157.第5章「映画とテレビでトップをめざせ!不良性感度と勧善懲悪」
第29節「京都撮影所テレビ時代劇①」
1964年2月、東映東京撮影所(東撮)所長の岡田茂が、大川博社長より時代劇映画不振の東映京都撮影所(京撮)立て直しの命を受け、所長として戻ってきました。
それと共に東映京都テレビ・プロダクション(京都テレビプロ)が設立され、京撮でのテレビ時代劇制作が本格的に始動します。
脚本家の結束信二や監督の佐々木康、河野寿一など、時代劇映画のベテランスタッフが担当する勧善懲悪のテレビ時代劇は、家族そろって安心して見れる番組としてお茶の間の人気を呼びました。
今節では東映テレビ時代劇の代表的シリーズを年代別にまとめて紹介して参ります。
(1)1960年代に始まった東映テレビ時代劇人気シリーズ
①京都テレビプロ制作初作品『忍びの者』
京都テレビプロが初めて制作したテレビ時代劇は、日本教育テレビ(NET/現テレビ朝日)系金曜20時放映の品川隆二が主演した村山知義原作『忍びの者』(1964/7/26~1965/7/30 全52話)でした。
この作品のプロデューサーは東映からNETへ出向した上月信二、脚本は結束信二、高田宏治、鳥居元宏他、監督は河野寿一、小野登、林伸憲、高見育夫他が担当します。
久しぶりの京撮テレビ時代劇は好評を得て1年間全52話続きました。
この作品から京都テレビプロは順調に滑り出します。
②京都テレビプロ制作「栗塚旭主演シリーズ」
1965年7月、日曜21時30分から日本教育テレビ(NET)系にて、企画NET上月信二と京都テレビプロ田村嘉、脚本結束、監督河野、佐々木、高見による司馬遼太郎原作『新選組血風録』(1965/7/11~1966/1/2 全26話)が始まりました。
京都にある劇団くるみ座出身の若手俳優栗塚旭が主演土方歳三役に抜擢され、沖田総司を演じた島田順司、斉藤一役左右田一平とともに人気を集めました。
その後、栗塚はNET系金曜20時→火曜20時『われら九人の戦鬼』(1966/1/7~7/5 全26話)、NET系月曜20時『俺は用心棒』(1967/4/3~9/25 全26話)、以後同枠にて『帰って来た用心棒』(1968/7/29~1969/3/31 全36話)、『用心棒シリーズ 俺は用心棒』(1969/4/7~9/29 全26話)、『天を斬る』(1969/10/6~1970/3/30 全26話)まで立て続けに主演します。
そして1970年、再び土方役栗塚主演で司馬遼太郎原作『燃えよ剣』(1970/4/1~9/23 全26話)がNET水曜21時枠にて放映され大ヒットしました。この作品では『新選組血風録』の沖田役島田、近藤勇役舟橋元が同役で出演しています。プロデューサーはNETの小沢英輔と京都テレビプロ田村嘉、脚本は結束信二、監督は河野寿一、松尾正武、佐々木康が担当しました。
③京都テレビプロ制作「近衛十四郎 素浪人シリーズ」
1965年10月からNET火曜8時枠にて放映された、ベテラン近衛十四郎主演の南條範夫原作『素浪人月影兵庫』(1965/10/19~1968/12/28 全130話)も焼津の半次役品川隆二とのコンビが人気を呼び最高視聴率35.7%を獲得するなど大ヒットしました。
プロデューサーはNETの上月信二、吉津正、服部尚雄、吉川義一、京都テレビプロの田辺嘉昭と高田正雄、宮川輝水、脚本は森田新、松村正温、結束信二、小滝光郎、大野大、監督は小野登、佐々木康、荒井岱志、林伸憲、長谷川安人が担当しています。
シリーズ終了後、続けて近衛主演のオリジナル作『素浪人花山大吉』(1969/1/4~1970/12/26 全104話)も大ヒットしました。
プロデューサーはNETの吉川義一、広渡三夏、小沢英輔、京都テレビプロの宮川輝水、脚本は森田新、松村正温、監督は小野登、荒井岱志、長谷川安人、井沢雅彦、佐々木康、松尾正武が担当しています。
しかし近衛の体調悪化によるドクターストップで全104話で人気が高いまま番組が終了しました。
入院休養した2年後の1973年、NET木曜8時『素浪人天下太平』(1973/4/5~9/27 全26話)で復帰するも体調不良もあり、次男目黒祐樹を相方とした同枠での次作『いただき勘兵衛旅を行く』(197310/4~1974/3/21 全24話)にて近衛の「素浪人シリーズ」は終わります。
④京都テレビプロ制作大川橋蔵主演の長寿番組『銭形平次』
1966年5月、フジテレビ系水曜20時から大川橋蔵主演の野村胡堂原作『銭形平次』(1966/5/4~1984/4/4 全888話)がスタートしました。
企画はフジテレビ高橋久仁男、水上輝生、脚本は野上龍雄、下飯坂菊馬、𠮷田哲郎、飛鳥ひろし、松村正温、森田新、勝目貴久他、監督は佐々木康、小野登、長谷川安人、田坂勝彦などが担当します。
水曜夜8時から始まる1時間枠のドラマは、初回から人気を集め、視聴率20%を超える大ヒット、好スタートを切りました。
翌年9月には最高視聴率35.5%に達し、常時20%を超える人気シリーズとなります。
1年の契約が毎年更新され、大川橋蔵主演『銭形平次』は18年弱、888回まで回を重ねました。
1984年4月に番組が終了した際には、一人のスターによる長寿番組としてギネス登録されます。
⑤京都テレビプロ制作子供向け特撮時代劇『仮面の忍者赤影』
1967年4月から大阪の関西テレビ(KTV)との製作で始まった横山光輝原作の特撮時代劇『仮面の忍者赤影』(1967/4/5~1968/3/27 全52話)も子供たちの間で大きな話題となりました。
プロデューサーは関西テレビ加藤哲夫、東映平山亨、京都テレビプロ高田正雄、脚本は後に『仮面ライダー』で活躍する伊上勝、監督陣は倉田準二、山内鉄也、曽根勇、小野登、古市真也が担当します。
破天荒な敵が次々と現れる『仮面の忍者赤影』は子供たちの心をつかんで大ヒット。全国で長きにわたり何度もリピート放送され、広い層で愛されました。
⑥京都撮影所制作女性向け豪華時代劇「大奥シリーズ」
京撮は、『仮面の忍者赤影』の大ヒットで信頼を得た関西テレビの開局10周年記念番組『大奥』(1968/4/6~1969/3/29 全52話)を制作します。この作品では1967年7月公開映画『大奥㊙物語』(中島貞夫監督)のノウハウやキャストを活用しました。
企画はKTV芝田研三、東映岡田茂でプロデューサー、KTV加藤哲夫、東映翁長孝雄と三村敬三、脚本は高岩肇、西沢裕子、高久進、宮川一郎他、監督は倉田準二、中島貞夫、山内鉄也、佐々木康他が担当します。
翌1968年4月から始まった豪華女優陣出演の『大奥』は土曜日夜10時半という遅い時間にかかわらず平均視聴率関西23.1%、関東17.3%と大ヒットしました。
この後も関西テレビとは同枠にて山村聡主演『あゝ忠臣蔵』(1969/4/5~12/27 全39話)、豪華女優陣による『大坂城の女』(1970/1/3~9/26 全39話)、同じく『徳川おんな絵巻』(1970/10/3~1971/9/25 全52話)と続きます。
次番組以降、関西テレビからフジテレビ製作の時代劇に替わりました。
1983年、関西テレビは開局25周年記念番組として再び『大奥』(1983/4/5~1984/3/27 全51話)を京撮で制作し大ヒットします。
企画はKTV巻幡展男、東映翁長孝雄、プロデューサーKTV栢原幹、東映松平乗道、京都テレビプロ宮川輝水、プロデューサー補として東映清水敬三、亀岡正人、上阪久和、脚本は山田隆之、本田英郎、佐藤繁子、迫間健他、監督は倉田準二、原田雄一、大洲齊、村山新治他が担当しました。
その後京撮制作の「大奥シリーズ」は、フジテレビ製作で現在まで
2003年『大奥』(2003/6/3~9/2 全11話最高視聴率16.7%(初回)平均視聴率14.5%+特別編1話+SP1話 )主演菅野美穂
2004年『大奥〜第一章〜』(2004/10/7~12/16 全11話最高視聴率20.3%(最終話)平均視聴率17.6%+SP1話視聴率17.5%)主演松下由樹
2005年『大奥〜華の乱〜』(2005/10/13~12/22 全10話平均視聴率15.6%+SP1話視聴率12.5%)主演内山理名
2006年『大奥スペシャル〜もうひとつの物語〜』(2006/12/29 SP1話視聴率15.2%)主演深田恭子
2016年『大奥』(2016/1/16・22 SP2話一部9.6%、二部9.2%)主演沢尻エリカ
2019年『大奥 最終章』(2019/3/25 SP1話視聴率6.9%)主演木村文乃
2024年『大奥』(2024/1/18~3/28 全11話平均視聴率4.8%)主演小芝風花
とフジテレビ系にて4シリーズ44話+SP7話が放送されます。
2006年には仲間由紀恵主演で映画『大奥』(林徹監督)も公開されました。興行収入22億円。
⑦京都テレビプロ制作NET日曜20時枠時代劇シリーズ『旅がらすくれないお仙』他
1968年4月、NET日曜20時から京都テレビプロ制作で東映テレビ時代劇が始まります。
〇『次郎長三国志』(1968/4/7~9/29 全26話)
プロデューサーはNET塙淳一、東映斉藤頼照、田村嘉、脚本は結束信二、本山大生、加藤泰、監督は河野寿一、松尾正武、林伸憲、荒井岱志、長谷川安人、主演次郎長役中野誠也、お蝶役磯村みどり、石松役山田吾一でした。
〇『旅がらすくれないお仙』(1968/10/6~1969/9/28 全52話)
プロデューサーはNET上月信二、小沢英輔、京都テレビプロ高田正雄、脚本は森田新、加藤泰、結束信二、伊勢野重任、本山大生、今村文人、松村正温、押川國秋、岸生朗、小沢英輔、監督は荒井岱志、河野寿一、佐々木康、林伸憲、長谷川安人、小野登、古市真也が担当します。
この年大塚食品「ボンカレー」のイメージキャラクターで評判の松山容子がお仙役で主演、かみなりお銀役大信田礼子のアクションが話題になりました。
男性二人のバディ物ロードムービー「素浪人シリーズ」と同様のフォーマットの女性二人バディ物お色気ロードムービーは、初回から視聴率20%を超え、1年間52話続き最高視聴率は28%を記録し大ヒットします。
〇『緋剣流れ星お蘭』(1969/10/5~1970/3/29 全26話)
松山容子が離れ、流れ星お蘭役花園ひろみが続いて主演した次番組は引き続きかみなりお銀役で大信田礼子が出演しました。
プロデューサーはNET小沢英輔、京都テレビプロ高田正雄、脚本は今村文人、本山大生、森田新、松村樽木、監督は佐々木康、荒井岱志、長谷川安人、林伸憲が担当します。
この作品は2クール26話で終了し大信田は東撮に移り、東京12チャンネルの人気番組『プレイガール』に出演し人気を集めました。
⑧東映京都制作所(東映太秦映像)制作ナショナル劇場『水戸黄門』
テレビドラマの需要が高まってきた1965年12月、京撮にテレビドラマ制作会社東映京都制作所が設立されました。
1969年8月、広告代理店電通の子会社C.A.L.から東映京都制作所が制作を請け負った、俳優座東野英治郎主演『水戸黄門(第1部)』(1969/8/4~1970/3/9 全32話)が、TBS系月曜20時ナショナル劇場にて放映されます。
松下電器広報課長の逸見稔が企画、宣広社時代『隠密剣士』で大ヒットを飛ばした西村俊一がC.A.Lプロデューサーとして参画。脚本は宮川一郎、窪田篤人、三好伍郎、鈴木則文他、監督は山内鉄也、内出好吉、船床定男、田坂勝彦他が担当しました。
この作品は大ヒットし、ナショナル劇場の顔として長きにわたり放映され、日本のテレビ時代劇を代表するシリーズとなります。
1976年12月には当時の黄門キャストに豪華ゲストを加え映画化もされました。
1969年8月から始まった松下電器(現パナソニックホールディングス)提供の『水戸黄門』は、『ナショナル劇場』として2008年6月終了の第38部まで、『パナソニックドラマシアター』として2008年10月の第39部から2011年12月の第43部最終回スペシャルまで、主要キャストを替えながら続きました。
東映京都制作所(東映太秦映像)制作『水戸黄門』は、スペシャルも含め全1227回(1969/8/4~2011/12/19 全43部1227回)という大長寿シリーズとなります。
最高視聴率第9部最終回(1979年2月5日放映)43.7%、シリーズ最高平均視聴率第10部(1979年8月13日-1980年2月11日放映)37.7%。
歴代黄門役
『ナショナル劇場』
初代 第1部 - 第13部:東野英治郎 1969/8/4 ~1983/4/11
2代 第14部 - 第21部:西村晃 1983/10/31~1992/11/9
3代 第22部 - 第28部:佐野浅夫 1993/5/17 ~2000/3/6
4代 第29部 - 第30部:石坂浩二 2001/4/2 ~2002/7/1
5代 第31部 - 第38部:里見浩太朗 2002/10/14~2008/6/30
『パナソニックドラマシアター』
第39部 - 第43部:里見浩太朗 2008/10/13~2011/12/12
最終回スペシャル:里見浩太朗 2011/12/19
第43部終了後、2015年にTBS系で地上波スペシャル、2017年、2019年とBS-TBSにて武田鉄矢主演シリーズが再開されています。
スペシャル :里見浩太朗 2015//6/29
6代 BS-TBS版 :武田鉄矢 2017/10/4 ~2019/8/11
『新選組血風録』『燃えよ剣』「俺は用心棒」『帰ってきた用心棒』『素浪人月影兵庫』『素浪人花山大吉』『素浪人天下太平』『銭形平次』各第1話・第2話東映時代劇Youtubeにて配信中。