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どたばたアートセラピー 

こんばんは、こんにちは。toga.shiです。昨日は、あるフリースクールでの初めてのパステルアートの日でした。誰でも簡単に描ける…と言っておきながら、初めての、子ども達、パステルを綿でこすって色をつけることできるかなー…と少し不安。季節感を感じる風景や物を描きたい、という思いがありながらも、色をうまくつけられないとモチベーション下がってしまうこともあるしなー、とも思い、やっぱり初回は色を混ぜて色をつけることに重点をおいた絵にすることにしました。というわけで、レインボーの絵にすることにしました。レインボーの色をぬることと、もうひと工夫、簡単にオリジナリティを出せる何かがほしい…うーん、あ、シャボン玉にしよう。これだったら、丸い型があれば、練り消しゴムつかって消すだけだから、楽しみも感じられるからいいかもしれない。なんとかなりそうだ、よし、準備OK。

ところでこのスリースクールというか、スペースみたいなところは、学校に行かない子が週に1回くらい集まって、わくわくするような活動をしているところで、場所は古民家を改装していて、私にとっても魅力的な場所なのでした。
「こんにちは」と入っていくと、オーナーの方が
「こんにちは、今日はよろしくお願いします。子ども達、今、外から帰って  きたところで、ご飯を食べてるんですけど、にぎやかなのが嫌じゃなかったらそこで一緒に待っていただいていいですか」と言われる。
「あ、もちろんいいですよ」と言って入っていくと
子ども達は手巻き寿司、絶賛作り中であった。それも極太のやつ。野菜やら、ツナやら、フライやら、卵やら、たくさんの具材をぎっしりつめて、はみだしている手巻き寿司を、6人の子供がぱくぱく食べていた。具沢山のお味噌汁もついている。
自己紹介をさっとすませて、話かけてみる。
「午前中は何してたの?どこいってたの?」
「えーっとね、うーんと。忘れちゃったな」
「覚えてるけど、どこに行ったのかが分からない」
なんという、はぐらかし。。
「あなたたち、まだ子供だよね。もう午前中何やったのか忘れるんですか?   認知症じゃないよね?」と私が言うと
オーナーの方が、「午前中はヤギを見て来たんだよね」というと、
「なんで教えるのーっ!!」と子ども達が言う。
「なんで教えてくれないのーっ!」と私が言うと
「クイズだったのにーっ」と言う。
なんて素直じゃないんだろう。子どもって、そういう面白さを持ってて、笑えるなぁ、と思う。

手巻き寿司を食べ終わった子供たちが
「鬼ごっこしよう」と言う。押し入れに入って、きゅうりをカリカリ食べながら言っている。河童みたいだ。
「やめておいたほうがいいよ」と隣に座っていた子どもが言う。
「どうすればいいの?」と私が言うと
「選んでください、鬼ごっこ、するか、するか?」と押し入れの河童みたいな子達が言う。
「するか、しないか、でしょ?」
「やめておいたほうがいいよ」
「じゃあ、時間制限、5分間だけやろう、やりたい人だけ参加しよう」ということになって、古民家のつるんつるんすべる廊下を、ドタバタと、すべりながら全力疾走。以外とまだまだ走れるぞ、負けていないぞ。というか、この子達、めっちゃパワフルなんですけど。学校に行けないというよりも、学校に行かないことを選んだって感じ。ここではマスクもしない、アクリル板もない、しゃべりながら皆でモグモグ食べる日常が続いていた。リスクはあるだろうけど、やっぱり楽しいし、健康的だし、ほっとする。こういう場所はこのままであり続けてほしい。で、鬼ごっこでヘトヘトになってから、「おーい、そろそろパステル画描こうよ、準備はじめようよー」ということになった。みんなちゃんと参加してくれるんだろうか。

「いいですか、紙を配ります。紙をテープで固定します、できるかな?」
というと、わりと皆、集中して取り組んでいた。
「今日は、皆で同じ絵を描くよ。これです、レインボーのシャボン玉の絵です」と言ってみせると、反応はいい感じ。でも
「え~っ 描けるかなぁ」という声がきこえたので
「大丈夫、順番に描いていけば、誰でも描けるよ」と私は言う。
「ぼく、自由に描きたい!」とある子が言うので
「今日は同じ絵を描いて、みんなの違いを楽しむんだよ」と言う。

お題の絵

「はい、まず黄色をぬるよ。今日は、綿を使ってかきます。この四角いコットンを、半分に折って、また半分に折って、パステルをこすって色をつけます、ごしごし、ごしごし、粉を削ってつけるんだよ」と言う。
「わたし、やったことあるよ」と、慣れたようにやる子もいれば
不器用ながらも集中して色をつけようとする子や、
「僕はそのまま紙にパステルで描く。で、その後、紙の上から綿でごしごしして色を広げる!」
と自分のやり方でずんずん進んでしまう子がいた。「うーん、できれば綿に色をつけてから描いてほしいんだけどなぁ」と思いつつも、そのまま進んでいくとどうなるんだろう、という思いもあり、「まぁ、本当は粉を綿につけてほしいけど、その描き方でもやってみようか」と言って様子をみることにした。さっきまで鬼ごっこでドタバタ走り回っていた子達が、集中して参加してくれているだけでありがたいことだと思う。

で、なんとか、レインボーの色を、皆つくることができた。よかった、よかった。「次は、シャボン玉を描くよー」
「白い色のパステルがあるの?」と言うので、
「こうやって、丸い型を置いて…」とやり方を見せると
「わかった!消しゴムで消すんだ!」と言う。
「そうです、練り消しゴムで消すと、こんな風に、白くなるんだよ」と私は消しゴムで消してみせて言う。
で、それぞれ好きな形の丸い型をとって、消しゴム作業が始まった。レインボーの背景を丁寧に、はっきりとした色で塗っていた子達はきれいに型がぬけていたが、荒っぽい描き方をしていた子や、薄めの色で描いていた子達が、白がうまく出てこなかった。「あ~、うまくできないや~」と、あからさまにモチベーションが下がっていく感じが見えたので…うーん、どうしようか。あ、わかった。
「白が上手く出ない人は、特別に、めんぼうをあげます。綿棒をつかって、型の輪郭に色をつけてみよう」と言って、シャボン玉の輪郭を描く作戦を提案した。すると、「めんぼうください!」とモチベーションがぐっと上がり、色をつけはじめていた。やったね。
青く色を塗られたシャボン玉は、「きれいだね、地球みたい。宝石みたいにもみえる」と、とってもユニークなシャボン玉になっていた。
それを横でみていた、ちゃんと白いシャボン玉が描けていた子達も、
「めんぼうください!」と。
めんぼうブームやってくる!
輪郭に色をつけたり、シャボン玉の中を自由に塗り始めていた。まるで、土星みたいな色をぬる子もいて…宇宙の中にただよう星みたいな世界ができていった。
「わぁー きれいだねぇ、みんな、次々と工夫をして、すごいね、面白いなぁ」と言いながら、私はその時間をとっても楽しんでした。本当に、私のお手本なんか飛び越えて、予想外のオリジナリティが生まれる瞬間が一番楽しい。早く描き終わった子供たちは、練り消しゴムを粘土みたいにして、「キングコブラと、キングコブラのこども」を作って、何やら戦いをはじめていた。なんて想像力豊かなんだろう。そして自由なんだろう。
その横で、鬼ごっこでぎゃーぎゃー騒いでいた子が、静かに集中して、練り消しゴムをコロコロと、指でローリングしながら色を消す作業に没頭していた。「そろそろいいんじゃない?」と言っても、「いや、まだ」と。納得するまで取り組みたい様子。こういう一生懸命な姿をみるのも、心を動かされる。ギャップがあるだけに、さらに魅力が増す。その子は「自由に絵を描くのは苦手なんだけど、これだったらいい。これだったらできるよ」と満足気に言っていたので、ああ、やっぱりこの描き方よかったんだ、とあらためて安心して嬉しくなった。
作品はお見せできないけれど、6人の個性が表現された「にじいろシャボン玉」の絵ができた。で、ここからが大切な時間。みんなで絵を眺めながら、自分の絵について感想を言って、他の人の絵について気づいたことを話し合う時間…「さぁ、絵について話そう、コメントしよう」と呼びかけるが、
あれ、みんな、いない、鬼ごっこはじまっとるし…笑。
みんな、すでに鬼ごっこに夢中であり、誰も、もう絵の世界に戻ってこようとはしないのだった。
手ごわいな。でも、子どもらしくて、大人のねらいを裏切ってきて、やっぱり面白いなぁ。
コメントの時間は、次回から作っていくように努力しよう。
でも、こんなふうに鬼ごっこ夢中で楽しんでるってことは、パステルアートの時間を集中して楽しんでいたってことだろう、と解釈することにした。よいエネルギーが通ったから、自然にみんなで遊ぶ時間が開始されたのだろうと。 来月もまたやることになった。パワフルでわんぱくな子ども達とのアートの時間。私も元気をもらった時間だった。帰りは道の駅によって普段買わないような野菜やら花やらを買ってきて、生活が刺激された一日だった。

私は、こんな風に、「もうひとつの場所」でも生きることができていて幸せだなと思う。もうひとつの場所というのは、世間一般の大多数の価値観とは、少し別の価値観が息づいている場所のことだ。職場はスタンダードな障害者施設だから、マスク、消毒、アクリル板、密を避ける活動を徹底しなければいけない世界。今となってはあたりまえの世界だけど、それだけではきゅうくつだ。今回のフリースクールは、あえてそれをしない、を選んでいる人が集まっている場所。リスクはあるけど、ほっとして呼吸ができる。私は本当はこちらが好きだ。でもこの場所だけで生きていくのも私にとってはまだきゅうくつだ。2つの世界を行き来できるのは本当にありがたい。それを繋いでくれているのが、パステルアートという切符。2つの世界の間で、もがいていくのをこれからも続けていこうと思った。

今日も読んでいただきありがとうございます。


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