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生物学的な咬合 その3 咬合は歯科医師の唯一の業務独占

A. 咬合の役割

咬合とは、下顎を閉じた時に上下の歯が接触する関係を指します。これは、歯科の健康と機能のさまざまな側面で重要な役割を果たしています。咬合に関するいくつかの重要なポイントを考えてみましょう。

 1.  機能的側面
咬合は、咀嚼、話し、飲み込みなどの機能に欠かせません。適切な咬合は効率的な咀嚼機能を確保し消化プロセスを支援します。

2.  安定性
咬合は、歯列弓の安定性や口腔構造のバランス全体に貢献します。安定した咬合は歯の位置を維持し、移動や歯並びの問題などを防ぐのに役立ちます。

3.  快適さ
理想的な咬合関係は咀嚼やその他の口腔機能中に快適さを促進します。歯並びの悪さや不正咬合は不快感や痛み、一時的な顎関節障害(TMD;Tenporo Mandibura Disoders)を引き起こす可能性があります。

4.  口腔の健康
咬合は歯の摩耗、歯周健康、および齲蝕リスクなどの要因に影響を与えます。適切な咬合は歯に均等に力が分散され、歯の構造への過度の摩耗(咬耗)や損傷(歯牙破折)のリスクを減らします。

5.  審美
健全な咬合は顔の美容に大きな影響を与えます。不正咬合や歯並びの悪さは笑顔や顔の輪郭の外見に影響を与え、自己意識や外見への不満を引き起こす可能性があります。

6.  診断ツール
咬合は歯科および顎顔面条件を評価するための診断ツールとして機能します。歯科医師は咬合検査を使用して不正咬合、咬合の不一致および介入を必要とする可能性のある問題を特定します。

7.  治療計画
咬合の診断は矯正治療、補綴構築および修復歯科など、さまざまな歯科処置の治療計画に不可欠です。治療計画は最適な咬合関係と生理的機能を達成するために、しばしば調整されます。

 

B. 咬合の人体に与える影響

 咬合は、人体にとって非常に重要な機能の一つです。食事摂取や発話、顔の形成、顎関節や歯の健康そして全身の健康に重要な影響を与える重要な機能です。そのため、適切な咬合機能の維持や修復は歯科医療の重要な領域の一つです。以下は、咬合が人体に与える機能的重要性について述べます。 

1.  栄養摂取
咬合は食物をかみ砕き口腔内で消化を助けます。適切な咬合機能がないと、食物を効率的に処理することができず栄養摂取が不十分になります。

2.  発話とコミュニケーション
発話やコミュニケーションに重要な役割を果たします。適切な咬合関係がないと発音が不明瞭になったり口の周りの筋肉の動きが制限されたりする可能性があります。

3.  顔の形成と外観
咬合は顔の形成にも影響を与えます。適切な咬合関係がないと、顔のバランスが崩れたり顎の成長が不正常になったりする可能性があります。

4.  顎関節の健康
正しい咬合は顎関節の健康にも重要です。不適切な咬合関係があると顎関節に過度の負担がかかり顎関節症などの問題が引き起こされ疼痛や運動制限が起こります。

5.  歯の健康
適切な咬合は歯の健康にも重要です。不正確な咬合関係があると歯に異常な負荷がかかり歯の摩耗や歯周病を悪化させます。

6.  頭痛、睡眠障害など全身の健康
咬合の問題は全身の健康にも影響を与える可能性があります。例えば、咬合異常が睡眠時無呼吸症候群や頭痛などの問題を引き起こすことがあります。

 

C.咬合異常について

咬合異常とは、顎を閉じた時に歯の配置が正しくない状態を指します。この状態は軽度の歯の位置のズレは歯の機能や見た目以上に深刻な症状をもたらします。口腔の健康と生活の質に影響を与える一般的な歯科疾患ですが早期の診断と適切な治療は合併症の予防や口腔機能や全体的な健康の向上に役立ちます。咬合異常について考える際には、以下のポイントが重要です。 

1.  分類: 咬合異常は、特定のタイプの歯の位置のズレに基づいて様々なカテゴリーに分類されます。一般的なタイプには、オーバーバイト、アンダーバイト、クロスバイト、オープンバイト、歯の詰まりなどがあります。

2.  原因: 咬合異常には複数の原因があります。遺伝的要因、発達の異常、幼少期の習慣(指しゃぶりや舌突きなど)、乳歯の早期損失、歯や顎の外傷などが原因として挙げられます。

3.  症状: 咬合異常の重症度に応じて、咬む・噛むの困難さ、話す際の問題、顎や顎関節の不快感や痛み、歯並びの見た目に対する懸念などの症状が現れる場合があります。

4.  合併症: 未治療の咬合異常は、歯の不正な配置のために歯の清掃が難しくなり、虫歯や歯周病のリスクが増加するほか、歯の表面の異常摩耗、歯への外傷のリスク、顎関節の機能の問題などの合併症を引き起こす可能性があります。

5.  診断と治療: 咬合異常の診断は、歯と顎の配置を評価するために包括的な歯科検査が行われます。診断には、歯の印象、X線、その他の画像検査が含まれる場合があります。治療法は、咬合異常の重症度やタイプに応じて異なりますが、矯正治療、歯の抜歯、顎手術、その他の歯科処置が含まれることがあります。

 

D. 咬合異常に起因する顎関節症

咬合異常と顎関節症の関連性を理解し、適切な治療を行うことで患者の口腔機能と生活の質を向上させることができます。咬合異常と顎関節症の関係については以下のようなポイントが挙げられます。 

1.  咬合異常と顎関節症の関連性
咬合異常が顎関節症の発症や悪化の原因となることがあります。例えば、オーバーバイトやクロスバイトなどの咬合異常は顎の不自然な動きや負担を引き起こし顎関節に過度の圧力をかける可能性があります。

2.  顎関節のストレスと痛み
咬合異常によって顎関節に不自然な負担がかかると顎関節の周囲の筋肉や組織に炎症が生じる場合があります。これにより顎関節症の症状である痛みや不快感が引き起こされます。

3.  顎関節の位置関係
咬合異常によって顎の位置が変化することがあります。特に、クロスバイトやオーバーバイトの場合、顎が適切な位置に収まらず顎関節の正常な動きを妨げることがあります。

4.  治療と結果
咬合異常に起因する顎関節症の治療には咬合の調整や矯正治療、顎関節に対する物理療法やリラクゼーション法、スプリント療法が含まれることがあります。適切な治療によって咬合異常が解消され顎関節症の症状が軽減されます。

5.  予防
咬合異常を早期に発見し適切な治療を行うことで顎関節症の発症を予防することができます。定期的な歯科検診や咬合のチェックは咬合異常やそれに伴う顎関節症の早期発見に役立ちます。
 

★重度の顎関節症の症状

重度の顎関節症は、患者の日常生活や口腔機能に重大な影響を与える可能性があります。適切な治療を行うことで、これらの症状を軽減し、患者の生活の質を改善することができます。 

1.  顎関節の痛み: 顎関節やその周囲の筋肉が炎症を起こし、激しい痛みを引き起こします。この痛みは口を開けたり閉じたりするときに増すことがあります。

2.  顎運動の制限: 顎関節の痛みや不快感によって顎の動きが制限されることがあります。口を開けたり閉じたりする際に不自然な摩擦や摩耗を感じることがあります。

3.  音: 顎関節の動きに伴ってクリック音やポップ音が聞こえることがあります。これは、顎関節の位置や構造の問題によって引き起こされます。

4.  筋肉の緊張: 顎関節症によって、顎周囲の筋肉が緊張し硬直感や不快感を引き起こします。この緊張は顎の動きや咀嚼に影響を与えることがあります。

5.  頭痛: 顎関節症によって顎の痛みや筋肉の緊張が頭痛を引き起こすことがあります。特に顎関節症の患者は、側頭部や額部に持続的な痛みを訴えます。

6.  咬合異常: 顎関節の問題によって咬合が不安定になり咬合異常が引き起こされます。これにより歯の摩耗や痛み、顎の不快感が生じることがあります。
 

E. 顎関節症の治療用スプリント療法

顎関節症の治療には様々なアプローチがありますが、その1つにスプリント療法があります。スプリント療法は顎関節症の治療に有効であり、症状の軽減や顎関節の安定化、筋肉の緩和や咬合パターンの調整などの効果をもたらします。ただし、正しいタイプのスプリントを選択し、適切な治療計画のもとで使用することが重要です。
 

1.  症状の緩和
顎関節症の症状を軽減するために設計されています。痛み、不快感、顎の違和感などの症状を和らげ患者の生活の質を改善します。

2.  顎関節の安定化
顎関節の安定性を向上させます。顎の正しい位置に保持することで、関節の負担を軽減し機能的なバランスを回復させます。

3.  咬合力の分散
咬合力を均等に分散し歯や顎関節にかかるストレスを軽減します。これにより、歯や関節の状態が改善され、さらなる損傷を防ぐことができます。

4.  筋肉の緩和
顎関節周囲の筋肉の緊張を緩和します。筋肉の緊張に起因する痛みや不快感が軽減されます。

5.  咬合パターンの調整
咬合パターンを調整するために使用される場合があります。咬合関係の正常化や不正咬合の矯正を目指し顎関節の機能的なバランスを改善します。

6.  適応症の幅広さ
さまざまな顎関節症の症状に対応できる柔軟性があります。軽度から重度の症例に適用することができ個々の患者のニーズに合わせてカスタマイズすることが可能です。

 

 

 

 

 

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