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【連載小説】ガンズグロウ vol.4「本」

私が大学にノートパソコンを持ち込むようになって、しばらくたった。

まだ拙いものの、大分キーを覚えてきて、少し時間はかかるけど、チャットできるようになってきた。


私はいつもタツキに守られて戦った。守備までできるほど上達していないからだ。

ゆらぎが言った。

『さやかはいつもタツキに守られてるけど、やる気あんの?』

『え?やる気はありますよ』

『じゃあ守備は自分でしてさ、タツキを攻撃に回してよ、もったいない』

『あ……そうだよね』

タツキが割って入る。

『さやかちゃんは、まだ守備に慣れてないから……』

『自分でやんなきゃ覚えないじゃん』

『徐々になれてくるから……』

『徐々にって、もうすぐ一月になるんだよ?!』

ゆらぎの言うことは最もだ。

私が自分で慣れていかないと。

ゆらぎは更に畳み掛けるように言った。

『やる気がない、できない、っていうならやめちまえよ』

さすがの私もこれにはカチンときた。

『今覚え中!あとは自分でやります!タツキくん、今までありがとね』

これだけの文章をうつのにすごく時間がかかる私。

その間にゆらぎは言いたい放題言ってくれていた。

ちくしょー、絶対うまくなって、ゆらぎをギャフンと言わせてやる!


でも、結局守ることができず、ピットインするはめになった。

ガンズグロウでは、守ることができず損傷すると、ピットインと言って三時間ほどピットから出られなくなってしまう。

つまりは修理時間がかかるのだ。

その間二人だけで戦い抜かねばならない。

『ごめんね』

と私は言い、ベッドに横になった。


ガンズグロウを始めてからもう一月経つ。

私の中ではそこそこいい感じになってきているのだが、ゆらぎは気に入らないらしい。

私はため息をついた。

そもそもたかがゲームなのに、そんなに熱くなる必要ないじゃん。


そう思っていると、携帯のメールが鳴った。

タツキからだ。

『さやかちゃん、明日は時間はある?』

『学校が昼まであるので、そのあとなら大丈夫です』

『じゃあ、明日会おうか。大学の門のところで待ってるから』

会う?なんで?大学は……レナから聞いてるのか。

にしても、なんで会うなんて話になったんだ?


私は疑問に思いながらパソコンの電源を落とした。



翌日、昼前。

学校が終わった私は、門の前でタツキを待った。

走ってやってくるタツキ。

「急がなくて全然大丈夫だったのに……」

「いや、待たせちゃったから」

ハァハァと肩で息をするタツキ。

「じゃあ、とりあえずお茶でも」

というと、先に歩き始めた。

私は慌ててついていく。

「タツキくんって、何やってる人だっけ?」

思いきって話しかける。

「うーん、バイトかな」

同じ年くらいに見えたけど、大学生じゃないんだ……

「なんで?」

笑顔で聞くタツキ。

一瞬、きゅんとなる。

あれ?なにこれ?きゅんと……とかって、オタク相手にふざけんじゃねーよ?

「いや、今日私の時間しか聞かれなかったから、用事とかないのかなーと思って」

「今日はバイト休みなんだ」

そう言うと、ファミレスへ入っていった。



「ご飯、食べました?」

「え、いや、まだです」

「じゃあ、ご飯もたべちゃいましょうか。俺出しますから」

「え……いえ、とんでもない、自分の分は自分で出しますから!」

「いいですよ、お給料後なんで」

とりあえず注文すると、タツキはバッグから本を一冊取り出した。


「これ、ガンズの攻略本なんです。俺は読み終わったんで、よかったらさやかちゃん読みます?」

「あ……ありがとうございます!」

私は素直にその分厚い本を手にした。

用事って、これだったんだな……


タツキの優しさに更にきゅんとなる私だった。

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