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ちいさな気まぐれ

リセット癖があるわたしは、少し環境が変わると思いつく限りあれやこれやと消したり場所を変えたりと忙しなくなってしまうのだけど、ここだけは消さずに置いておいた。 それは単純にこの場所のことを忘れてしまっていたこともあるけど、ずいぶん時間が経って思い出して開いたときに、消してしまうのは惜しいかもとわたしにしては本当に本当に珍しく思ったのだった。 物理的なものも含めて、これだけの数のものを一つの場所に置いておいたことが人生でたぶんない。 それなりに年を重ねてきたくせに未だにそう

    • 7月に読みたいわたしの本棚

      夏だ〜〜〜。6月からとっくに暑かったし、9月になってもずっと暑いのに、いつまで経っても「夏」のイメージは7月と8月にしか持てないのはきっとわたしだけじゃないはず。 やっぱり夏休みがあったり、カレンダーのイラストとかのイメージだったりするんでしょうか。刷り込みの力ってすごいなあと思いつつ、夏だから花火しちゃおう、浴衣着ちゃおうって季節にかこつけて遊ぶのがとってもすきです。 概念としての”夏”はとってもすきなんです。 涼しい風がふわっと入ってくる束の間の朝を過ごすのも、じわ

      • 好奇心を後押ししてくれる場所

        子どもの足で、家から歩いて10分。 初めて父に連れて行ってもらってから、毎週のように通った。子ども向けが1階、一般書と専門書が2階。入ってすぐの受付で「じゃあね」と手を振り、棚へと走る。 図書館はわたしの「好奇心」がぜんぶ詰まっている場所だった。 インターネットなんて言葉も知らなかった子どものころ、わたしの「なんで?」にいちばん丁寧に答えてくれたのは本だった。親には、わからないことはまず自分で調べてごらんと言われていたので、メモ帳に「気になることリスト」を作った。 「

        • 6月に読みたい、わたしの本棚

          6月に入って30度近い日が続いていますね。暑さにめっぽう弱いわたしはすでに瀕死の状態なのですが、本格的な夏が来る前に「梅雨がある」と思うと、まだほんの少しだけ生き残れそうな気がしています。 気圧の変化にやられがちではあるのですが、雨の気配だったりとか、音とか、匂いとか。とてもすきです。特にすきなのは雨の日にお散歩すること。傘のなかの閉じられた世界で、雨音だけを聞きながらぼーーっと歩いてると、あたまのなかがいろいろと捗る気がするのです。 毎年、6月に入ると新海誠監督の『言の

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        記事

          「本を読む」という行為/『という、はなし』

          電車やカフェで目の前に座っている人が本を読んでいると不思議な感覚になるときがあります。 目の前に座っているその人は、わたしにとっては全く知らない人。 どんな性格でどんな人生で、何がすきで何がきらいで。なにひとつわからないということは、わたしがいま手に持っている、本のなかの登場人物よりも知らないのです。本のなかの人たちよりも、もっともっと遠い人。なのに、そんな人がまた本を読んでいるなんて…と考えるとぐるんとしてきます。 でもそれをさらに俯瞰して見ていたとしたら、わたしもそ

          「本を読む」という行為/『という、はなし』

          知らない世界で笑っていてほしい/『夜に啼く鳥は』

          人がこうなのかもしれないと願ったり、信じたりすることで生まれる不思議なお話がだいすきです。 だから都市伝説とか、妖怪とか、超常現象とか、ファンタジーとか、すごく気になってしまうタイプで。わたしが把握できていないことなんて世の中にはたくさんたくさんあるのだから、何が起きたって別にいいんじゃないかなって思うのです。 いろんなことをフラットに楽しみたいな〜という気持ちがいちばん強いのかもしれません。否定しちゃうよりも、せっかくだからそのまま想像を膨らませたほうが楽しそう!ですよ

          知らない世界で笑っていてほしい/『夜に啼く鳥は』

          いつかきっと思い出す。/『月の砂漠をさばさばと』

          子どものとき「お母さん」は「お母さん」という存在だと思っていたけど、ひとりの人間なんだよなあと今となっては(当たり前ながら)思います。 わたしが子どものとき、母が専業主婦でいつでもおうちにいてくれたし、いつでも話し相手になってくれていました。 ただし、それは夜の22時までのこと。 母は特別なことがない限り「22時になったら営業終了!」と宣言して、さっさと寝る準備をしてお布団に潜ります。それ以降のお願いごとはメモに書いてテーブルの上に置いておく。寝てしまうので話しかけるこ

          いつかきっと思い出す。/『月の砂漠をさばさばと』

          とびきりの友だち/『デトロイト美術館の奇跡』

          全く違う時代を生きた、全く知らない人の作品なのにまるで自分のために存在しているような気がする…って、おこがましいけどそんな風に思ってしまう作品との出合いがこれまでいくつかあったような気がします。 そんな作品との出合いが、いまの自分の少なからずの支えになっていると思うことも。 そういうこと、きっと誰にでもあるって思っているけど、でももしかしたらそんな図々しいことを考えているのはわたしだけかもしれない。そう思って、ひっそりと胸の内におさめていました。 でも、この物語を読んで

          とびきりの友だち/『デトロイト美術館の奇跡』

          世界に合った料理を/『ご飯の島の美味しい話』

          映画のなかに出てくるごはんに興味を持ったのは『かもめ食堂』が初めてだったと思います。 フィンランドを舞台に、日本食の食堂を切り盛りする女性が描かれているこの映画を初めて観たときのことは今でも覚えています。 多分、高校生くらいだったと思うのですが、なんてことない休日の昼下り。父と話しながら、適当にチャンネルをザッピングしていたとき、たまたま放映していたこの映画が流れていて。なんとなく気になって、なんとなくそのまま最後まで観てしまったのです。 観終わったあと「こんなになんで

          世界に合った料理を/『ご飯の島の美味しい話』

          わたしがいちばん食べたいのは/『ときどき旅に出るカフェ』

          日本の味に馴染んでいると、全く違う文化で育まれてきた外国の料理にびっくりすることがあります。 これでもかってくらい甘いチュロスとホットチョコレートの組み合わせとか、甘い緑茶とか、生クリームなのかすらわからないべっとりとしたケーキとか。 …思い返すと甘いものにばっかりびっくりしているかも。でも、普段日本にいるとなかなか食べられないものを見かけると、嬉しくてついつい頼んでしまいます。一口食べてびっくりしたり、意外とすき!ってなったり。そういう発見が旅の醍醐味でもありますよね。

          わたしがいちばん食べたいのは/『ときどき旅に出るカフェ』

          いつでも「そもそも」が知りたい/『京都で考えた』

          本をぱたりと閉じたあと、ストーリーを思い返してみたり、印象に残ったシーンについて考えてみたり、どうしてそれが印象に残ったのかを考えてみたりする時間がすきです。 まだ半分くらい本の世界に浸っているからか、夢うつつのような気持ち良さがあるのかな。あえてぼーっとしながら、過ごすことがすきで。 毎日のなかで、すぐいろいろなことが気になってしまうし、すぐに調べられてしまうこと。とても便利だけど、他のことがあまり気にならなくなる「ぼーっとする時間」もわたしにとってとてもとても大切。

          いつでも「そもそも」が知りたい/『京都で考えた』

          ひとさじぶんのしあわせ/『365日のスプーン』

          さかずきに 金色の菊の花をうかべて、 ゆうぐれの月を見ながら お酒を飲む。 さかずきにも、うつる月。 月入りの菊酒。 たまたま、ネットで見かけたこの詩にどうしても心惹かれてしまって作者と本の題名を調べて急いで買った、一目惚れ本です。 おーなり由子さんの『365日のスプーン』。 365日ぶん、スプーンひとさじぶんの幸せになるような文章が書いてある本です。わたしが惹かれたこの一編が書いてあったのは9月9日。菊の節句に当たる日。 どの文章のとてもやわらかくて、読むというよ

          ひとさじぶんのしあわせ/『365日のスプーン』

          なにもかも、夢であるように/『薬屋のタバサ』

          なにもかも、夢であるように思えます。 どうしても、どうしても 文中に出てくる、タバサの亡くなった母が書いたいたずら書きが、この小説のすべてを物語っているような気がします。 真っ青な表紙がきれい、と思って手に取った、東直子さんの『薬屋のタバサ』。 持っている全てを捨てて、家を飛び出し、気がついたら知らない町の古びた薬屋さんにたどり着いた由美は、店主のタバサに頼んで住み込みで雇ってもらうようにお願いします。 全くの見ず知らずの由美に薬局の手伝いと家事全般をやってくれるなら

          なにもかも、夢であるように/『薬屋のタバサ』

          5月に読みたい、わたしの本棚。

          もう5月だなんて。びっくりしちゃいますね。 4月は誕生日があることもあって、けっこう自分を見直したりこれからのことを考えたりと内に入ることがここ数年多かったのですが、そんな隙も許されないくらい個人的にとても「え、しんどくない?」って思うことが盛り沢山でした。 あまりにもあまりにも多かったし、大きかったので、落ち込みすぎて一周回っていい感じに開き直ってしまいました。今はとっても元気です。 来月これを書いているときはどうなっているのかまだちょっとわからないけど、とりあえず今

          5月に読みたい、わたしの本棚。

          あなたのための一冊。米澤穂信『儚い羊たちの祝宴』

          「あなたのための一冊。」 最近、お話をしたその人にぴったり合う一冊を一緒に探してみることを始めてみました。 今日はお話したのは、会うたびにお互いの読んだ本の話をよくするお友達。その子自身もよく本を読むし、本屋さんに一緒に行くこともあるからなんとなくどんな本がすきなのかは把握できている(はず) お互いに書くことを仕事にしていることもあるので、それなら一冊ずつ選んでそれについて書いてみようよ、という話になりました。 今回の条件は一つだけ。 ・わたしが読んでほしいと思う本

          あなたのための一冊。米澤穂信『儚い羊たちの祝宴』

          4月に読みたい、わたしの本棚。

          気がついたらもう月半ばを越えようとしている。 …けど、今月も書いておきますね。4月に読みたい本。だってまだ半月あるし、読もうと思えば読めるはず。 本棚を見直しながら「どれが今の気分かなー」って選んでたら、わくわくしちゃいました。わたしは自分の本棚のことがとてもすき。 『それからはスープのことばかり考えて暮らした』吉田篤弘とある路面電車が走る町に引っ越してきた青年が主人公。 彼は商店街のはずれにあるサンドイッチ屋さんで働きながら、恋をしています。それは映画館でしか会えな

          4月に読みたい、わたしの本棚。