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【映画は映画館で。①】「aftersun/アフターサン」/ゆずの編

皆さん、こんにちは!
東京国際映画祭 学生応援団です。

今回の記事は今期1発目の定期連載記事です!
全9回に渡ってお届けするテーマは「最近、メンバーが映画館で鑑賞した作品」

「映画は映画館で。」
と題し、映画館へ足を運ぶことの楽しさや魅力と、それぞれの作品の情報や見どころを、メンバーそれぞれの個性がたっぷりと詰まった記事を通して、皆様に伝えられれば幸いです!!

トップバッターは13期のゆずのちゃん!今回の定期連載の企画者でもあります✨
是非最後までお読みください!!



はじめに

先月、映画「aftersun/アフターサン」を観ました!
本編では泣いていなかった同じ列の女性が、エンドロールで堰を切ったようにひとり号泣していたのが印象的でした。(私も爆裂に泣いていましたが)

ドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクを果たしたポール・メスカルを父親役、800人ものオーディションを勝ち抜いたフランキー・コリオを娘役に迎えた、シャーロット・ウェルズ監督の長編デビュー作。
優れたインディーズ映画を世に送り出してきたA24による製作、ポール・メスカルは本作でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされるなど、大注目の作品です。

劇場は「ヒューマントラストシネマ渋谷」で鑑賞。

あらすじ

スコットランドに住む11歳の少女ソフィーは、離れて暮らす父カラムとトルコのリゾート地で夏休みを過ごす。20年後、父親と同じ年齢になったソフィーは、miniDVカメラの映像とともに、父と過ごした夏休みの思い出を振り返る。

館内には様々な作品の切り抜き記事紹介が!

作品を鑑賞して

正直なところ、ただ父親役のポール・メスカルを大画面で観たかっただけなのですが、彼の肩書きやその見た目なんてどうでもよくなるくらい良い映画でした...

映画の冒頭、ホテルの部屋に着くと、娘が寝るのを待ってタバコを吸い、上機嫌に踊る父。この2人の長回しがすごくよかった。長過ぎると言われるかもしれないけど、眠る子供と見守る父、そして家ではなくホテルの一室に一緒にいる、その状況の空気感が全て伝わってきた。懐かしいようにも感じた。

全てのシーンが印象的だった。一つ一つのシーン、全てに意味がある。それが自然とわかる。意味があるのに、それがいやらしくない、わざとらしくない。粗いビデオカメラの映像や、鏡越しの表情、ポロライドの記念写真、2人を隔てるホテルの壁とか。多くを語らずに多くを伝えている。

そして、登場人物の気持ちが痛いくらいに感じられた。父の態度をみて巨大化していく孤独感とか、親に気不味いことを尋ねる時の勇気とか、一瞬親が他人に見える気持ちとか、もう数えきれないくらい、ソフィの痛みを私も感じた。

カラムの方にも物凄い表現が詰まっている。ポール・メスカルの演技力にも改めて驚かされた。

実年齢27歳の彼が、30歳で11歳の娘を持つ父親を繊細に演じていた。彼の様子はもうドラマ「ノーマル・ピープル」の人気サッカー部員でもないし、アカデミー賞にノミネートされた新進気鋭の若手俳優でもなかった。複雑なバックグランドや、トラウマ、孤独、そして娘への深い愛をもつ未熟な父親の姿がそこにはあった。
ポール・メスカルはその見た目に反して、完璧ではない感じがする。100%幸せではない感じがする。そういう雰囲気を醸し出すことのできる俳優なんだと思う。カラムがホテルの部屋でひとり涙する場面はすごかった。そしてその時、彼の表情ではなく、背中だけを映した監督にも拍手したい。

父は娘を心から愛していて、一緒にいたいと思っている。でも彼はもうスコットランドには戻ることができないし、父親として家庭に居続けられるほど真っ当で成熟した人間でもないのだろう。親に十分に愛されなかった彼は、ソフィを愛することを恐れているが、同時にソフィを失うことも恐れている。そして「正しい家庭」を築いてあげられなかった自分自身に憤り、ソフィにも罪悪感を抱いている。大人になって子供を持ったソフィは、あのビデオを見返して、父が抱える闇の深さを知り、彼の葛藤を理解する。そして彼がどれほど彼女を愛していたか、改めて知ることになる。
悲しい結末でもない、成長物語でもない、誰かが死んだわけでも、成功したわけでもない。なのに涙が止まらない。たぶん、こんなに大きな愛を、こんなに複雑な苦しさを、スクリーンいっぱいに映し出されたら、人の心は満杯になって涙が溢れ出てしまうのだろう。
全てのシーンが美しかった。色も構図も、完璧だった。

ダンスフロアの輝きやトルコの青空にグサヴィエ・ドラン監督を、プールのシーンにはソフィア・コッポラを、冒頭の長回しには小津安二郎を、感じた。様々な監督の影響を感じることができたし、その上で唯一無二だった。


ここまでお読みいただきありがとうございます!
作品の魅力がビシビシと伝わってくる、熱量の込められた記事でした🔥
作品の魅力を120%感じられるのは映画館の1番の魅力ですね✨✨

「aftersun/アフターサン」は全国の映画館で現在も上映中です!
ぜひスクリーンでご覧ください!

また、本作の監督シャーロット・ウェルズ氏はニューヨーク大学ティッシュ芸術学部の大学院プログラム在学中、修了制作「Blue Christmas」がその年のTIFFでプレミア上映されたことがあり、東京国際映画祭にも縁のある監督なんです!

東京国際映画祭は世界中から商業的観点に強く縛られることなく、優れた作品を選定し上映しています。このような素晴らしい才能を持った監督や作品に出会える絶好のチャンスです!

今年の第36回東京国際映画祭は2023年10月23日(月)〜2023年11月01日(水)の10日間です。ぜひご来場ください!!

企画・執筆/13期田巻
編集/12期相馬


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