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How to Read English 2

今回はちょっとギョッとすることを書きます.英語を読む際に,指導者は辞書の重要性を説くことがありますが,正直,学習者が辞書を正しく使えるようになるにはそれなりの知識が要るので,もし,教室などで辞書を使うように指導をしている人がいるとすれば,かなり時間をとって辞書をどう使うのかをアクティヴィティーを通して教えない限り(そうしている真面目な指導者を尊敬します.でも,みんながそうすべきかというとそれはまた別の話です),いやな云い方をしますが,「辞書を引け」という指導はいたずらに学習者の学習時間を奪い,英語力の貢献にはあまり寄与しないということになることが少なくありません.

単にわからない単語の意味を調べるだけでも,品詞がわからないから違う項目を見てしまうということを初級者は普通にやります.辞書の例文と自分がいま読んでいるテキスト内のセンテンスを見比べる,ということでかなり勉強になるのは確かですが,それができるようになるにはかなりの知識とスキルを要求します.指導者と学習者の知識には大きな溝があるので,自分が「おもしろい」「勉強になった」と喜んでいても,そのよろこびを学習者を分かち合うのはほぼ無理です.

だから,ぼくが共著でTOEICのスコアが300以下の学習者を対象にした本を出したときには辞書なして使えるように,語註は丁寧につけています.

これぐらいやらないと,英語を読むことが辞書を引く作業になり,読むべきテキストに取り組んでいる時間が著しく短くなりかねないからです.まあ,残念なことに学習者の多くは辞書を使ってもその作業で単語を覚えていることもあまりなくて,論理的思考を駆使して品詞の見極めの仮説と検証を行ないながら辞書を引いている(おそらく指導者の人はそうする人が多いので,「学習者もそうするべきだ」と考える人が多いのではと推測します)わけでもないので,時間だけが余計にかかってしまうはずです.それなら,語註をたよりにテキストの英語を読んでくれた方がいいけです.もちろん,語註をせっかくつけたのに,見てくれない,テキストの英語もちゃんと読んでくれない,ということも多々あるとは思います.それでも,初級者に辞書は必要か,という問いには「そうでもない」とぼくなら答えます.

前にもどこかで書いたと思いますが,『ゼロから覚醒 はじめよう英作文』クラスでリーディングの勉強もしていて英和辞典が欲しいという人は,この『デイリーハイスクール英和辞典』(三省堂)一択です.『ジーニアス』も『ウィズダム』も要りません.紙の辞書がどうしても必要なら小さくて持ち歩けるものでないとダメだからです.でも,『デイリーコンサイス』や『ポケットプログレッシブ』を高校生(やそのレヴェルの学習者)が使っても意味がありません.だから,『デイリーハイスクール』なのです.また,情報量が多いのは初級者にはダメです.圧倒されて(overwhelmed)しまいます.アプリなら『エースクラウン』あたりでいいんじゃないですかね.

とはいえ,『デイリーハイスクール』は1998年の辞書です(でもまだ現役です!).教科書も入試問題も(というか英語自体が)大きく変わったと思うので,そろそろ改訂してくれないかな,とぼくも思っています.(この記事を読んでポケット版の中高生用の学習辞書があった方がいいと思う人は,この辞書を取り寄せた上でここで「『デイリーハイスクール』をそろそろ改訂して欲しい」とリクエストしてみてください).


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