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帰り道の秋キャフェ


映画を観た帰り道に
キャフェへ寄りました。

時計は十六時をまわったところ。
磨きあげられたガラスのドアを押すと
店内は、なかなか賑わっています。

私は栗のパウンドケーキと
カフェラテをお願いして
入口から離れた
店内をゆったり見渡せる席をとりました。

このお店を利用するお客さんは
テイクアウトとイートインが
半はんといった具合で、
おしゃべりに夢中の学生さんたちや
ゆったりと本を読む白髪の女性。
パソコンに向かうスーツ姿のひとなど
客層もいろいろです。

カウンターの向うにいる
若い店員さんは、忙しく立ち回りながらも
元気な笑顔で
お店を切り盛りしています。


「お待たせ致しました。
ホットコーヒーおふたつを
テイクアウトでお待ちのお客様」

店員さんが、受け取り待ちのお客さんに
声をかけました。

若い女性が進み出ます。

カウンターに差し出されたコーヒー2杯を
片手にひとつ、もう片方の手にひとつ取り
ドアを出ようとされて、
その方は
あッ、とした顔で立ち止まりました。


外へ繋がるドアは開き戸で
両手が塞がっているいま、
ドアノブを回すことが出来ないのです。


店員さんがその様子に気づき
慌ててカウンターを回ろうとされた時、

ドアの近くに並んでいた
六十代ほどの男性が、女性の方へ
すっと歩み寄りました。
それから
ドアをサッと開けて
「どうぞ。」と
手で案内されました。


「助かります。ありがとうございます」
女性は、ほっとした表情で会釈をして
秋空の下へ出てゆかれました。


その姿を見届けたところで、
すかさず、
店員さんは男性へいいました。
「お客様、お手をお貸し頂き、
ありがとうございます」
言葉にはふわっと明るい笑顔が
添えられていました。



それは、
見ているだけで
心にすーっと風が通るような
爽やかな情景でした。


ほどよい温度のカフェラテを
ひとくち味わいながら

心地よい暮らしは
こんなふうに、
細やかな心遣いの循環のおかげで
支えられている、と思いました。



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