貸した本

君に本を貸したままになっている。
何度か連絡を取ってちゃんと会うのだけど、毎回忘れてしまって結局まだ返してもらっていない。
貸した本はまるで私の気持ちを表すかの様に君の処に行ったまま。
他人からすれば、只の友達にすらなれていないレベルの関係なのかもしれない。けれど、私にとっては「友達」よりも「恋愛」よりも、遥かに大きくて深い抱えきれない程の感情を抱いていた。

でも、そろそろ返してよ。
本も、君のことが好きな私も。
早くなかったことにしたいんだ。
忘れたい思い出も、君の中に映る私も。
楽しいことも、嬉しいことも、沢山あったけれどそんな明るい思い出を蝕むように苦しい想いが侵食してゆく。
新しい環境に変わって君に出来た、新しい友達。
私の知らない友達。
私に嫉妬する権利なんてないのだけれど黒い気持ちが溢れて止まない。

嫌なんだ。これ以上、私が私を嫌いになるのは。
このままだとどんどん私が烏滸がましい人間になってゆく。

だから、本も新しく買って、君が知らない誰かと想い合えば、消せると思っていた。
それなのに、ね。
そんなに上手くはいかないみたいなんだ。

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