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【小説】バージンロード vol.13「大学」

レンとの生活は基本的に楽しいものだった。

雑然とした部屋をカラーボックスで仕切り、本を片付けた。


台所のコンロが一つしかないので、基本的に外食かコンビニ弁当だった。

パソコンが一台増えて私専用機ができた。


この頃には『俺ブログ』は閉鎖しており、借金生活と恋愛について書いているブログだけになっていた。


完全な同棲生活。

ちょっとしたいざこざはあったけれど、基本的によい流れで暮らした。


この頃はパチンコで溜め込んだ借金が一杯一杯になっていた。

その借金をなんとかすべく、司法書士事務所に通い始めた。

やっと通い始めたのだ。

今までいくらでもチャンスはあったのに、気乗りしなかったからだ。自己破産の方向で話は進んでいった。

肝心な仕事の方は、とうとう行けなくなって休職していた。


そんな中でも楽しかったのは、レンとダーツバーへ行くこと。

ほぼ毎日、45分かけて通った。

夕飯はここで済ませることが多かった。


だから、エンゲル係数はやたら高かったのだが、司法書士の先生は親切で、山の上から買い出しにきたりしたらそうなるだろう、ということにしてくれた。


喧嘩も多かった。

一度キレるとおさまらないレンの壊したものは数知れず。

たいていが私のヒステリーがきっかけだったりするので、レンの態度はごもっともだった。


ひどい時になると、怒っているレンが怖くて裸足のまま逃げ出した私を追ってきた時。


ダダンダンダダン

ダダンダンダダン


と、あの有名映画のテーマソングが聞こえてきそうなほど淡々と、しかも確実に距離を詰めて追ってきたことがあった。


いやー、あれは怖かった。


他にもダーツバーで大喧嘩になり、すごい態度で私を置いて帰ってしまったり。


大喧嘩するたびに睡眠薬を大量に飲んで自殺未遂する私。

何回救急車に乗ったかわからない。


そのくらい私のヒステリーはすごかった。

母譲りというか、筋金入りだった。



そんな風に過ごしてきて12月。

またしても夜中にレンが腹痛を訴えた。

脂汗なのか、冷や汗なのかわからないけど、ぐっちょり濡れたレンをやっとこさ車に乗せると私は病院を目指した。

一番近くの、以前入院した病院に搬送する。

車椅子に乗せられて搬送された。


処置室で点滴を受けるもよくならず、ボルタレンをギリギリ量使ってもらっても痛みは引かなかった。


今日は入院です。と言われ、私は帰らされた。

心配で睡眠薬を飲めない私に、メールが一通届いた。

『痛いけど命の別状はないのでちゃんと寝てね』

レンはこんなときまで私の心配をしてくれてる。

私はジーンときた。

今までそういう人に会ったことがなかったからだ。


私は言われた通り薬を飲んで寝た。

昼過ぎに目が覚め、病院へ行く準備をする。

朝、レンから

『一週間検査入院』

とメールがきていたので、一週間ぶんのタオルや着替え、充電器に電気シェーバーなどを袋に詰めて持っていった。


もう未成年ではないので親の了承はいらないらしく、向こうのご両親は来なかった。


私は毎日お見舞いに通った。

午後からは毎日一緒だった。


ところが、事態は一変する。

休む日数のおかげで、出席日数が足りなくなり留年することになってしまった。

レンは奨学金を使って大学へ行っていたので、こまのまだと奨学金がおりないことになってしまう。


結局両親はやって来た。

今度は会釈つきだった。


「大学はやめるな、一年くらいならなんとかしてやれる」

というお父さんに向かって、レンは言った。

「俺は大学へはもう行かない。あそこで勉強する価値をかんじない」

「そんなこと言ったって、やめてどうするんだ」

「やめて働く。」

今回のレンはそう簡単には自分を曲げそうになかった。

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