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【小説】バージンロード vol.14「発作」

結局レンの言った通りに大学をやめることになった。


今住んでいるアパートは学生専用なので引っ越すことになった。

引っ越しの費用はレンの父親がだしてくれた。

引っ越し自体は私の父から軽トラを借りておこなった。


アパートはレンとレンの父親が探してきてくれた。



私たちの生活はここからまた始まる。



引っ越してからも私のヒステリーはあまりよくならなかった。

ただ、医者から三十才すぎるとずいぶん落ち着きます、という言葉を信じて頑張った。


自己破産は成功した。

これだけでも私の気持ちはずいぶん治まった。

ただ、相変わらずパチンコに行く癖は直らず、友達にまた借金をした。

その上会社をとうとう首になってしまった。



私はアルバイトを始めた。

憧れのカフェで働くようになった。

夜の部を支える一人になった。

仕事は実に楽しかった。

やりがいもあり、私はバリバリ働いた。

パチンコ癖はなおらなかったが、とりあえずの収入を得ることはできた。



そんなとき、別店舗から、異動で男の子が一人やってきた。

楠くんだ。

楠くんは、主にキッチンをしていたが、ホールの仕事もできる、オールマイティーな子だった。

年齢は私より一回り若く、身長はレンと同じくらいのかわいい子だった。

レジを扱えるのが、楠くんと私だけだったので、自然と仲良くなっていった。

バイトが終わったあとにカラオケに行くのが恒例化し、バイト仲間同士、朝まで歌い、しゃべるのが日課になった。


夕飯はだいたい作って置いていくことが多くなった。


レンはレンで、挙式の動画撮影カメラマンとしてバイトを始めていたので、安いながらも生活は軌道に乗り出した。


私はレンからの愛情を一心に受けながら満足のいく暮らしを始めていた。



徐々に仲良くなる楠くん。仲間として最高の状態だった。

ある日レンと喧嘩して家に帰れないことがあった。

そのとき、楠くんが、カラオケで時間潰しに付き合いますよ。

と言ってくれ、いつものカラオケで合流した。

ひとしきり歌って、五時の閉店を迎えた。

どこかで時間を潰そうということになり、私たちはネカフェ目指して歩き出した。

タクシーはつかまらず、ただただ青春映画のように、私たちは歩いた。

3月といえどまだ肌寒く、底冷えする日だった。

途中途中コンビニで暖をとりながら目的地を目指した。


ネカフェについたときにはもう6時を過ぎていた。


仮眠しようと寄ったのに、まだ喧嘩して興奮していた私は、ダーツを選んだ。

横で寝始める楠くん。

私はただひたすらダーツを投げていた。

少し休憩をとると、出勤時間になった。


私は夜出勤だけど、せっかくなら朝晩頑張ってやろうと意気込んでタクシーで出勤した。


掃除や納品を次々片付けていく。

朝働くのがこんなに気持ちいいなんて、思いもしなかった。


今日は午前中貸しきりで、とても忙しい予定だった。



が、私はよりによってお客さんの前で倒れてしまう。

前日休みたりなかったせいか、痙攣を起こして倒れてしまったのだ。


店の裏側まで運ばれ、

「今救急車呼んだからね!」

とパートのおばちゃんたちに励まされたことは覚えている。

付き添いは店長がしてくれた。

こんなに忙しいのに……

レンに連絡しても昨日の件で怒っているらしく、出ないそうだ。

私はポケットにいれていた携帯に、実家の番号が入っていることを伝え、実家へ連絡してもらい、店長は店に戻っていった。


母が慌てて自転車で迎えに来た。

母は車の免許を持っていない。

母が私の頭を優しく撫でる。

そして、レンに連絡がついた。

迎えにいきます、と言って電話を切ったらしい。


実は、痙攣発作は二度目だった。

一回は家族とレンで夜釣りをしていたときで、今回は二度目だった。

どうも寝不足するとだめらしい。


私は次の日とその次の日までお休みをもらった。


レンはもう怒っていなかった。

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