頑固な体調不良には、ベーグル療法がいいかもしれない
今年に入ってから体調が優れず、食欲も落ちているものの、ベーグルならば常に食べたいという異様な事態に見舞われている。
10年以上ベーグルを食べていない人間に、唐突なベーグルブームが到来したのである。
そこまでゴールデンでもなかった今年のgwが呆気なく終わったわけだが、急激にハマったベーグルに心を奪われ続けている私は、このgwでついにベーグル専門店とやらに足を運んだ。
🥯テコナベーグルワークス🥯
ベーグル好きで知らない人はいない、テコナベーグルワークス。食べログのパンの百名店にも選出されているこの超超人気店は、東京の代々木八幡駅から徒歩3分ほどの場所にある。
開店の11:00を狙って、駅には15分前につき、お店には10分前についた。しかし、流石の人気店とあって、既にお店の前には近隣に迷惑をかけない決められた並びのルールに従って、30人ほどが列を作っていた。
最後尾が2つあるように見えたが、本物の最後尾のお客さんが「ここが最後尾」というようなことを教えてくれて、調和を乱すことなく並べて、心底ホッとした。
行列のお供
滝口悠生の茄子の輝きを読んでいたら、あっという間にお店に入ることができた。気づいたら45分経っていた。店員さんのテキパキさも、お客さんたちの待ってるお客さんへの配慮も、そして滝口悠生もすごい。
いざ、店内へ
私につられてまあまあベーグルにハマってる夫も道連れに店内へ入ると、そこはもう本当に異世界としか言いようがない、ベーグル好きのための空間が広がっていて、決して広くはないその店内には、これでもかと焼かれたベーグルがこれでもかと並んで積まれていた。
そもそもベーグルとは
偉そうにここまでぺらぺら語ってきたが、紛れもないベーグル初心者なので、整理のためにもベーグルについておさらいしようと思う。
まず、ベーグルはパンの一種でありながら、普通のパンとは決定的に大きな違いがある。それが以下。
生地に卵、バター、牛乳を使っていない
茹でてから焼く
この2つの違いはかなりでかい。これによって、もちもちとした弾力ある歯ごたえがありながらもヘルシーな「ベーグル」というパンが、パンとは一線を画して存在しているのである。
パンを茹でようと思う至極豊かな発想が気になったので調べたら、焼くことを禁じられたユダヤ人が茹でてみたらどうか、と試したことが起源という説があった。皮肉なことだが、理不尽な制限はときに素晴らしい発想を生む。
想像を絶する状況下でベーグルが誕生したことを考えるとなんとも言えない気持ちになるのはやむないが、今の私ができることはベーグルを心から楽しむことしかない。
ふか、もち、むぎゅ
さて。テコナさんの魅力に戻ろう。テコナさんは、ほかのベーグル屋さんと一味違って、ふか、もち、むぎゅ、という3種類の生地のベーグルがある。
違いは言うまでもない、名前の通り食感がふかふかか、もちもちか、むぎゅむぎゅかの違い。
ふか:ふかでもベーグルはベーグルなのでかなりもちもち。
もち:ふかよりもっと弾力があり、これが本物のもちもちか、と気づかせてくれるもちもちさ。
むぎゅ:顎が鍛え上げられるほどの密度の高さ、それがむぎゅである。
毎日60種類くらいのベーグルを焼いていて、さらに生地が3種類もある。これは何度通ってもすべてを食い尽くせないだろう。選ぶのが困難なくらいたくさん焼き上がっているベーグルが目の前に並ぶのを見て、本当に幸せな気持ちになった。
ちなみにテコナさん、本も出している!ふか、もち、むぎゅ、それぞれの作り方が書いてあるとのことでつい買ってしまった。わたしでも作れるのだろうか、と少しドキドキしつつも期待を込めて。来月には絶対つくるぞ…!
夢の国
現状把握のため、自分の症状を書き出してみた。足と手の指が特に酷いが、なんとか人体を示すイラストというのは伝わるだろう。
とてもじゃないけど人と会える状況じゃない。在宅勤務だからなんとかやれてるここ最近の不調具合。ちょっと笑えてくるほどの不調だ。
しかし、一切の誇張なしに、私はテコナベーグルでベーグルを選んでいるとき、ここに書き出した全ての体調不良を忘れ、久しぶりに自分の欲に忠実に、誠実になることができた。
ベーグルは今の私にとって大きい存在なんだと、沁みるように思った。
そしてなにより、久しぶりに生きていてワクワクを感じた。大変ご無沙汰していたが、ワクワク感というのは強い感情で、ずっとずっと昔に感じたことのあるそれと合致し、懐かしさを抱いてる自分に気づいた。
それは、6歳頃、近所にあったけどなかなか行かせてもらえなかったとしまえんという遊園地にいったとき。
それは、またちょっと大きくなった9歳頃、初めて友達と友達のお母さんとディズニーランドにいったとき。
まさに、当時夢の国に抱いたそれと、同じであったのだ。
片っ端から全部のアトラクションに乗りたいという気持ちと、片っ端から全部のベーグルを食べ尽くしたいという気持ちは、四方八方どの角度から見ても、紛れもなく同じなのであった。
夢の国というのは年を取るごとに変わる。今の私にとっての夢の国は、いまはなきとしまえんでも、ディズニーランドでもない。ベーグル専門店なのである。
毎日ベーグル生活
約4000円という対価を払って、12個のベーグルを手に入れた。それとともに、ベーグル生活2週間分ももれなくついてくる。
脳が幸福なバグを起こしながら後先考えず、あれもこれもとトングでベーグルを掴んだあの時間が、いまも忘れられない。
ベーグルの良いところはたくさんあるのだが、冷凍保存がきくところが圧倒的に素晴らしい。大量買いしても、冷凍で数週間保存できるので、毎日美味しいベーグル生活を送ることができるのである。
基本的には夫と半分して、幸せは独り占めしないスタイルでやっている。これはよもぎあんこ。食感がまさにむぎゅむぎゅ、よもぎも香りあんこもしっかり詰まって、どこまでも満たしてくれる。
これはテコナ来店翌日の昼ご飯、ホアジャオチーズというちょっとめずらしい変わり種。ホアジャオとチーズは大変相性が良くて、腹持ちもよくて、ずっと満足感が途切れることなく、19:00頃まで続いた。
夫が食べていた青のり枝豆チェダーチーズを一口くれたので、しぶしぶ私のも一口だけあげた。青のりのベーグルもかなり美味しくて、もう一口上げるからもう一口ほしくなるくらい美味しかった。
しかし、一口交換後の夫は、もう自分のベーグルに夢中だったので、二口目は幻となった。
ベーグル療法
一つだけ困ったことがあった。買ったあとどの味かがわからなくなってしまったことだ。12個買ったベーグルたちには名前が書かれておらず、簡易的なラップで包んであるのみ。見た目から、もしかしてこれ?と見当はつくが、実際たべてみないと分からないのである。それはそれで楽しいのだが。
ちなみに店員さんは、トレイに盛られたベーグルたちをひと目見て、
「よもぎがふたつ、かぼちゃクリームチーズ、ごまあん、青のり、、、、、」
などという具合で、間違いなく特技と言えるクオリティでベーグルを見分け、会計をしてくれた。極めている人特有の末恐ろしさがあった。
ベーグルのフレーバーと金額を見極めた店員さんから、「XXXX円です」と告げられた金額には疑う余地などなく、言われるがままにペイペイで支払い、レジじゃない方のもう一人の店員さんが事前に渡していた私のエコバッグにベーグルを詰めてくれて「またお越しくださいませ」と言われるまで、1分もなかった気がする。
買ったベーグルの写真をもう一度見返す。
例えば、写真の一番手前の2つはかぼちゃの種が乗ってるので、かぼちゃのベーグルなんだなとわかるのだが、その日かぼちゃを使ったベーグルはおそらく3種類くらいあった。
判断力が低下した幸せな脳みそで手に取ったベーグル。私が何を買ったのかは、もう誰にも分からない。何が起こったのかもよく覚えていない。なんたる幸せな混乱。
受け取ったエコバックの中では、大量のベーグルが折り重なった状態で躍っていた。そしていまは私の家の冷凍庫で、氷をまとい、じっとそのときを待っている。
明日は何を食べようか。そんな事を考えると、頑固な体調の悪さもすこし引いてくる。このベーグル療法、案外いい線いってるかもしれない。
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