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ぬか喜びストライカー序説 その定義と特徴について

みなさん、こんにちは。Jリーグも開幕しましたが、贔屓のチームはどのような地獄を味わっているでしょうか。ジェフユナイテッド千葉について言えるとすれば、「思うてたんと違う!」です。毎年です。

さて、全く開幕と関係ないのですが、みなさんは「世界ぬか喜びストライカー研究学会」をご存じでしょうか? いえ、知らなくても当然です、今作りましたので。ともかく、この学会は「ぬか喜びストライカー」の情報を集め、その生態について研究を行い、世界に向けて発表するというものです。

今回の当学会の初回発表においては、ぬか喜びストライカーとは何か、ということをみなさんと考えていきたいと思っています。


ぬか喜びストライカーとは何か?

ぬか喜びストライカーについては、Twitter上では主に私が連呼しているのですが、いかんせんまだ一般市民の間に浸透しているとは言い難いのが実情と言えましょう。

その概念を明らかにするためには、まず「ぬか喜び」という言葉から始めた方がよいのかもしれません。

(「糠に釘」と同類の言葉) 糠に釘を打ってもすぐに抜けてしまうことに気づかず、一時的に大喜びすることをいう。また、一説に「雀(すずめ)の糠(ぬか)喜び」を略した句ともいわれ、雀が食べられない粃(しいな)であることも知らず、実が入っている籾(もみ)だと思って、あとでがっかりすることにたとえるともいう。

ぬか喜びとは、つまり「いったん喜んだのに、期待した成果を得ることができず、喜びが台無しになること」と言えるかと思います。これをゴールという概念で体現しているのが「ぬか喜びストライカー」ということになります。

まだちょっとわかりにくいという方は、次のような情景を想像してください。応援しているチームの選手がオフサイドぎりぎりでディフェンスラインの裏に抜け出し、どフリーでキーパーと1対1になります。これは決まったと全員立ち上がったところで、鋭いシュートが枠外に思いっきり吹っ飛んでいき、我々はずっこけます。

あるいは、右サイドからクロスが上がります。中央で一人潰れて、ファーサイドで待っていた逆サイドの選手がノーマークで胸トラップをします。綺麗にトラップされたボールは足元にピタリと落とされ、後は足を振りぬくだけ。これは決まったと全員立ち上がったところで、シュートはキーパー正面に力なく飛んでいき、なんなくキャッチされて、我々は頭を抱えます。

以上のように、絶好のチャンスを得ながら、肝心なところで決めきれない回数が多いストライカー、それがぬか喜びストライカーです。原則を分解すると、1.フリーでボールを持つ、2.シュートを外す、3.観客が頭を抱える、という三つの要素であり、これを「ぬか喜びストライカーの三要件」と当学会では呼んでいます。

現代ぬか喜びストライカー界の巨匠であるティモ・ヴェルナー先生のプレーを見れば、その概念と呼ばれるものがおぼろげながらもわかってくるのではないでしょうか。

ぬか喜びストライカーの特徴

イメージが掴めたところで、具体的なぬか喜びストライカーの特徴について我々が研究した成果を、みなさんと共有していきたいと思います。その主な特徴は、以下の5つとなります。

1.チャンスに絡む回数が多い

とにかくぬか喜ぶためには、シュートチャンスに絡まなければいけません。どういう形でもいいのでボールを受けて、シュートを放つことができるということが必須となります。しかし、チャンスでボールを受けてもシュートを必ずしも放つことができるわけではありません。シュートを数多く放ってぬか喜びする回数は、チャンスに絡む回数を多くすれば、自然と増えてくるはずです。そのためにも、やはりチャンスに絡む量が多いのが特徴と言えるでしょう。この点において、1試合中ただぶらぶらと歩きながら、5秒だけ仕事してワンタッチで試合を決める「ヒモ系ストライカー」とは正反対の存在と言えます。

2.運動量が多い

ぬか喜びストライカーは多種多様な形でぬか喜ばせてくれるのですが、一般的に運動量豊富な選手が多いことが統計上わかっています。豊富な運動量を生かしてチャンスに絡んだり、相手のディフェンスが薄いスペースに飛び込んでいくことができるので、必然的にシュートまで辿り着くことが多くなります。しかし、その反面、シュートまでに体力を使い果たしてしまう、フリーになるために後先考えずに動き回りすぎて、ボールを受けた時には全くシュートコースがないという状況に陥ってることも多々見られます。そのため、その後のぬか喜びタイムに繋がりやすいという特徴があります。どっしりと構えて最後の得点シーンだけ顔を出すというザ・ボックスストライカータイプには、あまりぬか喜びストライカーは見当たりません。喜んでいる時間がないからです。

3.シュートが下手

とにかく、得点が決まってしまってはぬか喜びにならないので、大前提としてシュートが下手というのがあります。フリーでいるのにシュートが下手というのも絶望的な気もしますが、フカす、キーパーにぶち当てる、空振りするなど多種多様な下手シュート能力は標準装備してほしいところです。イタリア代表のベラルディのように「とにかくフルスイングで振り抜く」というのも1つの形でありますね。ただ、ここで気をつけたいのは、シュートが下手、というのは、それ以前の準備段階も含まれます。前述のように後先考えずに突っ込んだり、フリーでドリブルしているのにボールの運び先を間違ったりしているので、シュートを撃つ瞬間にはコースを消されていて何をどうやっても入らないという、いわゆる”詰み”の状況に陥っていることもしばしばです。

4.スピードスター or ウイング

後述しますが、やはり裏抜けからフリーになる形が一番ぬか喜び度が大きくなることがわかっています。そのためにもやはり裏抜けマシーンあるいはウイングがカウンターでぶっちぎってシュートに行くスタイルが、ぬか喜びストライカーになる近道と言えます。ただ、注意点としては、ウイングやスピードスターだってもシュートがうますぎてはいけないということです。普通に裏を取って決めたら、ただの点取り屋ですからね。モハメド・サラーとかサイドにいますけど、点とりまくりますから全然だめです。そういう意味ではドリブラー系というのは一つの可能性なのでしょうね。基本的にはシュート下手ですから。

5.外した後のポーズが美しい

これに関しては学会内でも意見が割れていて、「シュートを外すまでがぬか喜び」という狭義ぬか喜び学派と「シュートを外した後まで含めるのがぬか喜び」という広義ぬか喜び学派に別れていて、時折暴力を伴う抗争に発展することもあります。ゴール後の頭を抱えるポーズや落胆の姿が美しければ美しいほどぬか喜びも際立つし、観客の落ち込み具合もと言えるのではないでしょうか。ちなみに私は「シュートを外した後のポーズも含めるべきだし、なんなら試合前のインスタ更新もぬか喜びに含めるべき」という極大広義ぬか喜び右派として主張をしているので、学会を追放されかけています。

ぬか喜びストライカー指数

ここまでは特徴という定性的な評価を語ってきましたが、ここでは具体的なぬか喜びの値=ぬか喜び指数の方程式を考えていきましょう。ぬか喜び指数が高ければ高いほどぬか喜びストライカー力が高いと言えます。そこで、私が提唱するのは以下の式です。

ぬか喜び指数=チャンスになってからシュートに至るまでの時間×シュート失敗回数

シュート失敗回数はもちろん重要な数値ですが、ここで私が重要視したいのはチャンスになってからシュートまでの時間です。この時間が長ければ長いほど、観客のぬか喜び値は等比級数的に高まっていき、その分外れた時の落胆も大きくなるというものです。こちらは以下のグラフで明らかになるかと思います。

チャンスになってからシュートまでの秒数が長ければ長いほど、ぬか喜び指数も高くなっていきます。これは実感としてもかなりわかりやすいかと思います。たとえば、たとえフリーであったとしても、ゴール前の横パスをあっさり枠外に外すのと、ハーフライン付近で完璧なスルーパスで抜け出して一人旅をしていった挙句にキーパーに止めらるのでは、ぬか喜びの具合は桁が違うでしょう。期待の高まりとそれを台無しにするクソシュート、その落差にこそぬか喜びストライカーの神髄があるのです。

もちろん、ここに「ドリブルのスピード感」「シュートフォームのクソさ」「シュート後のポーズ」「絶対にオフサイドじゃないのに外した後に線審を見る」「試合後の言い訳」「なんかシュート外しそうな顔してる」などの多様な要素がここにプラスされていくことは言うまでもありません。しかし、ぬか喜び指数の根本的な部分を決めるのは「ぬか喜び指数=チャンスになってからシュートに至るまでの時間×シュート失敗回数」というぬか喜び方程式であるということだけは、今日覚えて帰ってください。

ここで賢明なみなさんは気づいたかもしれません。他のチャンスで決めていたら、自然とぬか喜び指数は下がってくるのではないか、と。しかし、ぬか喜び指数の算出に、他のチャンスでゴールを決めたかどうかはそれほど重要でないことが、研究の結果明らかとなっています。

こちらを体現しているのが、ぬか喜び界の西の巨匠であるダルウィン・ヌニェス師匠です。ヌニェス師匠は今季プレミアリーグで10ゴールと一定の結果を残しながらも、加入初期の圧倒的なぬか喜びパワーで、今でもその残像は消え去りません。どうですか、このダイナミックさ、このスピード、そしてポニーテール。ぬか喜びの申し子と言っても過言ではないでしょう。

ちなみに、当学会独自の試算によるティモ・ヴェルナー師匠の累積ぬか喜び指数は56万です。

まとめ

ここまでぬか喜びストライカーの定義について当学会の研究成果を発表しました。シュートが決まる回数よりも外れる回数の方が圧倒的に多いというサッカーの特性上、ぬか喜びストライカーが生まれるのは必然と言ってもいいかもしれません。そうして生まれた徒花を我々は愛でているのでふ。

ただ、当学会が言いたいのは、決してぬか喜びストライカーは蔑称ではないということです。その期待値の高まりとその喜びが台無しになるという落差は、あらゆるエンタメが事前評価の奴隷となっている現代において、予測不可能なジェットコースターとして機能する数少ない現象の1つと言えます。その落差を与えてくれるぬか喜びストライカーに感謝こそあれ、それを貶めるものではないということだけは当学会はこれからも主張をしていくつもりであります。

また、ぬか喜びストライカーは恒久的なものではないということも付言しておかなければなりません。一時的な不調によってぬか喜び指数が高まってしまう場合もありますし、好調でぬか喜び指数が低くなることもあります。近年の例では、インテルで猛威を振るうラウタロ・マルティネスが、カタールW杯では大会を代表するぬか喜びストライカーだったことは記憶に新しいところです。また、元日本代表で現在神戸所属の武藤嘉紀も、デビュー当時のFC東京ではかなりのぬか喜びストライカーっぷりを発揮していました。ぬか喜びストライカーはうつろい続けるのです。

かつてはFC東京の戸田光洋、名古屋の岡山哲也、山形時代の中島裕希、千葉の船山貴之など燦然と輝くぬか喜びストライカーを輩出してきたJリーグですが、最近では目立ったぬか喜びストライカーというものを発見できていません。これぞという選手がおりましたら、こっそり教えていただけると助かります。私が注目してるのは、元千葉、鳥栖で現在アビスパ福岡に所属し、圧倒的スピードと運動量でピッチを蹂躙している暴走特急・岩崎悠人です。

また、最近では、大きな大会以外は中々海外リーグの試合を多数見れてないという私個人の事情により、世界のぬか喜びストライカーの情報がアップデートされていません。このままでは研究に支障をきたすため、海外についてもこれこそはというぬか喜びストライカーを発見したら、当学会までお知らせいただければ幸いです。

それでは、今年はEURO2024という大きな大会がありますので、そこで輝かしいぬか喜びストライカーが生まれることを楽しみに待ちましょう。We are NUKAYOROKOBI FAMILY。

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