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写真家の田中希美男です。 しばらく中断していた「Photo of the Day」をこ…

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写真家の田中希美男です。 しばらく中断していた「Photo of the Day」をここ note に"臨時引っ越し"しました。カメラやレンズ、そして写真のあれこれの話をします。 X (twitter):https://twitter.com/thisistanaka/

最近の記事

ザイデルの5収差とは

 私たちが普段使っているレンズは、被写体の1点から出た光が理想的な点像ならず、 その周囲に散らばったりぼけたりして結像してしまう。 その理想的な点像にならず、ずれたりぼけたりする現象を収差という。  光の色(波長)に関係しない(モノクローム)収差に「球面収差」「コマ収差」「非点収差」「像面湾曲収差」「歪曲収差」の5つあって、それ を「ザイデルの5収差」という。   その5収差とは別に、色光の波長(色)が異なることにより発生する収差(色収差)には「軸上色収差」と「倍率色収差」の

    • 収差は、ないほうがいいのだろうか?

        収差ってなんだろうか、完全に補正することができるのだろうか。   収差を最適に補正すればレンズの性能は飛躍的に向上するだろうか。   収差のまったくないレンズに描写の味はあるだろうか。   優れた結像性能を求めるレンズの大敵は収差だけだろうか。 レンズに収差があること、ないこと  レンズの結像性能(※)は、旧来のフィルム時代や一眼レフカメラ時代のレンズに比べて、デジタルカメラ時代そしてミラーレスカメラの時代になって飛躍的に向上している。  その理由のおもなものは、非球

      • MTF図の補足情報

         前回に、MTF図を読み込むときの注意点をいくつか話をした。それに関連したことで追記の話をもう少し。 波動光学的MTFと幾何光学的MTF  最近になって、いくつかのメーカーが「波動光学的MTF」と「幾何学的MTF」の2種類のMTF図を並べて公開するようになった。  光の法則や現象については専門家に譲るとして、光は波動性と粒子性の性質を備えているといわれる。光の波動的な性質により、小さな穴を通り抜けるとき穴の出口付近で光が直進せず屈折し散乱しフレアが発生する。これが回折現

        • MTF図を読むときの注意点

           メーカーが公開しているMTF図を読み解けばレンズの結像性能(※)や描写の様子がおおよそ推測できる。似たようなスペックのレンズでも、MTF図を見比べれば異なるメーカーのレンズの性能を比較検討できるかもしれない。  しかし、コトはそう簡単なことではない。仮にMTF図を詳しく読み込めたとしても、レンズの描写性能(※)のすべてがわかるわけではない。いわんや「レンズの味」などの官能性能は決してわからない。もし間違った読み解きをしてしまったら、レンズ性能を逆評価してしまいかねない落とし

        ザイデルの5収差とは

          MTF図の意味を知る

           前回はMTF図を構成している大切な数本の曲線について話し始めたが、途中で終えてしまった。今回はその続きから始めたい。 MTF図の空間周波数(本数/mm)とコントラスト特性  多くのメーカーでは、フルサイズ判用レンズでは空間周波数(本数/mm)の少ないほうの2本の曲線は「10本/mm」とし、空間周波数の多いほうの2本は「30本/mm」としてグラフ化している。  なぜ、空間数端数を多くのメーカーが「10本/mm」や「30本/mm」の2種類としたのか、そのへんの理由は(調べ

          MTF図の意味を知る

          MTF図の基本情報

           レンズ性能を推測するメーカー公表の情報のおもなものには、①仕様表(スペック表)、②レンズの構成断面イラスト図、③MTF図がある。  この3つのレンズ情報の中で、私たちがレンズの結像性能を判断または推測できるのは③MTF図だけである。  以下の(図・1)が代表的なMTF図だ。図の曲線や種類などについては後ほど詳しく話をするが、とりあえずMTF図とはこんなものだということを知っておいてほしい。 MTFはコントラスト特性をもとにして結像性能を定量化  結像性能の良いレンズで

          MTF図の基本情報

          レンズ内手ぶれ補正の話 (16)

          手ぶれ補正の機能はカメラボディとレンズの中に入っているものがあるが、ここでは仕様表に記載されているレンズ内の手ぶれ補正についてだけを解説するようにしたい。 現在はレンズ内手ぶれ補正とボディ内手ぶれ補正の両方の機能を、同時シンクロさせてぶれ補正の効果を向上させているものも増えてきた。機能の進化が著しいし、レンズにとって将来もますます重要な機能となっていくだろう。 同時シンクロ式(ハイブリッド型)手ぶれ補正や手ぶれ補正機能そのものについては、項をあらためて取り上げるとして、と

          レンズ内手ぶれ補正の話 (16)

          防塵・防滴の話 (15)

          「レンズ仕様表の読み方」編シリーズ、その第15回は「防塵・防滴」の表記とその内容などについて。 最近のレンズ交換式カメラもレンズも防塵・防滴対策が施された製品が多くなってきた。一部のメーカーでは仕様表やカタログなどにそうした機能を備えていることを謳っている。  しかし「どれくらい」のホコリや水に耐えられるのか、どのような基準をクリアすれば、防塵・防滴の性能を備えている、と言えるのだろうか。そのへんを探っていきたい。 防塵・防滴 「防塵・防滴仕様」のレンズやカメラは、微細な

          防塵・防滴の話 (15)

          絞り羽根枚数の話(14)

          「レンズ仕様表の読み方」編シリーズ、今回はシャッタースピードと並んで露出を調節する絞りと、その羽根枚数についての話を。 現在の交換レンズに内蔵された自動絞り機構は、その動作コントロールはメカ式から電子制御式に替わりつつあるが、絞り羽根を使った機構そのものは古くからほとんど変化がない。 絞り羽根枚数 絞りの羽根はごく薄い板状の金属または樹脂製の小片(羽根)を手作業で複数枚組み合わせて絞りユニットが作られる。組み上がった小片の枚数が絞り羽根枚数である。  絞り羽根を駆動させる

          絞り羽根枚数の話(14)

          最大径x長さ/重さの話 (13)

          「レンズ仕様表の読み方」編シリーズの第13回、今回は「最大径×長さ」と「重さ」の2つの話。 たぶん、皆さんの多くは「レンズの径や長さ、重さの仕様なんて興味がない(わかりきったことだ)」と思われるだろうけど、仕様表に記載している数値には、それぞれ表記上のこまかな約束や取り決めがある。 知っておいて決してソンはないと思う。 最大径x長さ(寸法) レンズ鏡筒(鏡枠)部のもっとも径の大きい(太い)部分が「最大径」である。「長さ」は、レンズ先端部からレンズマウント基準面までを言う。

          最大径x長さ/重さの話 (13)

          最大撮影倍率の話・後編 (12)

          というわけで、前回「最大撮影倍率」の話、その後編。 最大撮影倍率の倍率数値がいまいちわかりにく。デジタルカメラ時代に見合った最大撮影倍率の良い表記方法があるのに・・・という話のつづき。 最大撮影倍率・後編  話が少しヤヤこしくなるが ━━ デジタルカメラの時代になると、撮影倍率はフィルム時代のように撮影したフィルムそのものを見て確認も実感もできなくなった。  撮影倍率が何倍だと言っても、デジタルカメラではフィルムカメラとは違って、イメージセンサーにどれくらいのサイズで写っ

          最大撮影倍率の話・後編 (12)

          最大撮影倍率の話・前編 (11)

          「レンズ仕様表の読み方」編シリーズ、その第11回。 今回は「最大撮影倍率」についてだけど話が長くなってしまったので前編/後編の2回に分けた。 最大撮影倍率は最短撮影距離と同じくレンズの使い勝手の良し悪しに少なからずの影響がある 最大撮影倍率・前編 被写体を実画面上に最大でどれだけの大きさに写せるか、それを倍率であらわしたものが最大撮影倍率だ。最大画像倍率ともいう。倍率数値が大きいほど被写体をより大きく写せる。  撮影倍率1倍は等倍ともいい、1cmが撮像面上またはフィルム面

          最大撮影倍率の話・前編 (11)

          最短撮影距離の話 (10)

          レンズ仕様表の読み方編」シリーズで、今回は「⑤最短撮影距離」を解説する。 最短距離はどの起点(場所)から被写体までを測定しているのか、そのへんの話から始めたい。 ⑤最短撮影距離  被写体にピントを合わせることができる最も近い距離が「最短撮影距離」である。「撮影可能範囲」や「合焦範囲」として、「最短撮影距離(m)~∞」と表記しているメーカーもある。至近撮影距離ともいうこともある。  最短撮影距離の測定の方法は、レンズ交換式カメラとレンズ固定式カメラとでは異なることをご存じだ

          最短撮影距離の話 (10)

          最小絞り値/フィルター径の話(9)

          第9回レンズ仕様表の読み方編」シリーズ。前回(第8回)に続き、今回はは「③最小絞り値」と「④フィルター径」の2つの話を。内容はカメラ・レンズ初心の人向け、でもベテランも気づかなかったことが1つはある、と思う。 この「仕様表」の話だけで、くどいけれど⑪か⑫ぐらいまで続きそう。 ③最小絞り値 レンズの絞りをもっとも絞り込んだとき(絞りの〝穴〟が最小、またはF数値が最大)の絞り値(F値)が「最小絞り値」。「最終絞り値」ともいう。  逆に、絞りをめいっぱい開いたとき(絞りの〝穴〟

          最小絞り値/フィルター径の話(9)

          レンズ構成の話(8)

          第8回前回に続き「レンズ仕様表の読み方編」シリーズで、今回は、あの"何群何枚構成"という「②レンズ構成」について。 ②レンズ構成 一般写真用レンズは、光学ガラス材(硝材)や特殊プラスチック樹脂から作られた光学レンズを一枚一枚、組み合わせて構成されている。複数の光学レンズを貼り合わせて「一枚レンズ」のように仕上げているレンズもある。  それら光学レンズを複数枚にまとめて固定し、グループに分けたものを「群」または「ユニット」とよんでいる。そうして、それらレンズ群と単数枚のレン

          レンズ構成の話(8)

          画角の話(7)

          第7回今回から「仕様表の読み方編」をスタート。まず「①画角」の項目から解説していきたい。 なお、これからしばらく続く「読み方編」シリーズでは、仕様表などの図表などを掲載していくが、そうした図表の一部は各メーカーの広報資料やホームページ製品紹介ページから画面キャプチャして(一部を切り取ったりして)使わせてもらっている。ここで各メーカーにお礼を申し上げたい。 ①画角 画角は写角ともいう。無限遠(∞)にピントを合わせたときに写せる範囲を「角度」であらわしたもの。  そのレンズが

          画角の話(7)