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顧客の話しではなく、非顧客の話しを聴かないと変化に気づくことはできない

イノベーションの最初の一歩は「予期せぬ成功や予期せぬ失敗」を見逃すな、というのがドラッカーの教えです。

成功していた企業が衰退に向かうのは、そうした予期せぬできごとを見逃していたときに起きると言われています。

予期していないのだから、気が付いたときには「時すでに遅し」ということになり、予想もしていなかった別の企業にその地位をとって代わられる、なんていうことも起こります。

では、そうした予期せぬものを知るためにはどうしたらいいのかについて、ドラッカーはこのように問いかけています。

ノンカスタマー(非顧客)、すなわち市場にありながら、あるいは市場にあってもおかしくないにもかかわらず、自社の製品を購入しない人たちは誰か。なぜ彼らは顧客になっていないのか。

「創造する経営者」(P.F.ドラッカー著:ダイヤモンド社)

たとえ、市場でのシェアが40%でトップシェアであっても、60%の消費者は他社から購入しているのであって、なぜ彼らが自社から購入しないのかに注意を傾けろというのです。

こう言うと、次のような反応が返ってくることがあります。

「シェアを限りなく100%に近づけろとでもいうのか。
そんなことは所詮不可能で、市場には業界ごとに、それ以上大きくなるべきではないという適切なシェアがあるのだから、ノンカスタマーに注意を払うよりも、自社顧客に注意を傾けるのが一番だ」

その通りです。

市場には業界ごとにそれ以上大きくなるのは不適切だというシェアがあると言われています。
寡占状態にある市場の顧客は、誰でもいいから対抗馬の登場を期待するものです。

ドラッカーが言っているのは、限りなくシェアをとれということではありません。

ほとんどあらゆる組織にとって、最も重要な情報は、顧客ではなく非顧客(ノンカスタマー)についてのものである。変化が起こるのはノンカスタマーの世界である。

「ネクスト・ソサイエティ」(P.F.ドラッカー著:ダイヤモンド社)

ドラッカーがノンカスタマーに聴きに行けというのは、市場の大きな変化はノンカスタマーの世界から起きてくるものであって、それゆえに変化に気がつかないまま過ごしてしまい、衰退に向かう危険があるからだということです。

デパートを主な売り場としていた紳士服や婦人服のメーカーが、ユニクロやZARAに負けてしまい衰退の一途をたどってきたのは、90年代にデパートに来店しないノンカスタマーに関しての情報を何一つ持たなかった(関心すら持たなかった)からで、気が付いたときにはもはや手遅れになっていたからではないでしょうか。

このような事例は枚挙にいとまがありません。

私がかつて働いていた業界では、メーカーごとに系列代理店のような仕組みが存在していましたが、私たちの会社はつねに系列外の非顧客への接触を続けてきました。

その都度、地域の既存顧客から強めのクレームを受けてきましたが、結果的に市場の変化の先頭に立って経営して来れたことは事実です。

私は当時、「何故、コンペティターは当社の顧客のもとに営業に来ないのだろう」と思ったものです。

変化が起こるのはノンカスタマーの世界からです。

あなたの会社からモノやサービスを購入しない顧客のもとに行って、その顧客が何を考えているのか聴きに行くべきではないでしょうか。

顧客と市場を知っているのはただ一人、顧客本人である。

「創造する経営者」(P.F.ドラッカー著:ダイヤモンド社)

他社の顧客、すなわち皆さんの会社のノンカスタマーの情報こそが、予期せぬものを教えてくれるはずです。

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