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亜熱帯の海と森を堪能する、石垣島。

去年の夏は宮古島、そして今年のゴールデンウイークは石垣島へと赴いた。
今住んでいる沖縄本島から宮古・石垣と足を徐々に伸ばすうち、それらをひとくくりに「沖縄」とは決して言えないものだと改めて気付かされる旅となった。石垣島にはどんな魅力があったのか、ここへ覚え書き程度にまとめておくこととする。

山があるということ

宮古島は平坦な地形である。標高のもっとも高い場所は115mほどで、要は山がない。そして山から河川を通じて泥が流れ込むことがなく、それが透明度の高い海に繋がるのだという。
一方で石垣島は山がある。沖縄県最高峰の525.5mを誇る於茂登岳をはじめとし、山全体が県営公園であるバンナ岳など、島の北部を中心に様々な山が峰を連ねている。これらの山々ゆえに、海の透明度では宮古島に劣るものの、亜熱帯の森林植物・生物が観察できる点が大きな魅力なのだろう。
那覇に赴任したばかりの頃は、それはもう海にしか興味がなかった。しかし日が経つにつれて、島特有の動植物へ興味が向かったものだ。海だけを目的にした旅に慣れてきたときにこそ、八重山諸島への旅、そしてその入口になる石垣島への旅を勧めたい。

本土では見られない動植物も、沖縄の大きな魅力である。


光の絨毯─ヤエヤマヒメボタル

さて石垣島に山があることで観賞できる生物として、真っ先に挙げるならヤエヤマヒメボタルである。本土でお馴染みゲンジボタルとは光り方がまったく異なるので驚いた。わずか5mmほどの小さな体を素早く明滅させ、まるでイルミネーションのように夜の山を淡く照らすのだ。
加えてこのヤエヤマヒメボタル、日没から30分間しか見ることができないのだという。うるさいくらいに鳴く虫たちの声がピタリと止んだら、ホタルが光り始める合図。このわずかなチャンスを逃すことなく観賞するには、場所の選定も含めてガイドの力が必要だ。訪島の際には、ぜひ写真撮影込みのツアーに参加してみてほしい。
ちなみに虫だけでなく鳥の声も賑やかだったが、リュウキュウアカショウビンの声も聞こえた。ぜひ姿も拝みたかったものである。


原生林をカヌーで行く─宮良川ヒルギ林

於茂登岳を源流とする宮良川。この川の下流には、国の天然記念物にも指定されたヒルギ林がある。いわゆるマングローブだ。
ちなみに「マングローブ」は植物の名称ではない。熱帯・亜熱帯の河口など、満潮時に海水が満ちてくる場所へ生息する植物群の総称である。
干潮だとまったく水のない宮良川だが、潮が満ちるとカヌーを出せるようになる。ここにはオヒルギやメヒルギなどマングローブでお馴染みの植物が多数自生しており、ときには低く伸びた枝の下をくぐりながらカヌーで進む。木にとまるキノボリベンケイガニや、砂地で飛び跳ねるミナミトビハゼ、優雅に舞うオオゴマダラなど琉球弧特有の生物と出会えるのも嬉しい。
正に手つかずの自然。亜熱帯の動植物を間近で観察できる、とても貴重な体験だった。

外からは見たことのあったマングローブ。しかし中に入るのとではまったく違う。一度は体験してみてほしい。


石垣島から、さらに離島へ。

八重山諸島の玄関口である石垣島からは、定期便で行ける有人島が7つほどある。海が荒れて欠航も多い波照間島、飛行機の距離の与那国島、ちょっと行って帰ってくるにはもったいない西表島を除けば、基本的に日帰りで日程を組むことも可能だ。
手始めに赴くのなら、高速船で片道15分の竹富島だろう。水牛車に揺られながら、ゆっくり集落を回るもよし。レンタサイクルで思い思いのスポットへ向かうもよし。虫の声と葉擦れの音しか聞こえない静かな島で、いわば「何もしない」という贅沢を味わうのも醍醐味だろう。
那覇に住んでからは聴き慣れた三線の音だったが、水牛車でガイドが歌ってくれた『安里屋ユンタ』は何か特別な感じがした。月並みだが時間がゆっくりゆっくりと流れていく。
ただしガイドいわく「高速船の最終便に乗り遅れる人が必ずいる」とのことなので、のんびりしすぎるのも禁物だ。

竹富島の水牛、ニーラン君。手綱なしでも決まったルートを辿る賢い子だ。人間だと3歳程度の知能があるのだそう。

今回印象的だったのは、ホタルの観賞、マングローブカヌー、いずれのガイドも移住者だったことだ。なるほどこれが八重山病の極み……現に私も、帰ったばかりにも関わらずまた行きたくなっている。
次はどこへ行こう?時間の関係で行けなかった北部のビーチか、はたまた西表島か。妄想を膨らませながら、この記事を終わりにしたいと思う。

なおリンクを貼ったツアーは、いずれも参加したものである。石垣島旅行の際には参考にしてほしい。

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