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積もる話もあるだろう

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眞木高倉のエッセイ集。毎週日曜日更新。
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記事一覧

【エッセイ】等身大で生きていく

【エッセイ】等身大で生きていく

 ユニクロでTシャツを買った。無地のオーバーサイズTシャツだ。

 高倉のクローゼットには無地のTシャツが無かった。決まって変な柄が入っていたり、文字が入っていたり、イラストが入っていたりする。高倉はこういう派手で変なシャツのことも大好きだが、最近ちょっと、柄物を身に着けるに抵抗を覚えることが増えた。
 柄物は好きだ。身に着けるとテンションが上がるし、誰とも被らないアイテムは高倉を無敵の気分にして

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【エッセイ】墓に私はいないけど

【エッセイ】墓に私はいないけど

 「田園に死す」「書を捨てよ町に出よう」「天井桟敷」などで有名な寺山修司先生は、絶筆「墓場まで何マイル?」でこのように書いている。私の墓は私の言葉。それは、なんと理想的な弔われ方だろうか。

 眞木高倉は常に世界がほんのり嫌いで、ずっとぼんやりした希死念慮を抱えているので、たまに、死んだあと自分の体をどうされたいかを考えることもあります。ここは日本なので、一般的には火葬されることになるのでしょうが

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【報告】継続性と定期性

【報告】継続性と定期性

 コンテンツに必要なのは「継続性」と「定期性」なのだと、近所のおじさんが言っていました。継続性とは、決まった周期で継続して更新されること。定期性とは、内容に周期を持たせること。視聴者の、読者の、生活リズムの一部になるには、それらを備えるのが一番手っ取り早いのだそうです。確かに、高倉が定期的にチェックしているコンテンツも、発信される内容が周期で分かりやすく、何曜日の何時ごろに更新される、が確定してい

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【エッセイ】尻から宇宙を生まない人生

【エッセイ】尻から宇宙を生まない人生

 吉行淳之介著「私の文学放浪」の一節と、それににかかるツイート群を見かけた。

 先に申し上げておくと、高倉はこの本を通読しておらず、この本の見開き一ページの写真を見ただけだ。そして文脈は、これも見開き一ページからしか推察ができないが、吉行淳之介先生その人の言葉というわけではなく、トマス・マン著「トニオ・クレーゲル」に、確かこういう意味の一節があった筈だ、という文脈だ。調べども調べども見つけられな

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【エッセイ】世界平和は人の顔をしているか

【エッセイ】世界平和は人の顔をしているか

 今日の高倉は、新現場の基礎研修を受けてきました。二日工程で、今日が最終日です。会社の研修というのは往々にして退屈なものですが、今回の研修は実技が多く、普段触れることのできない機械に触らせてもらえるという羽振りの良さもあって、終始おめめキラキラギンギンで修了することができました。たのしかったです。
 基礎研修の受講者は高倉を含めて合計四人でした。開催地は広島でしたが、広島オフィス勤務なのは高倉だけ

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【エッセイ】誰とも出会わない覚悟

【エッセイ】誰とも出会わない覚悟

 人間は二種類に分けることができるらしい。人と関わることでエネルギーを蓄える外交的人間と、一人で過ごすことでエネルギーを蓄える内向的人間。高倉は議論の余地なく後者である。一人の時間が必須であり、できるだけ他人と関わらずに暮らしたい。
 しかし、人間が「人」の「間」に生きるものである以上、人との関わりは避けられない。人と健全に関わり続けることで人間は人間らしい形を保つことができるのではないか、と、所

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【エッセイ】スキップで暮らしていますように

【エッセイ】スキップで暮らしていますように

 病は気から、という言葉がある。気の持ちようが体調を左右するという諺だ。「だから病気なんてのは気のせいだ、甘えだ」と発展させるのはあまりにも時代錯誤だし炎上の火種だが、そう舵を切らなければ頷ける部分もある。

 映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」の冒頭に、打ち捨てられた日本人形が映し出される。いかにも不気味な絵面だ。のちに、その日本人形の持ち主は主人公と同じ電車に乗って苦しそうに咳き込んでいた少女であ

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【エッセイ】微笑を読み上げられるまで

【エッセイ】微笑を読み上げられるまで

 Audible 2ヶ月無料キャンペーン中との報を受けてから、加入すべきか否か悩んでいる。

 これは以前Twitter で聞いた話なのだが、文章を読む時、脳内で声が再生される人とそうでない人がいるらしい。高倉は後者で、活字は活字の形をしたまま脳内で処理され、音声に変換されることはない。そもそも活字(ここでは音声になる前提で書かれていない小説やエッセイを想定する)は活字として読まれるに最適な文体で

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【エッセイ】すべての映画を愛している

【エッセイ】すべての映画を愛している

 この世につまらない映画なんか一本たりとも存在しない。

 というのが高倉の考えで、なので「つまらない映画は最後まで観ずに損切りしろ」などという考えには全く同意しかねる。映画に損切りしていい無駄な時間なんか一瞬たりとも無い。
 そもそも映画を「損切り」という言葉が出るということに違和感がある。損切り、ということは、映画を損得勘定で観ているということだろうか。映画を観て得することってあるか? 人は映

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【エッセイ】カルピスは夏の季語

【エッセイ】カルピスは夏の季語

 季節の変わり目は飲み物の変わり目だ。真っ白かった桜並木が若葉で茂ってゆくように、カフェで頼む珈琲がホットからアイスに移ろい、自動販売機の「あったか~い」が隅へ隅へと追いやられ、冷蔵庫に備蓄されるお茶の量が変わる。毎日家と職場の往復くらいしかやることがない社会人にとって、歳時記に載るような季節感を得ることは難しいが、飲み物は社会人の生活にも密接だ。仕事の合間に飲みたいと思うものが変わると、あぁ、季

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【エッセイ】たった一つの正解を

【エッセイ】たった一つの正解を

 物欲に駆られている。具体的には、服が欲しい。

 高倉はこの春から現場が変わり、インフラ設備の構築、運用保守の仕事をしている。オフィスワークも勿論あるが、構築した機器の納入、故障した機器の交換等、ちょっとした運動を伴う作業が定期的に発生する。つまるところ、軽率にスカートを履けない。
 職場にそうと強いられたわけではないのだが、スカートは履かない方が何かと都合がよさそうだった。保守作業は機器の故障

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【エッセイ】大丈夫だよ、ばあちゃん

【エッセイ】大丈夫だよ、ばあちゃん

 祖母の話をしたい。

 母方の祖母は、昭和の女性像をそのまま具現化したような人だ。美人で優しい、気が利いて、面倒見が良くて、旦那様に献身的。さだまさしの「関白宣言」が可愛く見えるほどの暴君ぶりを発揮していた祖父に、文句の一つも言わず何十年も尽くしてきた。祖父と祖母の関係性の話は、主に母からの又聞きでしかないので全面的に信じているわけではないが、少なくとも祖父が「酒を呑むからつまみをつくれ」と言う

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【エッセイ】〆切ヤバいを超えた先

【エッセイ】〆切ヤバいを超えた先

「国語のテストに「この時の筆者の気持ちを答えなさい」ってやつあるじゃん。執筆中の筆者の気持ちなんて「〆切ヤバい」以外あるわけなくない?」

 以前一緒にご飯を食べに行った知人の台詞だ。どうしてそんな話になったのかは全く覚えていないのだが、公教育の有様に疑問を呈するような話の一環で、そんな文句が飛び出した。
 言わんとすることは分かる。国語のテスト、漢字の読み書き問題や慣用句の穴埋めならまだしも、筆

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【あんスタ】劣等生と問題児

【あんスタ】劣等生と問題児

 今回のあんスタイベントは、ALKALOIDとCrazy:Bの合同イベントですってよ……!!!!

 昨日発表された新曲、「SAKE OF LOVE」を延々と聴いています。というか観ています。なんて、なんて良い曲なんでしょう……。元気いっぱいノリノリな曲なのに、歌詞で、演出で、キャラクターの表情でうっかりしんみりさせてくる。泣けばいいのか笑えばいいのか分からなくて、だばだば泣きながらぐちゃぐちゃに

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