“のこのこ”

「のこのこ行く」
という表現があって、そのマヌケなニュアンスに性犯罪被害者は黙らされてきた。

しかし私たちはいつも“のこのこ”何かしている。

「先輩が呼んでるからちょっと来て」
「コーチが呼んでるから⚪︎⚪︎室に来て」
「店長が呼んでるから⚪︎⚪︎号室に来て」

身近な人、仕事などですでに行動を共にしてる人が呼んだら、行くのが普通だろう。

それが目上だったら走り出す勢いで行く。

その力関係を、自分の性欲を満たすために使うことの“悪”が最近やっと世間で認められるようになった。

普通の行動を「のこのこ」とマヌケ立てて言って、被害者に
「自分の行動が間違っていた」
と思わせる。

卑劣だと思う。

「のこのこ」は普通のことだ。
「のこのこ」を悪い意味で使う人たちは、自分がのこのこしてることに気づいていない。

「あなたのこと呼んでるよ」
と言われたら行くだろう。

私もバイト仲間に
「誰々(職場の上司)さんが今ホテルにいるから遊びに行こう!」
と言われて“のこのこ”ついて行ったことがある。

それが世間的には危険な行為だとは知らずに。

結局何もなかったが、報道のような事件について聞くたびに思い出す。

「性的に見られるなんて思いもよらなかった」
「友だちと一緒だから大丈夫だと思った」
「この世にそんな危険があるなんて知らなかった」

「のこのこ」を悪い意味で使う人たちだって、
誰かに会いに行ったり、
楽しい時間を持つことを期待したり、
そんなささやかな冒険は日常のはずだ。

自分の「のこのこ」を棚に上げてはいけない。

「のこのこ」という言葉は面白いな。
私たちはこの愉快な言葉を被害者の口を封じる道具にしたんだ。

きっとそれも私たちの歴史の“悪”。
私は「のこのこ」に自由を与えて、独り歩きさせることにする。

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