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わたしがいちばん食べたいのは/『ときどき旅に出るカフェ』

日本の味に馴染んでいると、全く違う文化で育まれてきた外国の料理にびっくりすることがあります。

これでもかってくらい甘いチュロスとホットチョコレートの組み合わせとか、甘い緑茶とか、生クリームなのかすらわからないべっとりとしたケーキとか。

…思い返すと甘いものにばっかりびっくりしているかも。でも、普段日本にいるとなかなか食べられないものを見かけると、嬉しくてついつい頼んでしまいます。一口食べてびっくりしたり、意外とすき!ってなったり。そういう発見が旅の醍醐味でもありますよね。

今回読んだのは、そんな旅ならではの食の楽しみを少しお裾分けしてくれる小説です。

近藤史恵さんの『ときどき旅に出るカフェ』

目次を見てみると、そこに並ぶのは「苺のスープ」「ロシア風チーズケーキ」「おがくずのスイーツ」……ぱっと見ただけではちょっと馴染みのない料理ばかりですよね。

小説の舞台になるカフェでは、旅好きの店主の円(まどか)が旅先で出合ったスイーツを再現したものがメニューとして並んでいるんです。

そこに、訪れる主人公の瑛子。元々出不精で、毎日が平凡と思って生活していたのですが、このカフェを偶然見つけて通うようになります。

日常で起きる小さな事件を世界のスイーツとカフェのおかげで解明したり、心が癒されたり…といった物語。

初めてカフェに訪れた瑛子に、円が出したのはオーストリアのアルムドゥドラー。ハーブの入ったレモネードだそう。

椅子だけがふわりと浮かび上がったような気持ちになる。空飛ぶ絨毯のように椅子だけが飛んで旅に出る。
帰ってきた円に言う。
「なんか旅に出てるみたい」

もしかしたら一生行くことのないかもしれない国の飲み物を飲んで、その場所に思いを馳せることができるなんてちょっと素敵。

レシピ…とまではいかないけれど、この物語のなかにはあちらこちらで料理の名前と簡単な紹介が文中に盛り込まれているので、気になった料理はメモして、検索してみるのもこの物語の楽しみ方のひとつかもしれません。

わたしがいちばん食べてみたいのはハンガリーのケーキ「ドボシュトルタ」かなあ。バタークリームと固めに焼いたスポンジ生地をキャラメリゼしたケーキなんだそう。

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こんなカフェあったらいいなあってカフェが出てくる物語を読むたびに思うのだけど、今までいちばん「あったらいいのに」って思っちゃいました。

旅に行かなくても、行った気分になれそうな一冊。

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読書感想文

もっともっと新しい世界を知るために本を買いたいなあと思ってます。