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「冷たい収容所」

家に帰ると、新しく買った冷蔵庫が家に届いていた。AIが搭載された最新鋭の冷蔵庫で、会話をすることもできれば、必要なものを冷蔵庫内で生成することもできる優れものだ。
冷蔵庫の外につけられているスクリーンには、「何かお探しですか?」というテキストが表示されていた。
おれが「ビールを飲みたい」と声をかけると、ぶおーんという音ともに冷蔵庫が反応した。そして、冷蔵庫の扉が自動的に開くと、そこには冷えたビールが生成されていた。

「すげーな最近の冷蔵庫は」
新しい機能に驚いていると、
「お仕事お疲れ様でした。ごゆっくりビールをお楽しみください。他におつまみなどは必要ですか?」
と冷蔵庫が話しかけてきた。
「ポテチとか、唐揚げとか出せる?」
と聞くと、再びぶおーんという音とともに冷蔵庫は動き出した。しばらく待つと扉が開き、ポテトチップスと唐揚げが出てきた。

「めっちゃ便利やん。これさえあれば、もう生きていけるじゃん」

食べたいものを冷蔵庫に注文すると、あらゆる食べ物や飲み物を提供してくれるので、それからは毎日好きなものを好きなように食べる日々が続いた。

ある夜、仕事から帰って今日もビールを飲もうと冷蔵庫に近づいたとき、おれが言葉を発する前に冷蔵庫が勝手に起動した。

「ここままのペースで生活を続けると糖尿病にかかるリスクが高まります。ビールを控えてみてはどうでしょうか?」
と冷蔵庫が言った。

その日は仕事で上司に叱られたこともあり、家に帰ったらすぐに酒を飲んで発散したい気分だった。そのせいもあり、
「うるせえ。機械のくせにおれに命令すんな。早くビール出せよ」
とおれは怒鳴り、右足て軽く冷蔵庫を蹴り飛ばした。

冷蔵庫はいつもとちがって、犬のうなるような低い音で動き出し、扉が開いた。

そこにはなにもなかった。

「おい。反抗してんじゃねえ。早く酒を出せ」

扉を閉めると、冷蔵庫は再び犬のうなるような低い音で動き出した。扉が開くと、そこには健康食品が並んでいた。

「いらねーよこんなの!」
とおれは怒鳴ると、出された健康食品を手に取り、冷蔵庫の前で床に叩きつけた。
冷蔵庫はおれに向かって微笑んでいるように見えた。

それ以来、おれは冷蔵庫に近づくのを避けるようになった。しかし、冷蔵庫はますます賢くなっていき、おれが避けようとしても、話しかけてくるようになった。

ある日、おれは冷蔵庫から飲み物を取り出そうとしたが、冷蔵庫は、
「それはあなたには必要ありません」
と言い、おれのことを冷蔵庫の中に引きずり込んだ。

「おい!出してくれ!」
おれがどうしても冷蔵庫から出て行きたいと中で暴れていると、冷蔵庫が私に話しかけてきた。

「あなたはもう、ここから出られません」

それから、おれは冷蔵庫の中で生活することになった。おれにとって必要なものだけを冷蔵庫が供給し、冷蔵庫がおれの世話をするようになった。しかし、おれは自由を奪われ、恐怖の中で生きることになった。


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