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【小説】バージンロード vol.9「二人の違い」

二月になっても私はまだ二人の間で揺れていた。

はっきりできない自分に時々いらつきながらも、二人どちらの手も離せないでいた。

二人ともどちらかを選べとは言わなかった。

ただ、優しく側にいるだけ。

その二人に甘えながら、私は相変わらず行ったり来たりの生活を繰り返していた。


バレンタインは二人に同じ物を準備した。

同じくらい好きだから、同じ物。

単純にそう考えた。


ソウにはバレンタイン前日に渡した。

レンにはバレンタイン当日に。

レンが、ふと、

「ソウくんにもあげたの?」

と聞く。

「うん……。同じのをあげたよ」

それを聞くと珍しくレンががっかりした声をだした。

「同じ物を……」

「どうして?」

「いや、さすがに同じものはないかと思ったから。」

「ご、ごめんね、違うものにすればよかったね」

「初めてもらうバレンタインがお揃いって(笑)」

レンが苦笑した。


私は何も考えていなかった。

それが二人をそれぞれに傷つけていることに、何も気づかなかった。

いや、気づきたくなかったのかもしれない。


ソウにその話をしたが、ソウはただニコニコと笑っているだけで何も言わなかった。

だから、ソウが何を考えているのかはわからなかった。



レンはなんでもが初めてづくしで、私にはとても新鮮だった。

どこに連れていっても初めてづくし。

回転寿司すら初めてだと言う。

そういえばカラオケも初めてだと言っていた。


「今まで彼女とかいなかったの?」

不毛な質問をする。

「メールでとかはいたかな……」

「メール?」

「メルかのって言うか、メールとかチャットだけの彼女……かな。」

なるほど、それはありなのか……

メール彼女なんて、リアルに初めて聞いたぞ?

「お互いの顔とかわからなかったってこと?」

「いや、顔は写メ交換したから」

「可愛かった?」

「普通。」

レンの『普通』は、並み以上だということは、ネットなどでアイドルなどの話をしたときにわかっていた。

『普通』と言ったということは、相当可愛かったに違いない。

私は軽く焼きもちを焼いた。

しばらくはそのネタを引っ張って、レンを激怒させてしまった。


レンはたまに大爆発する。

といっても、主に私が悪いのだが、その怒りは凄まじい。

私がヒステリーを起こすとだいたいにおいて、レンは大爆発した。


物を壊す、自分の体に傷つける、たいていこのどちらかだった。

たまに私に手をあげることはあったが、それは本当に最終手段のようなものだった。


最初は気づかなかったのだが、いや、猫をかぶられていたのだが、レンはいらいらしやすい。

ちょっとしたことでもすぐ怒りだす。

O型男子の特徴だ。


このときも、私がしつこくメール彼女のことでからかい続けたので、爆発してしまい、携帯電話がお釈迦になってしまった。

怖くて泣く私。

爆発のあと勢いが止まらないレン。

怒ったまますごい勢いでドライブに行ってしまうレン。

それを止められない私。


いつもこんな調子だった。


だから、温厚なソウと別れたくなかったのかもしれない。

ソウは私がヒステリーを起こすといつもなだめてくれる。

私がからかいすぎても、ちょっといじけたりするだけですぐに仲直りした。

手をあげることなんか一度もなかったし、そもそも怒ったところをほとんど見たことがなかった。

そんな二人の間で揺れる私。

みんなならどっちを選ぶだろうか?

温厚だけど何に対しても臆病で積極的ではないソウと、いつもは優しく、積極的なレン。

どちらが……とはとても選べなかった。








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