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リアル・マジック

 結婚記念日に、伴侶と浜名湖へ旅行に行った。宿泊したホテルで久しぶりにトランプをした。いろいろやった。ポーカー、七並べ、スピード、ババ抜き・・・まあ、二人なので、盛り上がるっていうより、暇つぶし的な感じだったけど、お互いにスマホみて過ごすよりは、和やかに暇つぶしができたと思う。

 最後に、「神経衰弱」をやろうと言った。いままでだったら、伴侶は「やらない」というのが常だった。記憶力に関しては、若干私の方に分があるので、いつも私が勝つから、いつ頃からか「やらない。」というのが定番だった。今回もそうなるかと思いきや、「やろう」という。
 どうしたんだろう?いつもやらないのに、と思いながら、カードを広げ、ペアを探す。序盤は、まぁ、私のペースだったけど、だんだん、向こうのカードがドンドン合ってくる。それも、記憶力というより、私が伏せたカードと同じ数字を、伴侶が偶然引くっていう感じで、伴侶のペースになっていく。つまり、記憶力より運の差が断然ちがうのだ。あれよ、あれよ、伴侶はカードを合わせて、大負けしてしまった。「神経衰弱」でこんなに負けたのは初めてだった。
 伴侶は大喜びだった。

「ああ!そうか!アレを使ったな!」

 伴侶が隠れて使った技を私は見抜いて、言った。

 伴侶は、時々アルバイトでしている販売の仕事でもその秘技を使う。そうすると、最後に売り上げが倍増するらしい。そういう経験を何回もしている。それを聞いていたから、それを使ったに違いない、とわかった。あの運の良さは異常だった。

 その秘技とは、「ありがとう」だった。

 伴侶は、トランプのカードに向かって、「ありがとう」って一枚一枚に内心ずっと声をかけてプレイをしていたらしい。その成果で、今度はカードが「ありがとう」って、伴侶のもとに集まってきたのだ、という。

 恐るべし、「ありがとう」の力!

 私はそのマジックを翌日使ってみた。遊覧船に乗ったときに、飛んでくるカモメに向かって、やってみた。
 その日私たちが乗った遊覧船は、ガラガラで、私たち以外の客はいない、貸し切り状態だった。カモメは餌を求めて、飛んできたのかもしれないが、そういう発想は、私にはなかった。「餌目当てで飛んできたんじゃない?」とは後日友人に聞いたけど、その時は、そうは思わす、無心に人と遊んで飛んでいるのかと思った。餌は与えなかったけど、カモメさんに「ありがとう」って言い続けた。すると、一羽だったカモメが二羽に、七羽に十羽以上になり、群れをなして、私たちと一緒に飛んで遊んでくれた。
 遊覧船のコースが終わるころには、カモメさんは、なんと!なんと!全員一列の欄干に止まって別れの挨拶までしてくれた。
 「ありがとう」って、最強だっていうことを改めて実感した。
 浜名湖のカモメさんありがとう!

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