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HelveticaとArial:書体の歴史と特徴の比較

「Helvetica」 と「Arial」 、この二つのフォントの違い、素人にはぱっと見ではわからないですよね。
ArialはWindows、macOSともに搭載されているので、普段フォントを意識しない方でも、よく見る形ではないでしょうか?

これらのフォントは、文字のデザインにおいて重要な役割を果たしており、デジタル時代のタイポグラフィにおいても欠かせない存在です。

本記事では、HelveticaとArialの歴史と特徴を比較しながら、その重要性について探ってみましょう!

Helveticaの起源と進化

https://www.fonts.com/font/linotype/helvetica

Helveticaは、スイスのデザイナー、マックス・ミーディンガーによってデザインされた古典的なフォントです。印刷物の生産にまだ活版印刷が使われていた頃の1957年にスイスのHaas Type Foundryのために生み出され、その後「Neue Haas Grotesk(新しいハースのサンセリフ)」と名付けられました。後にスイスの伝統を反映して、「Helvetica(ヘルベチカ)」と改名されました。この変更は、フォントがますます広がりを見せる契機となりました。

サンセリフ(ひげなどの飾り要素がない)書体で、クセがあまり無く、可読性に優れています。macOSにはデフォルトで搭載されているので、普段macを使っている方にとっては馴染みのある書体ではないでしょうか。

現在ではグリッドに則った、規則的で機能的な書体のデザインは当たり前のようになっていますが、その礎を築いたのは、Helveticaといっても過言ではないでしょう。

「迷ったらとりあえずHelvetica」でいいと思いますが、あまりに馴染みがありすぎるのと、個性的ではなく、汎用的で面白みに欠けたりなど、使用を避けるデザイナーも少なくありません。

Arialの台頭とHelveticaとの違い

一方で、Helveticaに対抗するように生まれたのがArialです。

1982年、Monotype Typographyのロビン・ニコラスとパトリシア・サンダースによって、IBMのレーザーゼログラフィックプリンター向けのフォントとしてArialがデザインされました。このデザインは、当時の低解像度技術に適した独自のディテールを備えており、特にIBMレーザープリンターに最適化されていました。そのルーツは、さかのぼること約60年前、1926年に描かれたMonotype Grotesqueという書体に由来しています。

一見とても似ていますが、微細な違いが存在します。例えば、文字の形状やスペーシングなどが異なるため、専門家やデザイナーにとっては独自の特性を持つフォントと言えます。

Arialはブルー、Helveticaはレッドです。

https://ragbag.tumblr.com/post/187708731/arial-helvetica-on-friday-i-hosted-a-screening

HelveticaはArialの何倍もディテールが洗練されています。
上の図のように、Helveticaの「a」は、テール(尾)が緩やかに湾曲し、ボール(楕円の曲線部)が最初にステム(垂直線)につながる部分も同様ですが、Arialにはそれがありません。

また、Helveticaでは、「t」の頂点、「C」や「S」のストロークの末端は完全に水平ですが、Arialではやや傾斜しているのが伺えます。
Helveticaの「G」のステムには、下に小さなスパー(髭)があり、カーブがそこに流れ込んでいるのに対し、Arialの「G」にはどちらもないです。
言い換えれば、Helveticaの方がArialよりも複雑な構造をしています。

これらのディテールの差はあまりに小さいので、各文字を拡大して比較しないと気がつかないですよね。

しかし、こうした些細な違いがHelveticaをArialよりも優れた例として挙げることができるのではないでしょうか。どちらも可読性が高く、機能的には二つのフォントに大差はありませんが、美学的にはHelveticaの方が優れていると言えるでしょう。

マイクロソフトとの提携

Arialの興隆は、マイクロソフトとの提携によってさらなる展開を果たしました。
マイクロソフトはArialをライセンス契約し、ウィンドウズ・オペレーティング・システムに組み込むことで、広く一般のユーザーに提供されるようになりました。この一環で、Arialファミリーはオリジナルのウェイトに加えて、28の異なるウェイトとバージョンが展開されることになります。

Helveticaとの関係

Arialのデザインには、Helveticaに対抗するという明確な目標がありました。Helveticaが洗練されたサンセリフ書体として知られる一方で、Arialは低解像度の環境でも優れた可読性を提供することを意図してデザインされました。この競争が、両フォントの発展に影響を与え、デジタルデザインにおいて重要な位置を築く一助となりました。

ただ、一部、Arialは、Microsoft社がHelveticaの使用料にかかる莫大な金を支払いたくなくて、Helveticaそっくりに作らせたパクりフォントという人もいるようです。

しかし、そもそもMonotype社にArialの製作を依頼したのはIBMであり、Helveticaを真似したというより、Monotype Grotesqueをベースに設計されているので、純粋にパクったわけではないとなさそうです。字幅はHelveticaに寄せたみたいです。

とはいえ、HelveticaとArialの両方使える立場なら、大体はHelveticaで事足りてしまうし、Arialを意図的に使うタイミングがなかなか訪れなさそうですね。


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