記事を読んでいるその日そのとき、もしまだ販売されていたら…。一度それを食べて、その味を脳に舌に口中にしっかり記憶させた状態でつくってみてほしいです。

そのほうがきっと、再現度の高さを理解してもらえると思うし、なにより、この記事に込めまくったごろチキ愛が伝わると思うから。

いつだって謎を解くのは愛の力。眠れる姫を目覚めさせるのも、ガラスの靴をなくした少女を探し当てるのも、すべては愛の力なのです。

ごろチキ、ラブユー!

🍛ごろチキアレンジ再現レシピ

🍗材料(2皿分)

🥄ベースのカレー
・牛肉カレー用…200グラム
・玉ねぎ…1/2個
・にんじん…1/2本
・にんにく…1片
・カレー粉…大さじ2
・クミン…小さじ1
・ターメリック…小さじ1
・コリアンダー…小さじ1
・カルダモン…小さじ1
・バター…10グラム
・オリーブオイル…1
・赤ワイン…1/4カップ
・ウスターソース…1/4カップ
・フォンドボー…小袋1
・トマトペースト…小袋1
・水…4カップ

🥄具材
・鶏もも肉…1枚
・玉ねぎ…1/2コ

🔪つくりかた

①具材用の鶏もも肉はひと口大に切り、オリーブオイルを揉み込んで、冷蔵庫で寝かせておきます。玉ねぎは5ミリ幅くらいに、斜めに包丁を入れて、切り分けておきます。
②ベースのカレー用に、玉葱とにんじんをすりおろします。
③バター、オリーブオイルを鍋に入れて火にかけ、みじん切りのにんにくを入れて香りが出てきたら、②を入れて炒めます。
④③の水分がなくなったら、牛肉を入れて表面に焼き色を付け、カレー粉とスパイスを合わせてからめながら炒めます。
⑤赤ワインとウスターソースを入れて、水分がほぼなくなるまで煮詰めます。
⑥フォンドボー、トマトペースト、水を入れて強めの中火にかけ、そのまま30分煮込みます。
⑦全体にふつふつと泡が出てくるまで煮詰めたら、火を止めて一旦冷まします。
⑧フライパンに鶏肉を皮を下にして並べてから火を点けます。
⑨フライパンが温まったら弱火に落とし、蓋をして5分焼きます。
⑩⑨の鶏をひっくり返して、玉ねぎを散らしたらもう一度蓋をして5分焼きます。
⑪⑩にカレーソースを加えて、からめながら温めます。
⑫⑪を深さのあるお皿に盛り付け、別皿に盛ったごはんに福神漬を添えてできあがりです。

🎁おまけ

ところで、カレーをつくる工程のサブタイトル、なんかいつもと調子が違ってましたよね。なんであんなタイトルだったのか。

モナミ、考えてみたまえ。

答えはこれ。

今回、ごろチキの謎を解くということで、ミステリの女王アガサ・クリスティ女史の作品のタイトルにちなんでみました。

灰色の脳細胞、たまにはカレーのレシピ解読に使ってみるのもいいもんです。

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