花組『鴛鴦歌合戦 / GRAND MIRAGE!』(2023/8_2回目)


座席:2階1列下手側

銀橋の手前3分の1ぐらいは頭しか見えないけど、その他は肉眼でも表情が少し確認できるくらいには近い。ピットの中までしっかり見れたのは初めてでテンション上がった。指揮者もはっきり。客降りされるとほぼ見えないけど、A席でこれなら本当に十分。音響は正面の方がもちろん良いけどよく響いて聞こえたと思う。照明室から光が当たる様子が線としてよく見えて、スポットライトを感じられたのもよかった。客降りがないなら(ご時世的にまだあまりないけど)コスパ最強席だと思う。

鴛鴦歌合戦

銀橋にスタンバイされてる影すら若干分かるんよな~~最高です。今回は(今回も)柚香光さんに首ったけだし、礼三郎&お春ちゃんが大好きになりました。二度目なのでジェンヌさんごとに。

礼三郎(柚香光様)

前回よりもう少し喋るキャラクターとして演じられてる印象。居るだけで場が引き締まる感じと、目線を全部かっさらっていく感じは変わらず。袂に手を入れる仕草が浪人っぽい。

強がってるお春ちゃんへの「妬いてるね (とんでもエッジボイス)」にぶち抜かれました。無自覚モテ男パターンかと思いきや、自分への好意にはちゃんと気づいてるの、なかなか確信犯で罪。
通り雨と山寺はドラマ感がすごくて雰囲気が好みだった。展開が分かってるから余計に余白をしっかり楽しめた。

ラスト、どこまでもヒーローで主人公だなと思った。足元肌蹴るのも構わずしっかり走って、一旦お春ちゃんを銀橋に連れて行くシーンは完全に少女漫画。立ち回っていくうちに、いろんな人から「先生!」とか「礼三さん!」とか言われて武器もらうの主人公補正で良かった。殿様を追い詰めたときの若干光のない眼よ。そしてみんなが大団円になってる中での煮えきらない顔よ。ここでお春ちゃんが引き止めてないならそのまま行ってたことを考えるとお春ちゃんの説得がぐさっと響くな~。「とかく浮世は生きづらい。日傘買うもの作るもの」に表れる、達観というより諦観が変わっていくの、とてもいいな。

最後、いなせな着物と一番はった声量でのテーマソングは感無量でした。淀川花火の日だったし、今年一番の夏らしさを感じられてとても良かったです。ヨイサヨイサ!!

お春ちゃん(星風まどか様)

今まで観た演目のどんなヒロインより一番好き。素直で愛を与える怖さを知らない人だと思う。父親に対しても。だからといってとても強い訳じゃなくて、そのあたりのバランスがめちゃくちゃ魅力的だった。

何より可愛い。
直情的なところが可愛い。キュートという意味でかわいい。単語の頭と語尾を強くして、処理を荒くしてる感じがする。お富さんとのバチバチバトルがすーっごくバチバチで良かった。「でも、でも...」ってなりつつ、最後に礼三郎へクリティカルな言葉を出せる一途さ。かわいい。かわいいって何回言ってる?自分にはない素直さと愛嬌だったのですごく惹かれた。

2回ともかなり笑いを誘うお芝居だったのは、確実にお春ちゃんというキャラクターのおかげだと思う。いつまでも幸せでいてほしい。

その他の方々

ダイジェストで申し訳ないけど永久輝さん、凄みの方が勝りすぎてて(あと歌が上手すぎて)個人的にクール系の方が好みだな~と思ったり。まあこれは好みの問題。今回も圧倒的声量オバケでした。
聖乃さん、嫌じゃ嫌じゃ〜の勢いがすごすぎて、たぶん一番の客席盛り上がりを作り出してたと思う。コミカルもいけるの?
空丸くんと三吉くんの演技も良かった。所々声量オバケがいて迫力がすごかったです。

最初はけっこう面食らったけど、2回目見てものすごく好きになったな〜。描き方の癖になれた?とにかく、今まで観劇してきて一番好きなヒーロー&ヒロインになりました!感謝。

GRAND MIRAGE!

本当に本当に一瞬だった……!
プログラムも読んで、前回理解しきれなかった部分の意味も分かったので二度三度楽しめた。ジェンヌさんごととかシーンごとに。
(オーケストラピットは下手側からだとギター系しか見えなかった。たぶん上手側から見たら管が見えるんだろうと思う。しっかり歌うところは指揮もステージを見ててすごかった。ジェンヌさんも見えてるのかな?)

柚香光様

表現力の末恐ろしさを存分に感じた。確かに歌唱面では永久輝さん初め声量オバケの方々より……という面もあるかもだけど、トップってそういうことだけじゃないんやろなという感じ。むしろ少し上にひっかける様な歌い方がセクシーを引き出してた気がする。あとは身体の使い方が凄すぎる。しなやかで艶やか。
今回はお化粧までオペラでよく見えたけど、衣装に合わせてか紫系のハイライトをしっかり入れてらした。とても素敵。

フランス軍人

しなやかに舞われる様子が、斜め視点だと奥行きを感じてとても迫力があった。最後、奥と上に藤のようにしなだれる赤い花があって頭を殴られる衝撃。そんな美しい景色あっていいの?宝塚は毎回、自分の中に眠っていた美しさという感性を呼び起こしてくれるから好き。「夢みたいに美しい」と毎回思うのはそういうことだと思う。
血と土と絶望が染み付いた軍服のカーキと、幻想の白い花の淡さ儚さと、そしてその全部に呑まれながらせり下がるの本当になんというか、美しい以上の語彙があるならそれを使いたい。

シボネー

前回あまり理解できてなかったのがここ。シボネーという名曲でスタイルなのね。華やかな雰囲気と男女の駆け引き感がとても良かった。情熱と熱情!という感じ。
最初に永久輝さん聖乃さん。やっぱり永久輝さんはこんな感じで上からクールなのが好きだな~吊り目感のある目元と相まってとても素晴らしい。妖しさがチラチラ見えるのが最高。衣装も金と青、柚香さんは+ピンクで色彩美~!!
今回は2階だったので最初から意味深な奈落が見えてニヤニヤしてしまった。満を持して出てきた柚香さんの存在感よ。ながーく溜めてからの、
「ole…」
「シーボーネ!シーボーネ」でぐっっと雰囲気作るのとてもいいな。柚香さんのロングロングお御足に揺れるフリルありがとう。だんだん早くなるテンポに、だーっと駆けて通る様がエナジェティック(パイナップルオンピッツァ的な狂乱を思い出すとか思わなかったり)。娘役さんの華やかなフリルも良かったです。
柚香さんが銀橋から一旦はけるとき、前列の方をじっっっっくり見ながら移動されてたのすごい。本当にすごい。そして壁によって眺めてる立ち姿の余裕さたるや。洋画の主人公?

シティ

はい。前回の反省を活かして、柚香さんロックオンオペラマンでした。いやもう本当にすごい。正直本領発揮だと思うし、ジェンヌさんの中で一番上手くこのコンセプトを消化されてる気がする。終始気だるけ~苦しそうな色気を挑え、ダイナミックに踊る様がアイドゥルでは??という感じ。セルフチッケム不可避。

黄色のレザージャケットが似合う似合う。愛を追い求める男というコンセプトなだけに、ニヒルさの裏に隠せない寂しさなどを携えてらっしゃるのがすごい。一旦後ろに下がるとき、前髪をこう、チソンちゃんがブラブラでやるときみたいにわしゃわしゃっとされて(この例え分かる方がいたら握手したい)、その後目線を流してロの端で笑ったの、今考えても幻影だと思う。あの瞬間時が止まった。間違いなく私の宝塚史に刻み込まれた瞬間でした。もう本当にありがとうございます致死量です。
ヨドルがよくある1列になって首かしげるみたいなやつも、ギリギリの中性感があってもはや倒錯的。そして指の背を使った投げきっっっす→背を向けて舞台装置をしっかり持って横顔からはけていく……。やっぱり幻覚なんか?ここだけでお金払う価値あります。永久輝さんたち他の男役さんと、時折目線を交わすのがまたよかったです。放心。

ボレロ

集中しないとずれる、と永久輝さんのインタビューを見て、確かにめちゃくちゃカウントに神経使いそうだと思った。最初に観た星組さんのボレ口もそうだったけど、クラシカルな文脈と華やかさが、本来の「舞」に戻ってる感じがしてとても素晴らしいと思う。個人的にここの永久輝さんが一番好き。アイラインの黒さと赤のコントラストが映える。聖乃さんとぐるぐる回るところ、互いに目線を一切逸らさないの良かったな~。
そしてトップコンビ、周りが赤ばっかりだから黒が逆に一番目立つという素晴らしい構図。ここ、柚香さんが星風さんを見下ろす構図の伏し目すんごかった。ナイフのような鋭さが最初にあって、帝王という言葉以外のしっくりこない。振り向いた星風さんの芯を持った、でも儚さも備えた表情もまた素晴らしい。二人だけの世界がちゃんとあって、それを見せてくれるのありがとうの気持ち。星風さんを片手で支えて反らせる振り、王者感が凄い。絵画か?ラインストーンが流れるように煌めいて、照明が落ちても残滓が漂っていたのが美しい。後に続くデュエダンの白い淡さ、柔らかさとのギャップが凄まじかったです。このトップコンビさんの「お互いにお互いしか居ない」感がとても良い。良いです。

フィナーレ

紫とピンクの光で網膜が焼かれる。でっっかい羽を背負ったままブォン!と回るのがすごかったな~。ずーっとミラージュでした。2回見られて幸せだし、柚香光さんの魅力を存分に堪能できました。ありがとうございました!!

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