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カンヌ国際映画祭開幕記念!「東京国際映画祭とゆかりのあるカンヌ監督」12選

皆さんこんにちは!
東京国際映画祭 学生応援団のわくとです。

いよいよ5月14日(現地時間)から、フランス・カンヌにて世界最大の映画祭「カンヌ国際映画祭」が開幕します!
開催期間中は、超有名監督の新作から期待の新星のデビュー作まで、たくさんの映画が上映されます。上映会場のレッドカーペットでは、世界屈指の映画スターたちが集い、映画祭に彩りを添えます。

日本からは、奥山大史監督、山中瑶子監督といった、日本映画界の将来を担う新世代の若手監督たちがカンヌデビューを果たします。
また、久野遥子監督・山下敦弘監督のアニメ映画の出品や、スタジオジブリが名誉パルム・ドールを受賞するなど、日本アニメが脚光を浴びる年でもあります。日本勢の活躍からも目が離せませんね。

そんな、世界の映画ファンの注目を集めるカンヌ国際映画祭の中でも、目玉の部門といえばやはり、最高賞「パルム・ドール」を競うコンペティション部門でしょう。
黒澤明監督、スティーブン・スピルバーグ監督など、映画史に残る偉人たちも、カンヌのコンペティション部門に選ばれていました。
「カンヌのコンペティション部門に選ばれる」というのは、このような監督たちと肩を並べることを意味しており、超一流の映画監督の仲間入りを果たすことになります。すべての映画人にとって、最も栄誉あることのひとつだといえるでしょう。

今年は『ゴッドファーザー』シリーズのフランシス・フォード・コッポラ監督や、話題作『哀れなるものたち』のヨルゴス・ランティモス監督など、ビッグネームの名前も連なっています。審査委員長は『バービー』のグレタ・ガーウィグ監督が務め、日本からは是枝裕和監督が審査員に選ばれています。

そんなコンペティション部門に選ばれた監督たちの中には、実は東京国際映画祭にゆかりのある人たちが数多く存在するのです。
どんな監督も、最初は新人。世界各国の映画祭に選ばれることからキャリアをスタートさせます。


私が調べたところによると、コンペティション部門に選ばれた22作品の監督の内、12人もの監督が東京国際映画祭にも出品した経験があるのです!

ということで今回は、そんな東京国際映画祭とゆかりのあるカンヌ監督たちを特集していきたいと思います!

ちなみに、今年のカンヌのポスターは黒澤明監督の『八月の狂詩曲』をオマージュしているということで、黒澤明賞を設けている東京国際映画祭とも接点がありますね。


1.ミシェル・アザナヴィシウス(フランス)



ミシェル・アザナヴィシウス監督(右)©2006 TIFF


1人目は、2012年のアカデミー賞作品賞を受賞した『アーティスト』や、『カメラを止めるな!』のリメイク作品『キャメラを止めるな!』(2022)などで知られる、フランスのミシェル・アザナヴィシウス監督です。
世界をまたにかけて活躍しているミシェル監督ですが、初めて映画祭のコンペティション部門に選ばれたのは、第19回東京国際映画祭(2006)のことでした。
その年の東京国際映画祭でスパイコメディ映画『OSS 117 私を愛したカフェオーレ』(※TIFFでは『OSS 117 カイロ、スパイの巣窟』の邦題で上映)という映画を出品したミシェル監督は、なんとその年のグランプリに選ばれたのです!
その後の活躍は前述のとおり。東京国際映画祭をきっかけに、カンヌ、ハリウッドへと羽ばたいていきました。
まさに「東京国際映画祭が見出した原石」と言っても過言ではないでしょう。
今年のカンヌ国際映画祭では初のアニメーション映画『ラ・プリュ・プレシャス・デ・マルシャンディーズ(原題) / La plus precieuse des marchandises』を手がけ、アニメ作品としては久々のコンペ部門入りを果たしました。

『アーティスト』以来のコンペティション部門入りということで、受賞への期待が高まります…!


2.ジャック・オーディアール(フランス)



2人目は、『パリ13区』(2022)、『ディーパンの闘い』(2016)、『ゴールデン・リバー』(2019)などで知られるフランスのジャック・オーディアール監督です。
カンヌ国際映画祭でのパルム・ドール受賞、ベネチア国際映画祭での銀獅子賞受賞など、世界三大映画祭でも数多くの結果を残している監督ですが、実はデビュー作が東京国際映画祭に出品されていました。
第7回東京国際映画祭(1994)では、当時のコンペティション部門に相当するヤングシネマ部門にデビュー作『天使が隣で眠る夜』(※TIFFでは『奴らの死にざまを見ろ!』の邦題で上映)を出品し、映画祭デビューを果たしました。残念ながら賞に絡むことはありませんでしたが、この映画をきっかけに一躍フランスの人気監督の仲間入りを果たし、その後カンヌ・ベネチアでの活躍につながりました。
ミシェル監督同様、東京から世界へと羽ばたいていった一人といえるでしょう。
今年のカンヌ国際映画祭ではゾーイ・サルダナやセレーナ・ゴメスが出演する『エミリア・ペレス(原題) / Emilia Perez』を公開するようです。
個人的には『パリ13区』がとても好みだったので、早く日本で公開されることを願っています!



3.フランシス・フォード・コッポラ(アメリカ)



『ゴッドファーザー』シリーズや『地獄の黙示録』など、映画史に残る伝説を生み出してきたF・F・コッポラ監督も、東京国際映画祭に参加されたことがあります。
2013年の第26回東京国際映画祭では、特別招待作品に選ばれた『ブリングリング』の製作総指揮として、監督を務めた娘のソフィア・コッポラとともに来日を果たし、映画祭の幕開けとなるグリーンカーペット(※現在のレッドカーペット)を親子そろって歩きました。世界屈指の映画監督親子の共演が東京国際映画祭で行われていたとは、なんと貴重な機会だったのでしょうか…!(映画.comより引用)
今年のカンヌでは構想40年をかけた意欲作『メガロポリス』を上映するということで、世界中の映画ファンが、上映の瞬間を待ち望んでいます!



4.ジャ・ジャンクー(中国)


ジャ・ジャンクー監督(右)

ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した
『長江哀歌(エレジー)』(2006)などで知られる、中国映画界を代表する巨匠ジャ・ジャンクー監督ですが、昨年の第36回東京国際映画祭では、小津安二郎監督生誕120周年を記念したシンポジウムにゲスト出演し、日本の黒沢清監督、アメリカのケリー・ライカ―ト監督と共に、小津作品の魅力について語っていただきました。

私もそのシンポジウムに参加させていただいたのですが、ジャ・ジャンク―監督の独自の切り口からの小津評はとても聞きごたえがあり、新たな魅力を発展することができました。
そんなジャ・ジャンクー監督の新作は『コート・バイ・ザ・タイズ(英題) / Caught by the Tides』で、監督の奥様であるジャオ・タオさんを主演に迎えたラブストーリーのようです。
今年のカンヌではアジア勢唯一のコンペ部門入りということで、アジア映画を盛り上げていくためにも、日本から受賞を願っています!
(※昨年の記念シンポジウムの様子はこちらから↓)




5.ジル・ルルーシュ(フランス)



ジル・ルルーシュ監督(左)©2014 TIFF


俳優としての活躍が目立つジル・ルルーシュですが、『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』(2018)で監督を手掛けるなど、映画人として幅広く活躍されています。
そんなジル・ルルーシュが東京国際映画祭に参加したのは2014年のこと。
セドリック・ジメネス監督の『フレンチ・コネクション 史上最強の麻薬戦争』(※TIFFでは『マルセイユ・コネクション』の邦題で上映)がコンペティション部門に出品された際に、出演俳優のひとりとして来日されました。
来日された際には「小さいころから東京にあこがれていて、『ブレードランナー』のような未来の街を頭の中で思い描いていました。来てみたらその通りで、わくわくする興味、関心をかき立てられる街。多くの監督が東京で撮影したいと思う気持ちが理解できますし、一方、フランスが中世のように思えてきました」と初来日の感想を語ったそうです。(映画.com 2014年10月26日の記事より引用 )
今年のカンヌではアデル・エグザルコプロスらが出演するラブストーリー『ラムール・フー(原題) / L'Amour Ouf』で、フランス映画にとっては狭き門であるコンペ入りを果たしました。
どのような映画なのか、期待が膨らみます!



6.マグヌス・フォン・ホーン(デンマーク)


『スウェット』場面写真©2020 TIFF

デンマークの新鋭ホラーの旗手、マグヌス・フォン・ホーン監督は、長編第2作目の『スウェット』が第33回東京国際映画祭(2020)に選ばれた経験があります。
その年はコロナ禍ということもあり、通常開催が見送られてしまいましたが、例年のコンペティション部門に相当する「TOKYOプレミア2020」部門で上映されました。
当時の学生応援団の『スウェット』の感想は、以下のようなものでした。

SNSが浸透し切った時代に、改めて社会を見直したいと思う映画でした。
ヒロインのファンに囲まれスマホに映る自分と、現実で孤独を深める自分、そのギャップが丁寧に描かれており、私を含め、自分自身の生活と照らし合わせてしまう現代人は多いのではないかと思います。
今日アップしたその写真は、果たして本当に自分自身の姿なのだろうか。仮に真の姿だったとして、それは必ずしも良いことだと言えるのだろうか。本作の魅力は、決してSNSの善悪を提示する作品ではないことだと思います。ウイルスではありませんが、ある種「共存」していくためにどうするか?という疑問を投げかけてくれます。今後SNSの「投稿」をタップする瞬間に、必ず頭をよぎる映画となりました。
オープニングの軽快な始まりに惹きつけられ、後半のシリアスな展開まで目が離せませんでした!SNS上のヒロインと、SNS外のヒロイン、その対比も見事な作品でした。

学生応援団Filmarksより引用

残念ながら劇場公開はされませんでしたが、非常に見ごたえのある作品だったことがうかがえます。
そして、続いて手掛けた長編第3作目『ザ・ガール・ウィズ・ザ・ニードル(英題) / The Girl with the Needle』がカンヌのコンペティション部門に選ばれるなど、着実なステップアップを遂げています。
東京国際映画祭への出品が監督の飛躍のきっかけになったということで、新たな才能を発掘するという意味でも東京国際映画祭の重要性が伝わるはずです。日本公開も期待してしまいますね...!

7.ヨルゴス・ランティモス(ギリシャ)


『哀れなるものたち』場面写真©2023 TIFF


『ロブスター』(2016)や『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(2018)などで知られるギリシャのヨルゴス・ランティモス監督ですが、昨年の第36回東京国際映画祭のガラ・セレクション部門で監督作の上映が行われています。
その作品こそが今年の超話題作『哀れなるものたち』(2024)です!

昨年のベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞して以来、世界中で大きな話題を呼んだこの映画の日本初上映は、東京国際映画祭の場でした。

新たな才能の発掘だけでなく、話題作をいちはやく日本で上映することで、日本の映画ファンの期待に応えるという点でも、東京国際映画祭が果たす機能の重要性がうかがえます。
今年のカンヌでは、『女王陛下のお気に入り』『哀れなるものたち』に続いて再びエマ・ストーンとタッグを組み、オムニバス映画『憐れみの三章』を上映するようです。
日本でも今年中の劇場公開が決まっており、公開を今か今かと待ちわびています!

8.デヴィッド・クローネンバーグ(カナダ)


ホラー映画の大巨匠、デヴィッド・クローネンバーグ監督も、なんと第9回東京国際映画祭(1996)に特別招待作品として『クラッシュ』が選ばれていました。来日に関しては不明ですが、当時の観客たちは『クラッシュ』のぶっ飛んだ内容に度肝を抜かれたはずです。
今年のカンヌでは自伝的な要素のあるSFドラマ『ザ・シュラウズ(原題) / The Shrouds』を上映するようです。今年で81歳を迎えたクローネンバーグ監督ですが、精力的に映画を作り続ける姿には感服します。

9.ショーン・ベイカー(アメリカ)

『タンジェリン』場面写真©2016 TIFF

『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(2017)や『レッド・ロケット』(2023)など、インディーズ映画界を代表する監督であるショーン・ベイカーも、カンヌのコンペ部門入りを果たす前に、東京国際映画祭に映画を出品していました。
第29回東京国際映画祭(2016)では、人気爆発のきっかけとなった『タンジェリン』がワールド・フォーカス部門に出品され、日本の観客を大いに沸かせました。
これまでアメリカの貧困層を描き続けてきた監督ですが、今年のカンヌでは初めて富裕層に着目した『アノラ(原題) / Anora』を上映するそうです。おそらく日本での劇場公開もされると思うので、今から楽しみで仕方ありません!

10.パオロ・ソレンティーノ(イタリア)

『The Hand of God』場面写真©2021 TIFF

現代イタリア映画界屈指の名匠パオロ・ソレンティーノ監督ですが、第34回東京国際映画祭(2021)のガラ・セレクションでは、その年のベネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した『The Hand of God』を上映しました。半自伝的なドラマであり、サッカー界の英雄マラドーナとの邂逅を描いたこの作品は、至るあの風景美と、当時の時代背景を感じさせられる名作でした。
今年のカンヌでは『パルテノペ(原題) / Parthenope』が上映され、前作と同じくナポリでの人間模様を描いた物語のようです。カンヌ常連監督が受賞を果たすのか、期待が高まります。

11.モハマド・ラスノフ(イラン)

『悪は存在せず』©2020 TIFF

イランの死刑制度を描いた『悪は存在せず』(2020)で第70回ベルリン国際映画祭の金熊賞を受賞したイランのモハマド・ラスノフ監督は、3年前の東京国際映画祭で同作品が上映されました。
イラン政府の抑圧を受けながらも映画制作を続ける監督は、今年のカンヌのコンペティション部門入りを果たしましたが、カンヌ開幕直前に実刑判決がなされてしまい、会場入りが難しい状況にあります。
大きな注目を集める中で上映される『ザ・シード・オブ・ザ・セイクリッド・フィグ(英題)/ The Seed of the Sacred Fig』は、いったいどんな作品なのでしょうか。

12. アンドレア・アーノルド(イギリス)


『牛/Cow』場面写真©2021 TIFF

イギリスで数多くのドキュメンタリー映画を手がけてきたアンドレア・アーノルド監督は、第34回東京国際映画祭にて、一頭の牛の生活を描いたユニークな映画『牛/Cow』がユース部門に選ばれました。ユース部門とは、特に10代に観てほしい作品を集めた部門であり、『牛/Cow』を観た10代の反応はどのようなものだったのか、とても気になります。
今年のカンヌでは、怪優バリー・コーガンを主演に迎えた劇映画『バード(原題) / Bird』を上映するようです。過去に受賞経験のある監督ということで、パルム・ドールへの期待が膨らみます。

最後に

以上、東京国際映画祭とゆかりのあるカンヌ監督たちを紹介してきましたが、今回はあくまでコンペティション部門だけであり、他の部門を観れば、まだまだTIFFとゆかりのある映画人はたくさんいます!
TIFFでは例年、カンヌで上映された映画を、いちはやく日本で上映する機会を設けていますので、今回紹介した監督たちの作品の中にも、もしかするとTIFFでプレミア上映されるものがあるかもしれません。ぜひ、今年の東京国際映画祭にもご注目ください!!
カンヌ映画祭についてもっと知りたい人はこちらの記事をお読みください↓


今年の東京国際映画祭は10月28日(月)~11月6日(水)の10日間です!

皆様の来場をお待ちしております。


〇参考・引用記事


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