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お 花 の セ ン セ イ と 私

お花のお稽古を、辞めることにした。

仕事とのバランスが
取れなくなってきたせいだ。

自分のキャパシティのなさには
悔しくなった。
でも気持ちがついていかない時は
もう無理はしない、と決めている。

先生に電話をかけて
その旨を伝えた。

「次のお稽古から、
通うのがむずかしくなりまして、、」
突然の連絡になってしまった。

電話で伝えることを選んだのは
面と向かうと
また話を切り出せなくなりそうだという
ちょっと卑怯な気持ちも含んでいた。

始めるのは簡単でも
終える時には気力がいった。


電話で、今までの感謝の気持ちを
たくさん伝えようと
思っていたのだけど
うまく言葉がまとまらなかった。

「あら、お仕事、やっぱり忙しいのね。体には気をつけてね。また来たいと思ったら、いつでもいらっしゃい。待っているから。ありがとう」
先生はそう言ってくれた。


お花のような先生だった。

いつもゆったりした口調で話す先生は
どんな時もふんわりとやさしい笑顔で
「いらっしゃい」と出迎えてくれた。

初めてお稽古にお邪魔したのは
私が休職している時。
話をすると、
「大丈夫、大丈夫。
あんまり無理をしないようにね」と言って
背中をさすってくれたことを
よく覚えている。

社会からポツンと取り残されている、
また戻れる日が来るのだろうかと
思い悩んでいたあの時、
先生のやさしい手から
私の心はぽかぽかと温かくなった。


私がフルーツ好きだと話してから
お稽古の最後に出てくるお茶には
季節のフルーツがお茶請けについていて、
先生の心遣いに感銘した。

時には、四葉のクローバーを見つけたからと
押し花にして
私にプレゼントしてくれた。


お茶目で、朗らかで、時に凛としている先生は
私の理想の女性だ。
先生にお花を教えていただけたこと、
本当に良い経験をさせてもらったと思っている。


お花のお稽古の時間は
私が休職から復帰するのに
必要な時間だった。

電話でうまく
話すことができなかったことは
心残りだった。
それに「電話」だけで伝えたことも
心残りになった。

わたしは、
伝えたいことがたくさんある時ほど
言葉がうまくまとまらない。

昔からそうで、
咄嗟になると
いま心の中にある想いをどこから
話出せばよいのか
わからなくなる時がある。

でもこのままでは嫌だ、と思った。

だから、

先生に宛て
手紙を書いた。

ひとつずつ、いちばん伝えたい言葉を
書いた。

たくさんの、
「ありがとうございます」の気持ちを込めた。

***

人生で出会うほとんどの人は
通りすがりの人になる。

学校の友達も先生も
職場の同僚も上司も
そのうち顔を合わせることが無くなる時が来て
やがて何をしているのかも分からなくなる。

家族のように長く付き合う人は
ほんの、ほんのひと握りの人だけだ。

だから、良くも悪くも、
深く気にとめなくていいんだけれど。

自分に大切な時間をくれたご縁は
ちゃんと大切にしなくちゃ。
改めてそう思った。


今度、手紙を持って
最後のご挨拶に行くつもりだ。

今も、私の家の玄関には
お花が飾られている。
庭で育てているお花をたまに
ぱちりと切って花瓶にさす。

お花を楽しむ心は
ずっと持ち続けていたい。

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