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生物学的な咬合 その4 咬合の要は顎関節

A. 顎関節の複雑な構造と機能

 顎関節は口の開閉や咀嚼などの機能を可能にする重要な関節であり以下の複雑な構造と機能を持ち口の動きや咬合機能に重要な役割を果たしています。よって、顎関節の健康状態を維持し関連する疾患や障害を適切に管理することが重要です。その複雑な構造と機能について考察します。

1.  解剖学的構造

顎関節は、下顎骨(顎骨)と頭蓋骨の頭頂窩との間に位置し複数の構成要素から成り立っています。主な構成要素には下顎骨の顎頭、頭蓋骨の窩突起と関節窩、間接軟骨、関節包、および周囲の靭帯や筋肉が含まれます。

2.  機能

口の開閉、側方運動、前後運動など、多様な動きを可能にします。これらの動きは、顎関節の頭頂窩と関節窩の相互作用によって調整されます。筋肉や靭帯、軟骨などの周囲の組織が、運動の制御や安定化に重要な役割を果たします。

3.  咬合機能

咀嚼や咬合時の歯の接触を調整し咬合力を分散させる役割も担っています。この過程では顎関節の適切な機能が重要であり正常な咬合関係を維持することが歯や関節の健康に必要です。

4.  神経支配

三叉神経(三叉神経)の枝である顎枝神経によって神経支配されています。顎関節周囲の感覚や運動が制御され口の動きや感覚が調節されます。

5.  疾患や障害

顎関節にはさまざまな疾患や障害が存在し顎関節症として知られる状態がその一例です。顎関節症は慢性的な顎の痛みや不快感、口の開閉の制限などの症状を引き起こします。

 

B.人体の関節の中で、最も複雑な動きをする顎関節

顎関節は人体の関節の中でも最も複雑な構造の一つです。その複雑な動きは、解剖学的な特性に基づいて理解されます。その複雑な構造と機能は、日常的な口の動きや咀嚼、会話など、さまざまな生活活動に欠かせないものです。 

1.  関節円板の存在

顎関節には関節円板と呼ばれる軟骨が存在します。この円板は上下の顎骨の間に位置し、顎の運動をスムーズに行うのに重要です。関節円板は、咀嚼中や口の動きに伴い顎骨と頭蓋骨の間で滑りやすくなることで運動の安定性と効率性を高めます。

2.  多方向の運動

顎関節は上下運動だけでなく前後方向や側方方向への運動も可能です。これにより、食物を咀嚼する際や口の開閉、側方運動など様々な口の動きが可能になります。

3.  咀嚼筋の制御

顎関節の運動は、咀嚼筋や他の周囲の筋肉によって制御されます。これらの筋肉は顎の適切な動きと安定性を確保し、咀嚼中や日常的な口の動きをサポートします。

4.  神経支配

顎関節は三叉神経(三叉神経)によって支配されています。この神経は顎関節の感覚と運動を制御するために重要です。神経の適切な働きが顎関節の正常な動きと機能を維持するのに必要です。

5.  摩擦の減少

関節円板と顎骨の接触面を覆う軟骨が摩擦を減少させる役割を果たします。この軟骨は顎の動きをスムーズにし、関節の磨耗や損傷を防ぎます。

 

C.関節円板は顎関節のキーストン

関節円板は、顎関節内での正常な機能に重要な役割を果たしています。関節円板は顎関節の正常な機能に不可欠な役割を果たしています。そのため、関節円板の異常や損傷が顎関節症などの問題を引き起こします。顎関節の健康状態を維持するためには関節円板の適切な位置と機能が重要です。以下に、関節円板の機能による顎関節の生理学的な動きを解説します。 

1.  緩衝

下顎骨(顎骨)と頭蓋骨の間に位置し関節の摩擦を軽減する緩衝材として機能します。咀嚼や口の動きに伴う圧力やストレスを吸収し関節の負担を軽減することで顎関節の保護を支援します。

2.  安定化

下顎骨の顎頭と頭蓋骨の関節窩との間での適切な位置を維持し顎関節の安定性を確保します。これにより、関節の運動範囲が調整され口の開閉や咀嚼時の適切な動きが可能になります。

3.  滑転

下顎骨の顎頭と関節窩の間でのスムーズな滑転を促進します。口の開閉や側方運動時に顎の動きが円滑に行われ正常な咬合機能が確保されます。

4.  軸方向の安定性

下顎骨の顎頭に対して前後方向に移動することで顎関節の軸方向の安定性を提供します。これにより、顎の動きが正確に制御され咬合時の歯の接触が適切に調整されます。

5.  関節液の循環

関節円板の適切な位置と動きは関節液の循環にも影響を与えます。適切な関節円板の機能により関節液が適切に分泌され顎関節の潤滑や栄養供給が促進されます。

 

D.咬合の臼磨運動は複雑な顎機能

咬合の臼磨運動は、顎の複雑な機能の一部であり、咀嚼や口の動きを可能にする重要な要素です。咬合の臼磨運動の顎の複雑な機能は、咀嚼や口の動きを可能にする重要な要素で、これらの運動は食物を効率的に咀嚼し口の機能を維持するために不可欠です。以下に顎機能における臼磨運動について考察します。 

1.  咀嚼

臼磨運動は、咀嚼(噛む)行為に関連しています。食物を咀嚼する際、下顎骨は上下運動と側方運動を組み合わせて複雑な動きをします。食物が咬合面全体で均等に分散され、効率的に咀嚼されます。

2.  咀嚼筋の働き

咀嚼運動中、顎の動きを制御するために咀嚼筋(顎筋)が重要な役割を果たします。咬合時には咀嚼筋が適切な力を発揮して顎を動かし食物を咀嚼するための適切な圧力を加えます。

3.  側方運動

臼磨運動は側方運動(左右の動き)も含まれます。側方運動は咀嚼中に食物を均等に咬合面全体で分散させるために重要です。側方運動により、顎が左右に移動し咀嚼運動が効果的に行われます。

4.  咀嚼リズム

臼磨運動は咀嚼リズム(chewing cycle)を確立するためにも重要です。咀嚼リズムは顎の運動が均等で効率的に行われることを保証し食物が適切に咀嚼されるのを支援します。

5.  口の開閉

臼磨運動は口の開閉も含まれます。口の開閉は咬合時だけでなく日常的な口の動きや会話中にも重要です。臼磨運動によって顎の適切な開閉と閉鎖が維持され、口の機能が確保されます。

 

E. 顎運動と咬合の不調和で生じる症状

顎運動と咬合の不調和で生じる症状は顎関節症の一種である不適合咬合(Malocclusion)に関連しています。不適合な咬合によって引き起こされるこれらの症状は個々の症例によって異なります。治療には正確な咬合診断と適切な治療計画が必要です。咬合調整、口腔内装置の使用、物理療法など必要に応じた歯科治療などが含まれます。以下に、この症状が引き起こす可能性のあるいくつかの症状を考察します。 

1.  疼痛や不快感

顎運動と咬合がマッチングしないと顎関節や周囲の筋肉に過度の負担がかかる可能性があります。顎関節周囲の疼痛や不快感が生じる場合があります。

2.  関節音

不適合な咬合が顎関節の正常な動きを妨げることがあり関節音(クリック音やカクカク音)が生じる場合があります。これは関節円板の位置が不安定になり顎関節内での摩擦や異常な動きが引き起こされる結果です。

3.  筋肉の緊張

不適合な咬合が持続すると周囲の顎関節や咬筋に過度の負担がかかり筋肉の緊張や疲労が生じる可能性があります。顔面や頭部の痛み、頭痛、首や肩の緊張感が引き起こされることがあります。

4.  歯の異常摩耗

歯の異常摩耗が起こる可能性があります。特定の歯に過度の負荷がかかり歯の表面が摩耗し歯の形や機能が損なわれる結果です。

5.  咬合不良による消化器系の問題

咀嚼や嚥下が十分に行われず消化器系の問題が引き起こされる可能性があり、食事の消化や栄養の吸収に支障が生じることがあります。

 

F. 関節円盤の損傷による機能障害

関節円盤の損傷は、様々な症状を引き起こす可能性があります。これらの症状は患者の生活に大きな影響を与えることがあり早期の診断と適切な治療が重要です。顎関節機能の障害を引き起こす可能性があり、以下に、関節円盤の損傷による機能障害について考察します。 

1.  疼痛

顎関節周囲の疼痛が生じることがあります。この疼痛は顎の動きや咀嚼時に増強されることがあり、日常生活に支障をきたす可能性があります。

2.  口の開閉障害

顎関節の正常な動きが妨げられることがあります。口の開閉が制限されたり不快感を伴うことがあります。

3.  顎関節音

顎関節音(クリック音やクレーキング音)が生じることがあります。これは、関節円盤の位置が変化し、顎の動きと関節の摩擦が増加するためです。

4.  筋肉の緊張

周囲の咬筋や顔面筋が過度に緊張することがあります。顎関節の安定性を取り戻そうとする筋肉の反応であり疼痛や不快感を引き起こす可能性があります。

5.  機能障害

関節円盤の損傷が進行すると顎関節の機能障害が生じる可能性があります。口の開閉が制限されたり咀嚼が困難になったりする場合があります。

 

G. 関節円板の損傷の原因は

関節円板の損傷の原因は要因が単独で作用することもありますが多くの場合、複数の要因が組み合わさって関節円板の損傷が引き起こされます。したがって、関節円板の損傷の原因を正確に特定し適切な治療法を選択するためには症状や患者の個別の状況を十分に評価する必要があります。以下にその主な要因をいくつか挙げてみます。 

1.  外傷

顎関節に外部からの急激な力が加わることで関節円板が損傷することがあります。交通事故やスポーツの負傷、転倒などが外傷の原因となることがあります。

2.  慢性的なストレス

口腔内の構造や機能に関する慢性的なストレスや過負荷も関節円板の損傷を引き起こす原因となります。過度な歯ぎしりや食いしばり、誤った咀嚼パターン、不適切な咬合、顎関節周囲の筋肉の緊張などが含まれます。

3.  関節円板の位置異常

関節円板が正常な位置からずれることがあり、関節円板の損傷を引き起こす可能性があります。関節の形状異常や関節周囲の組織の炎症などによって引き起こされます。

4.異常な咬合

不適切な咬合や咀嚼運動は関節円板に過度の負担をかけることがあり、これが損傷の原因となることがあります。特に、歯列の不正や咬合不良がある場合には関節円板に対する負担が増加しやすくなります。

5.代謝異常

体内の代謝異常や免疫系の問題が関節周囲の組織に影響を与え関節円板の損傷を引き起こす可能性があります。例えば、関節リウマチや関節炎などの自己免疫疾患が関節円板の病態に関連していることがあります。

 

H. 顎関節症の外科療法と保存療法について

顎関節症の治療法には外科療法と保存療法の両方があります。症状の程度や原因、患者の個別の状況に応じて個別化される必要があります。外科療法は重度の症例に対して有効ですが手術にはリスクや合併症が伴う場合があります。一方、保存療法は症状の軽度な場合や一過性の症状の場合に有効であり手術を避けることができます。最適な治療法を選択するためには患者の症状や状態を総合的に評価し、それに基づいて治療計画を立てる必要があります。以下にそれぞれの特徴と考察を示します。 

1.外科療法

顎関節形成術

関節円板の再建や関節内部の病変の除去を行う手術です。関節形成術は重度の顎関節症や関節円板の損傷が原因で関節の形状が変形している場合に適用されることがあります。手術の目的は関節の形状を修正し正常な機能を回復させることです。

顎関節置換術

重度の顎関節症や関節の変形が進行している場合に行われる手術です。この手術では損傷した関節を人工の関節に置換することで関節の機能を回復させます。顎関節置換術は関節円板の損傷や変形による疼痛や機能障害を軽減するために行われることがあります。

2.保存療法

●咬合スプリント療法

咬合スプリント療法は、顎関節症の症状を軽減するために用いられる保存療法の一つです。スプリントと呼ばれる装置を用いて、顎の位置を調整し、関節への負担を軽減します。咬合スプリントは、症状の軽度な顎関節症や一過性の症状の場合に有効です。

●薬物療法

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や筋弛緩剤などの薬物療法が、顎関節症の症状の管理に用いられることがあります。これらの薬物は、炎症や疼痛を軽減し、筋肉の緊張を和らげる効果があります。また、抗不安薬や抗うつ薬も、関節症の症状を管理するために使用されることがあります。

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