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パート時給の上昇率が縮小~2023年2月の毎月勤労統計調査(速報)

 本日(4/7)、「毎月勤労統計調査」(厚生労働省)の2023年2月の速報が公表されました。日経新聞では、物価上昇の影響を除いた実質賃金の伸び率に引き続き注目していますが、本稿では名目賃金の伸び率に注目したいと思います。実質賃金の伸び率は消費者物価の変化にかなり左右されますし、消費者物価自体が政府の物価対策などの影響を受けるためです。

現金給与総額上昇率は若干高まる

 2月の現金給与総額の伸び率(前年同月比、以下同)はプラス1.1%で、同時に公表された1月の確報値(0.8%)を上回りました。所定内給与(1月:0.9%→2月:1.1%)、所定内給与に時間外手当を加えた定期給与(1月:0.9%→2月:1.2%)もそろって伸び率が高まっています。昨年12月は冬のボーナスによる押し上げがあったため、現金給与総額の伸び率が、所定内給与や定期給与の伸び率よりかなり高めでしたが、2023年1月、2月とも大きな差は出ていません。
 ちなみに、本日公表された「毎月勤労統計調査」では、2022年の冬のボーナス(年末賞与)が前年同期に比べて3.2%増えたことも報告されています。2021年の年末賞与は0.1%増、2022年夏のボーナス(夏季賞与)は2.4%増だったので、伸び率が高まっています。

一般労働者とパート労働者に分けてみると…

 一方、上記の現金給与総額等は就業形態計、一般労働者とパート労働者を合わせたものになっています。パート労働者の比率が上下したり、パート労働者の労働時間が変動することによって、現金給与総額等も変化します。
 ちなみに、「毎月勤労統計調査」の公表資料によると、2023年1月から2月にかけて現金給与総額の上昇率が高まったのは、パート労働者の現金給与総額の上昇率が高まった(1月:1.8%→2月:3.9%)ことが寄与しているようです。
 しかし、パート労働者は労働時間の変動も大きいため、下記のリンクの私のnoteで書かせていただいたように、「時給」で見るのが適切です。

 そこで、パートタイム労働者の時間当たり所定内給与(=所定内給与÷所定内労働時間)と一般労働者の所定内給与の前年同月比の推移を確認すると、パートタイム労働者の時給上昇率が2023年1月のプラス3.2%から2月はプラス1.1%と急縮小していることがわかります。1月までの上昇傾向が緩やかになったのか、4月21日に公表が予定されている2月分確報を待ちたいと思います。

2023年1月の現金給与総額上昇率は速報と確報で変わらず

 下記のnoteで書かせていただいたように、1月の「毎月勤労統計調査」はサンプル(調査対象事業所)の一部入れ替えが行われることで、速報値と確報値で現金給与総額等の上昇率が変わることが珍しくありません。ただし、2023年1月分の現金給与総額(就業形態計)上昇率はプラス0.8%で変わりませんでした。
 ただ、細かくみると、一般労働者の現金給与総額上昇率は速報値のプラス1.3%から確報値のプラス1.4%へわずかながら高まっています。パートタイム労働者の現金給与総額上昇率も速報値のプラス0.8%から確報値のプラス1.8%と高まっています(時間当たりの所定内給与上昇率は3.1%→3.2%なので労働時間の長いパート労働者のサンプルが増えたのかもしれません)。
 にもかかわらず就業形態計の上昇率が変わらないのは、パート労働者比率がサンプル入れ替え後に高まったためです。複雑ですね~。

共通事業所ベースの方が賃金上昇率が高めに

 最後に、共通事業所ベースの現金給与総額(就業形態計)伸び率を確認しましょう。2月はプラス1.9%と1月の確報値のプラス1.1%から高まっています(1月の速報値はプラス1%でした)。冒頭の現金給与総額の伸び率(プラス1.1%)と差が広がってますね。前年にも調査していた事業所に限定した調査結果ではありますが、今後も注目していきたいと思います。

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