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この春に、綺麗な栞をひとつ


小説って、編み物みたい

と思います。

かぎ針を
毛糸の、ちいさな輪っかへ通し
ひとつひとつ手を動かして
糸を列へ、列を面へと仕立てていくように

選りすぐった言葉を、重ねて結んで
一行ずつ丁寧に
文章を紡ぎ、物語へと仕立ててゆく。

どちらも本当に時間のかかる作業です。

でもそうやって、手間を惜しまず
細やかに編み込まれた細工が
ひとの心を魅了し、
そのやわらかい布地が
肌をあたたかく包み込むように

緻密に作り込まれた小説は
言葉にならない感動を生み、
深い余韻が胸を包んで
じわあっと続きます。

小説は、
心を働かせ、手を動かしてできあがる
すてきな編み物なのです。



毎日を忙しく過ごしているあなたも
この小一時間だけ、
ちょっと手を休めて
読書にとっぷり、浸ってみませんか。


今日は、
丁寧に、丁寧に仕立てられた
読み応えのある小説を
紹介させてください。

百年の子

舞台は、老舗の出版社。編集者として働く明日香は、出版社の学年誌創刊百周年の記念誌を担当することになる。学年誌の歴史を調べるなかで、自分と祖母との意外な繋がりを発見する。
物語は令和と昭和を行き来しながら、綴られる。
「人類の歴史は百万年。
でも子どもと女性の歴史は、
まだ百年に満たない。」
子どもの人権やジェンダーギャップについて、改めて考えさせられる一冊。

みかづき

「私、学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在になると思うんです」

昭和36年。小学校用務員だった大島吾郎は、放課後に生徒を集め勉強会を開いていた。ある時、勉強を教えていた児童の母親、赤坂千明にその腕を買われ、ともに学習塾を立ち上げる。
シングルマザーだった千明と吾郎はやがて結婚。ともに「理想の教育」を目指し、塾経営に奮闘する。経済成長とベビーブームを背景に、塾は急速に成長するものの、その先には様々な困難が立ちはだかる、、
人生を教育に捧げた、塾教師たちの物語。

椿ノ恋文

私の大好きなツバキ文具店シリーズ、続編。
双子を授かり、5人家族になった守景家。娘・QPちゃんの反抗期、気難しいお隣さんとの関係、育ての親であった亡き祖母の、秘密の恋文。悩みに絶えない毎日だけれど、再開した代書のお仕事に心を込めて向き合う鳩子さんの日常が描かれる。手書きのお手紙と言葉のもつ力にホロりと心が動く作品。


戸を開けると、
やわらかい空気が頬をなでる
ほんものの春がやって来ました。

辺りには
カステラ色の、ふわっとした日差しが
いっぱいに注がれています。




こんな春の日に
綺麗な栞をひとつ用意して
時間とたのしむ読書を
あなたも、いかがですか。


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