156.第5章「映画とテレビでトップをめざせ!不良性感度と勧善懲悪」
第28節「スケバン刑事シリーズ」
1985年3月、フジテレビ系木曜19時30分枠の『TVオバケてれもんじゃ』が終了します。
この番組は、フジテレビ清水賢治、東映平山亨と植田泰治がプロデュースした子供向け特撮ドラマでした。
後番組としてこの時代の若者の心を捉えた大ヒットシリーズが始まります。
①フジテレビ系木曜19時30分『スケバン刑事』(1985年4月11日~10月31日 全24話+SP2話)
1985年4月、『花とゆめ』(白泉社)にて1976年1号から1982年24号まで連載し大ヒットした和田慎二の人気マンガを原作に、人気急上昇中のアイドル斉藤由貴主演の学園ドラマ『スケバン刑事』が始まりました。
この番組はフジテレビ岡正が企画、前田和也がプロデューサー、東映は中曽根千治が担当し、後に東映社長に就任する手塚治がプロデューサー補として参加します。
脚本は初メインの杉村のぼる他土屋斗紀雄、海野朗及び遠野海彦(江連卓)、山中伊知郎、橋本以蔵が担当しました。
監督は、パイロットを「東映不思議コメディシリーズ」の坂本太郎、他に田中秀夫、小西通雄に前嶋守男、小野原和宏が演出します。
「東映不思議コメディシリーズ」と同じ東映映像が制作し、撮影池田健策、林迪雄、照明関口弥太郎、大森康次、美術安井丸男、
録音熊谷良兵衛、編集只野信也、装置脇田紀三郎、協力会社は装飾 装美社、衣裳東京衣裳、美粧サンメイク、アクションクリエーター 大野剣友会の岡田勝というメンバーで、武器のヨーヨーは滝雅也が指導しました。
音楽は「スペクトラム」の新田一郎、主題歌「白い炎」(作詞:森雪之丞/作曲:玉置浩二/編曲:武部聡志)は斉藤由貴が歌います。
主役のスケバン刑事麻宮サキ役の斉藤由貴は、1984年の第1回東宝「シンデレラ」オーディションのファイナリストに選ばれ、『少年マガジン』(講談社)「第3回ミスマガジン」にてグランプリを受賞。明星食品「青春という名のラーメン・胸騒ぎチャーシュー」のTVCMが話題となり、1985年2月に発売した歌手デビュー曲『卒業』(キャニオン・レコード)が30万枚を超えるヒットとなった人気急上昇中の新人でした。
斉藤は、ヨーヨーの桜の代紋をみせながら「鷹ノ羽学園2年B組麻宮サキ。またの名はスケバン刑事」と名乗り「スケバンまで張ったこの麻宮サキが、何の因果か落ちぶれて、今じゃマッポの手先。笑いたければ笑えばいいさ。だがな! てめぇらみてぇに魂までは薄汚れちゃいねぇんだぜ!」と啖呵を切ります。
暗闇指令役長門裕之、担任の体育教師役平泉成、英語教師役児島美ゆき、サキのライバル海槌麗巳(みづち れみ)役に高橋ひとみ、その父海槌剛三役で神山繁などがレギュラー出演しました。
初回13.3%と高視聴率で始まった『スケバン刑事』は第13話で17.0%と最高視聴率を記録します。
斉藤が1986年のNHK連続テレビ小説第36作『はね駒』主演が決定したことで10月に2クール24話+スペシャル2話で終了、平均視聴率は13%でした。
大ヒットした『スケバン刑事』の功をたたえフジテレビから東映スタッフに感謝状と金一封が贈られます。
社内報に掲載されたインタビュー記事
②フジテレビ系木曜19時30分『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』(1985年11月7日~1986年10月23日 全42話+SP1話)
1985年11月、南野陽子を主演に起用した第2弾『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』の放映がスタートしました。
プロデューサー陣は企画に東映植田泰治が加わり手塚がプロデューサーに昇進した以外は前作と同じで、脚本もメインの土屋の他橋本、杉村、山中という前作メンバーに戸田博史が参加します。
監督は、パイロットの田中秀夫他坂本太郎、前嶋守男、新たに大井利夫も演出陣に入ります。
植田が所属する東映制作所を吸収した東京撮影所第二企画製作部第二企画が制作。制作スタッフでは前作のメンバーに撮影で奥村正祐、大町進、村上俊郎、照明に大須賀国男、増川弘邦、稲葉好治、上原福松が加わり、協力会社は前作と同じでした。
音楽も前作と同じ新田一郎で第1話から15話までの主題歌「なぜ?の嵐」(作詞:秋元康/作曲:山梨鐐平/編曲:瀬尾一三 フォーライフ・レコード)は吉沢秋絵 with おニャン子クラブ、第16話から32話の「悲しみモニュメント」(作詞: 来生えつこ/作曲: 鈴木キサブロー/編曲: 新川博 CBS・ソニー)は南野陽子、第33話から42話「風のマドリガル」(作詞: 湯川れい子/作曲: 井上大輔/編曲: 萩田光雄 CBS・ソニー)も南野陽子が歌います。
主演2代目麻宮サキ・五代陽子(本名早乙女志織)役の南野陽子は、CBSソニーのオーディションに合格し1985年6月「恥ずかしすぎて」で歌手デビューした新人でした。この作品では「鉄仮面に顔を奪われ、十(とお)と七とせ、生まれの証しさえ立たんこの私(あてぇ)が何の因果か警察(マッポ)の手先。けんどなぁ、こんなあてぇでも愛することの尊さは忘れちょらんき。二代目スケバン刑事麻宮サキ。」など土佐弁の口上の後、「おまんら絶対に許さんぜよ!」と啖呵を切ります。
今作では、袱紗と琴の爪(山田流)が武器の矢島雪乃役おニャン子クラブの吉沢秋絵、ビー玉のお京こと中村京子役に相楽ハル子の二人がサキの仲間として起用されました。
暗闇指令は前作と同じ長門裕之、暗闇機関のエージェント西脇役蟹江敬三、陽子の父早乙女四郎役で宮内洋などが出演します。
初回14.5%と前作を上回る高視聴率で始まった『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』は1986年10月まで1年間続き、平均視聴率14.3%、最終話となる第42話で19.1%の最高視聴率を記録しました。
主演の南野は大ブレイクし、一躍トップアイドルに仲間入りします。
そして終了後の1987年2月14日、人気を博した今シリーズの後日談として劇場版『スケバン刑事』(脚本:橋本以蔵、土屋斗紀雄・監督:田中秀夫・主演南野陽子)が公開されました。
劇場版『スケバン刑事』は大ヒットし、同年12月12日公開『はいからさんが通る』(佐藤雅道監督)、翌年8月6日公開『菩提樹 リンデンバウム』(山口和彦監督)と南野主演映画が東映東京撮影所で2作品作られます。
1987年4月にはセガからアクションアドベンチャーゲーム『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』が発売されました。
③フジテレビ系木曜19時30分『スケバン刑事III 少女忍法帖伝奇』(1986年10月30日~1987年10月29日 全42話+SP1話)
1986年10月、大ヒットした『スケバン刑事Ⅱ 少女仮面伝説』の後番組として『スケバン刑事III 少女忍法帖伝奇』が開始します。
今シリーズではフジテレビの前田が企画に回り、岡と二人で担当、プロデューサーは東映中曽根と手塚にフジテレビの石原隆が加わりました。
脚本はメインの土屋と橋本に我妻正義、武上純希、神戸一彦が新たに参加します。
監督陣はパイロットの田中他大井、坂本、前嶋と前作と同じ布陣で、制作スタッフでは前作メンバーに撮影三木修二、照明篠崎豊治、高橋弘、録音岡田忠直などが加わった他、アクションクリエーターが上田弘司に替わり、協力会社は前作と同様でした。
音楽も前作と同じ新田一郎で、第1話から8話までの主題歌「ハートのIgnition」(作詞:秋元康/作曲:伊藤銀次/編曲:大村雅朗 キャニオン・レコード)は おニャン子クラブ福永恵規、第9話から21話の「STAR」(作詞:有川正沙子/作曲: タケカワユキヒデ/編曲: 鷺巣詩郎 ハミングバード)は浅香唯、SPとそれに続く第22話から31話「瞳にSTORM」(作詞: 湯川れい子/作曲: 井上大輔/編曲: 新川博 ハミングバード)は浅香唯、第32話から37話「虹のDreamer」(作詞: 湯川れい子/作曲: 井上大輔/編曲: 新川博 ハミングバード)は浅香唯、第38話から42話「Remember」(作詞: 湯川れい子/作曲: 来生たかお/編曲: 中村哲 ハミングバード)は風間三姉妹(浅香唯、大西結花、中村由真)が歌います。
今作は風魔忍者末裔の風間小太郎の三人の娘、風間三姉妹が悪の忍者組織と対決する特撮ヒーローの要素が強い作品で、三代目スケバン刑事麻宮サキを襲名する末妹風間唯役の浅香唯、長女の結花役大西結花、次女の由真役中村由真、3人のヒロインが忍者集団「陰」と戦いました。
ヨーヨーが武器の唯、名乗り口上は「三代目スケバン刑事、麻宮サキ」、折鶴が武器の結花「風間結花、人呼んで折鶴の結花」、リリアン棒が武器の由真「風間由真、またの名をリリアンの由真」。予告編では唯が九州弁で「せからしか!しっかりしね!」「せからしか!わちが三代目じゃ!」「せからしか!きさんら許さんばい!」などで締めます。
三姉妹の他には、暗闇機関のエージェント般若役萩原流行、城戸礼亜役福永恵規(さとみ)、3作に出演する暗闇指令役長門裕之、帯庵和尚役田中浩、三姉妹の父風間小太郎役伊藤敏八などが出演しました。
初回20.8%と前作を上回る高視聴率で始まった『スケバン刑事III 少女忍法帖伝奇』は第9話で21.3%のシリーズ最高視聴率を記録、1987年10月まで1年間続き、平均視聴率14.0%と前作同様大ヒットします。
そして終了後の1988年2月11日、劇場版『スケバン刑事 風間三姉妹の逆襲』(脚本:橋本以蔵・監督:田中秀夫・主演浅香唯)が公開され前作と同じく大ヒットしました。
1988年1月には東映動画から任天堂ファミリーコンピューター用アクションアドベンチャーゲーム『スケバン刑事Ⅲ』が発売されます。
『スケバン刑事III 少女忍法帖伝奇』の後番組、五十嵐いづみ主演『少女コマンドーIZUMI』(1987年11月5日~1988年2月18日 全15話)でフジテレビ系木曜19時30分枠の東映番組は終了。
4月から月曜19時30分枠で角川書店の協力にて『花のあすか組!』(1988年4月11日~9月26日 全23話)をスタートさせました。
1985年4月よりフジテレビ系木曜19時30分枠にて始まった「スケバン刑事シリーズ」は87年10月まで続き、斉藤由貴、南野陽子、浅香唯と三人のスターを生み出した今でも記憶に残るTVシリーズとなります。
ちなみに、大ヒットした「スケバン刑事シリーズ」の「スケバン」という言葉は、東映の映画プロデューサー天尾完次が「女番長」にルビとして付けた言葉「すけばん」が始まりでした。
トップ写真:東映ビデオ『スケバン刑事3部作一挙見Blu-ray』©和田慎二・東映