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ブルペンの柱・岩崎優に伝えたいこと【5/5 対ジャイアンツ戦○】

14試合登板。防御率0.64。ホールド6。セーブ4。
今日の試合が始まるまでの岩崎優の成績だ。これ以上ないくらいの働きをしてくれている。チームに欠かせない存在だ。

だがファンの印象に残るのはこれまで抑えてくれた試合じゃなくて、1点を失った昨日の試合。8回に登板して1点を追いつかれた。勝ち越しは許さなかったが、タイガースは延長戦で力尽きた。
序盤の1点と終盤の1点は重みが違うし、相手だってなりふり構わずに点を取りに来る。守り切る難易度は同じじゃない。それなのにリリーフは抑えて当たり前のような見方をされる。チームとしては良いことなのだろうけど、岩崎が厳しい場面でのリリーフを重ねるたび、その好投はおなじみの光景になる。そして人は、その当たり前が崩れると必要以上に大きく騒ぎ立てる。……ああ、なんて過酷なポジションなのだろう。

最終回。岩崎がマウンドに上がり、9回の守りが始まる。
ぐぐ~っと沈み込むフォームからストレートが放たれる。先頭の坂本勇人にはすべて直球を投げ、力の無いライトフライに打ち取った。
続く梶谷隆幸は初球を打たせてファーストゴロに仕留めた。捕球した大山悠輔がベースカバーに向かう岩崎を優しく手で制する。大山がベースを踏んで、2アウトになった。

ああ、すんなり2つアウト取れたなあ、と思っていたら、ライトの森下翔太はもう捕球体勢に入っている。チェンジアップでタイミングを外した。この日の岩崎が投げたのは、わずか6球。「打たれた次の日、どうなるかな」なんて考える暇もなく、岩崎が締めて試合は終わった。マウンドで選手のハイタッチが始まって、岩崎は少しだけ笑っていた。

淡々としている。
岩崎のマウンドでの印象だ。中継ぎ投手にありがちな「全力を出して目の前のアウトを取りに行く」みたいな強いガッツは感じない。まるで感情のブレをあえて抑えているようにも見える。先発投手の白星、ここまでつないでくれた中継ぎ陣の思い、チームの勝利。ありとあらゆるものを背負っているはずなのに、まるでそれを感じない。よほどのことでは表情を変えず、打者へ冷たい視線を注いでいる。そんな姿は、相手チームのファンからしたら不気味に映るはず。そして僕らタイガースファンには、そんな岩崎が頼もしく見える。

あまりにも淡々と投げるから、岩崎が0点に抑えることが当たり前になってしまうのかもしれない。けれども少し想像してみてほしい。このパフォーマンスを続けるのにどれだけの鍛錬を積んでいるのか。ありとあらゆる重圧に負けないために、いったいどれほどの準備をしてきているのか。岩崎の「当たり前」の裏には、きっと「当たり前じゃない」ことがたくさんあるはず。
それを続けてくれている岩崎にお礼が言いたい。抑えてくれてありがとう。仲間の思いを背負って戦ってくれてありがとう。ブルペンのみんなを気にかけてくれてありがとう。
いや、「ありがとう」じゃ足らないくらいだ。

岩崎は過去を振り返らないらしい。記者から前のことを聞いても「もう終わったことなんで」と素っ気ない反応が来るそうだ。
そう、岩崎が打たれた試合は、もう終わったのだ。

昨日の試合で失点して「ひょっとしたら今日も行けるかも」と思ったジャイアンツファンもいたかもしれない。
悪いけど、ウチのブルペンの柱はそんな脆くないから。

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