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最小絞り値/フィルター径の話(9)


第9回

レンズ仕様表の読み方編」シリーズ。前回(第8回)に続き、今回はは「③最小絞り値」と「④フィルター径」の2つの話を。内容はカメラ・レンズ初心の人向け、でもベテランも気づかなかったことが1つはある、と思う。

この「仕様表」の話だけで、くどいけれど⑪か⑫ぐらいまで続きそう。

③最小絞り値

 レンズの絞りをもっとも絞り込んだとき(絞りの〝穴〟が最小、またはF数値が最大)の絞り値(F値)が「最小絞り値」。「最終絞り値」ともいう。
 逆に、絞りをめいっぱい開いたとき(絞りの〝穴〟が最大、またはF値数が最小)の絞り値を「最大絞り値」または「開放F値」という。

 開放F値についてはレンズ名を見ればわかるので、仕様表には敢えて項を設けず明記していない。しかし開放F値が一定でないズームレンズの場合は、広角端と望遠端での開放F値と最小彫り値を明記しているメーカーもある。
 また、多くのレンズの鏡筒部には開放F値が記されている。最小絞り値はレンズ名にもレンズ鏡筒部にも記載されることはほとんどない。

ニコン仕様表では、最小絞り値だけでなく最大絞り値(開放絞り値)も併せて明記している。
古くからニコンの仕様表は、他のメーカーに比べて詳細で丁寧だ。
キヤノン仕様表の「最小絞り」でのF値の表示。
キヤノンは他の多くのメーカーと同じく最小絞り値のみの表記。

 最小絞り値で注意しておきたいことは、開放F値が変化するズームレンズを使用するときのF値変化である。
 たとえば開放F値「F3.5~5.6」のズームレンズの場合、絞り開放時の広角端のF値は「F3.5」だが、そのまま望遠側にズーミングすると開放絞り値にしたままでもF値は変化し、望遠端で約1.5EVぶん暗い「F5.6」になることをあらわしている。

 同じように広角端で最小絞り値の「F22」にセットしておいて、望遠側にズーミングすると自動的に「F32」とか「F38」になってしまうレンズがある。いっぽうで、広角側で「F22」にセットしたまま望遠側にズーミングしても、その最小絞り値は広角側でセットしたF値と同じままで変化しないズームレンズもある。一定の絞り値以上に変化しないように制限を設けているのだ。
 もちろん言うまでもないが、開放F値が広角側も望遠側も同一のズームレンズは(これをコンスタントF値ズームともいう)ズーミングしても最小絞り値は一定のままである。

 通常は仕様表に、最小絞り値が望遠端で変化する/しないを明記しているのだが、なかにはそのへんを曖昧のまま表記している(困った)メーカーもある。

 パナソニックの可変F値ズームレンズ「100-400mmF4.0-6.3」の仕様表、最小絞り値表示を見てほしい。開放F値はF4~F6.3なのに最小絞り値は「F22」としか記載されていない。ほんらいなら望遠端にしたときにはF22以上の絞り値になるはずだが、それとも・・・。

パナソニックのレンズ仕様表の「最小絞り値」では、このように開放F値可変ズームレンズであるのに最小絞り値は固定F値レンズのような記載がされているものが多い。不思議だ。

 ところが最近発売されたばかりの「LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S.」の仕様表を見ると、「開放絞り:F4-7.1/最小絞り:F32-45」と望遠端可変F値であることが記載されている。ざっと他のレンズ(GレンズもLレンズも)をチェックしても、最小絞り値可変を明記しているのは28-200mmのレンズのみのようだ(2024年3月現在)。奇妙だし、気になる。

 なお、皆さんは周知のことだとは思うが、開放F値がF3.5~5.6のズームレンズでF8にセットしてズーミングしても、このズームの場合はF5.6以上でF3.2以下の絞り値のF8であれば一定のままで変化しない。

 F値変化するのは広角端、望遠端の場合だけで中間絞り値は変化しない。
 誤解する人もいるかもしれないので敢えて述べるが、ズーミングでのF値変化は、広角側から望遠側(または逆)にズーミングするに従って徐々に(リニアに)絞り値が変化するものだ。逆はあり得ない(見たことがない)。

1EV、1/2EV、1/3EVステップでのF値を一覧表にしたもの。たとえば「F3.5~5.6」の
ズームの場合、開放F値のF3.5とF5.6がどれくらいの「EV差」があるのかすぐにわかる。

私はこの表をプリントアウトしてデスクの横に貼って原稿を書くときなどで参考にしている。

 写真やカメラレンズの初心の人たちにとって絞り値は馴染みのない"変則的"な数値だ。その理屈はともかくとして「絞り値1段」の値と順序だけでも丸暗記しておくことをおすすめしたい。

④フィルター径

 レンズ先端部の枠にフィルターやアクセサリー類などが取り付けられるようにネジ状(内ネジ)になっている。その枠の直径をフィルター径といい「55mm」または「φ55」などと表記されている。フィルター径をレンズ口径ということもある(厳密に言えば違うのだけど)。

 ネジのピッチは、径の小さなものは0.5mmピッチ、通常は0.75mmピッチがほとんどで大口径になると1.0mmピッチのものもある。

富士フイルム「XF 35mmF1.4 R」の仕様表、フィルター径の項目表示。φとmmの併記。
キヤノン「RF 50mmF1.8 STM」の仕様表、フィルター径の項目表示。mmのみの表記。

 レンズ鏡枠部やレンズキャップの裏面などにもフィルター径が記載されている。フィルターやアクセサリー類を選ぶときに参考になる。
 また、ほとんどのレンズはねじ込み式であるが一部のレンズでは回して固定するバヨネット式のものもある。

富士フイルム「XF 35mmF1.4 R」にはレンズ前面リング部にフィルター径が記されている
シグマのレンズキャップ。このように裏面にフィルター径が刻印されているものが多い


 大口径レンズや望遠レンズなどはフィルター径を大きくせざるを得ないのだが、各メーカーとも可能な限りフィルター径を同じになるようにレンズ設計する努力している。ユーザーがフィルターの付け替え使用がしやすいようにしているためだ。

 フィルター以外のもので――たとえばクローズアップレンズやレンズフード、その他のアクセサリー類などで、その径がレンズ径と異なる場合でもでも取り付け可能なアダプターがある。ステップアップリングとよばれるものがそれ。

 レンズ径とフィルター径の異なる複数のフィルターやアダプターを持っていて、それをセット可能にするのがステップアップリング(またはステップダウンリング)である。
 たとえばレンズ側のフィルター径がφ49(49mm)で、そこにφ55(55mm)のフィルターを取り付けて使いたいときに利用できる。

67mm径のレンズに72mm径のフィルターなどを、同じく49mm径のレンズに
55mm径のアタッチメントなどを取り付けるためのステップアップリング

 ただし径が同じだからといって、なんでも取り付けていいというわけではない。とくにレンズフードは画角に対応したものでないと、撮影した画面の周辺に黒い影が出る「ケラレ」を発生してしまうこともある。
 なお、魚眼レンズや超広角レンズなどで第一面レンズが飛び出しているもの、大口径の超望遠レンズなど口径が巨大なレンズなどにはフィルター径の記載はない。

 次号は「⑤ 最短撮影距離」について取り上げる予定だが、話が少しややこしくなる、かも。


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