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我々は地球というアポロ13に乗っている。

アポロ13の話を皆さんはご存知でしょうか。
映画にもなりましたよね。トム・ハンクスが主演しました。
宇宙が好きな私も大好きな映画です。

欧米では不吉な数字とされる
13という番号を背負ったアポロ13は、
宇宙空間でトラブルに見舞われ、月面着陸を諦めて
地球への帰還のために奮闘します。

立花隆さんが書かれた「宇宙からの帰還」という本も、
アポロ13を題材にしたものでしたね。

このお話の中で、とても印象的なエピソードがあります。
それは、メインのクルーとして訓練していた飛行士の一人が
出発直前に風邪をひいたため、本番は別の飛行士と交代するのですが、

アポロ13にトラブルが発生すると、
彼が中心となって、地球上にアポロ13を再現し、
自分がその中にいるように想定して、
アポロ13の中に存在するものだけを使って、
トラブル対処の方法を考えていく、というものです。

宇宙空間の中に孤独に漂う宇宙船の中には、
人手も資材も、限られたものしか存在しません。
部品も、ビニールテープも、地球にはたくさんありますが、
宇宙船の中には限られた量しかありません。

その中にあるものだけで、トラブル対処の方法を考えていく。
そのシーンが見ものなのです。

多くの人は、宇宙の中での有限性を感じ取ったはずですよね。
私もそうです。
けれど、今はわかるのです。地球も実は同じなのだということ。

私たちも、実は宇宙に孤独に浮かぶ「地球」という宇宙船に乗っていて、
そのサイズが、私たちひとりひとりの人間にとっては、
ちょっとサイズが大きめだから普段はあまり気づかないだけで、
我々にできることはすべて、この宇宙船の中にあるものだけで
やりこなすしかないんですね。

これは、誰もが認めるしかない現実です。

なぜアポロ13の話をしたか、というと、
最近、私は熱力学の第一法則と第二法則という
全宇宙を支配する偉大な法則を知るに至り、
生命や地球の儚さと素晴らしさを感じているからなのです。

ちょっと難しく聞こえるかもしれませんが、
とても面白いのでお付き合いください。

熱力学の第一法則は、「エネルギー保存の法則」と言います。
この世に存在するすべてのものは分子の集合体なわけですが、
その分子の総量は不変だということです。

たとえば石油を燃やしてしまうと、石油はなくなってしまいますが、
それは本当はなくなったのではなくて、
CO2とか、そういった別のものに外見上の姿を変えただけで、
すべての分子は変わらずにこの世にあるんです。

そういうことです。

青山学院大学教授の福岡伸一先生の動画をネットで見て、
とっても面白いお話がありました。

昔の人は、食べ物と生き物の関係を、
車とガソリンのようなものだと思っていたらしいのです。
食べたものは体を動かすエネルギーとなって消費されると。

でも、良く考えたら生き物も、食べ物も両方、分子でできている。
では分子レベルでみると、「食べる」とはどういうことなのか。
食べたものはどこへ行ってしまうのかを調べた学者さんがいました。

マウスで実験しました。

すると、こんなことがわかりました。
マウスが食べたものは、マウスの体の隅々に行き渡って、
マウスそのものを構成する要素になっていた。

車で言えば、ガソリンが車自身になるということです。

マウスは食べ物を食べ、それを体に取り込みつつ、
排泄を行うことで、生命を維持しているわけですが、
この現象を分子のレベルで見てみると、
食べ物の分子がマウスの体になり、マウスの体の分子の一部が
排泄物となって体外に出される。

マウスの糞の分子は土に還り、
養分となって草木に姿を変え、次の食べ物となる。

つまり様々な分子が循環していろいろなものに変化しているけれども、
地球上においての分子の総量は同じだ、ということです。

すごくないですか?
我々は地球というアポロ13の中にいて、
その中にある材料が、グルグルまわっているのです。

その分子としての総量は、隕石などによる多少の変化はあっても、
基本的には不変だということなんですね。

この事実から何がわかるのか、というと、
すべてのものは偶然、今、分子が集合してその姿をしているだけで、
無から発生したわけではないということです。

例えばベランダの植木鉢から生えているプチトマトは、
そこで育ったように見えますが、
育ったというよりはむしろ土や水が姿を変えたものであって、
土が姿を変えているぶん、
土の中にあった何かが減っているということです。

それが養分なのでしょうね。

「分子が姿を変えているだけで、その総量は変わらない」

この感覚を、皆が心と頭の中に入れておくべきだと思うのです。
人は精子と卵子が結合し、そこから細胞分裂を繰り返して
人間になっていくわけです。

細胞分裂の様子をみると、まるでむくむくと増殖しているように感じます。
でも、それも何か別の分子が姿を変えることなしに
増えることはありえないのです。

さてここまで理解すると、いま、世の中で言われている
様々ことの見え方が変わってくるはずなんですね。

例えば、今、地球上の人口は78億人だったと思います。
そしてこれが2050年ごろには97億人になると予測されています。

約20億人が増えるとしましょう。
20億人というと、今の中国の人口が14億人らしいので、
それ以上の人間が、この地球上に同時に維持されるということです。

けれど、先ほども言ったように、この地球上にある分子の総量は不変であり、
人間も含めてこの地球上にあるすべてのものは、
地球上にある分子が姿を変えたものなわけですから、
これから増える20億人分の人間の分子は、
今、すでにこの地球上に存在している分子が、人間に姿を変える、
という意味なんですね。

当然、その分だけ、他のものが減るということを意味しています。

今、地球上に生存する動物の数のうち、いちばん多いのが、
人間が食用にするために育てている動物らしいです。
それが自然界の動物の数を圧倒しています。
(すみません、どれくらいの割合だったかは忘れました)

それらの動物もまた、別の分子だったものが姿を変えているものです。
こんな風に考えることで「この世の風景・見え方」が変わります。

我々人類は、分子のレベルで言えばそのへんの石ころと変わらない
地球の構成要素のひとつに過ぎず、
脳が意識を持ち、自我を持ったために、いがみあったり
嫉妬したり、争ったりするわけですが、
実は、私もあなたも、地球という体に生えた体毛のようなもので、
地球自身、地球そのものであり、
ひとつの大きな命の一部だというのが現実なんですね。

これは精神論じゃないですよ。科学的な事実なのです。

この世に存在するすべてのものは、姿が変わるだけで、
増えも減りもしないのです。

ただし、実はここにエントロピー増大の法則という
熱力学の第二法則があって、
それは不可逆性の法則でもあって、
いちどある形に変換されたものは、自然に元に戻ることはない、
という、これまた超重大な法則で、
石油を掘り返してどんどん燃やしても、分子レベルでは
「交換」が起きているだけなものの、二度と石油に戻すことはできないわけで、
つまりエネルギーという形で消費をしてしまうと、
二度とエネルギーを取り出せるものに戻らないということです。

ちょっと熱く語ってしまいましたが、
まぁ、ここはおいておきましょう。

今日の話の中で重要なのは、第一法則の方で、
「何も増えないし、減らない」という宇宙の大原則です。
このルールに刃向かうことは誰にもできません。

しかし、思い出してください。
この世にひとつだけ、無尽蔵に増えることができるものがあります。

そう、「お金」ですね。

お金は、利子という仕組みによって、無尽蔵に増えることが可能です。
これはどうしてか、というと、
お金は「モノ」ではなくて、単なる「概念」だからです。

もちろん、硬貨やお札という、手に取れる現金は
材料が必要なものですから無尽蔵には増やせません。
しかし銀行預金のように数字の上だけで存在している「本当のお金」は、
宇宙の中では空想上の存在なので、いくらあっても構いません。

しかし、お金というものは、
「モノ」や「サービス」と交換されることで意味をなすものです。

お金そのものは空想ですが、現実に存在するモノと結び付けられて
「富」として認識されています。

つまり無尽蔵に増やせるものと、現実世界に物理的に存在するものが
人間の欲望によって結び付けられている、という構造が、
自然界にはありえないスピードでの環境変化を発生させている。

自然が時間の流れの中で勝手に処理できる速度を超えて
環境に変化を加えた場合、それは必ず「環境破壊」となりますね。

今、人類がお金のために必死にやっていることは、
まさにそれなのですね。

お金という、宇宙の法則を無視した空想上の存在が、
現実の物理社会と結びついている以上、
この人間社会は、必然的に、自然の速度によって崩壊するよりも、
ずっと早いスピードで崩壊していく、ということが「確実」なのです。

だって、私たちは大宇宙に孤独に浮かぶ
地球というアポロ13の上で生きているのですから。


トラブルを抱えたアポロ13の中で、
お金はどれほど意味があったでしょうかね。

きっと、まったくなかったのではないでしょうか。
我々、人類は、お金の本質そのものについて、
考え直すべきときが来ています。

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