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2021年のwebtoon①:UIよりもビジネスモデル

二つ目は各所で話題のwebtoonに関する活動です。
ピッコマさんがSmartoonと呼んだりカドカワさんがタテコミで押したりしていますが、全部「縦スクロールコミック」ということで表現できるかな、ということでぼくたちは縦スクとか縦とかで呼んだりしています。対して今まで作ってきた普通のマンガは横スクであり横ですね。

そんな従来の横に読むマンガが縦スクロールにとってかわられる!韓国勢のマンガに日本勢が破れるのか!みたく散々煽られておりますが、つい10年ほど前に「これからは電子書籍の時代!紙の本は全てデジタルにとってかわられる!」と煽られたのとそっくりで既視感ヤバいです。
結果として電子書籍が伸びるほどに紙の書籍も伸びていきました。
ピッコマの社長の金在龍(Jay)さんも縦スクロールマンガで増えた読者が横のマンガも読むようになって売り上げが上がっていると言ってますし。

ですので来年は「縦vs横」という構図ではなく「縦スクロールコミックという新ジャンルを発展させて、横マンガもさらに発展させよう!」というビジネス観点から見ても、読者視点から見てもとても楽しそうな展開になることになっていまして。

そしてたまたまといいますか必然といいますか、自分も大きくこの流れに関わることになっていまして、今年は縦スクロールコミックにまつわる仕事をいろいろやってました。
その中から新しくマンガ業界に関わるプレイヤーの紹介を中心に、縦スクロールコミックスの大まかな概況はいろんな方がもう書かれているので、webtoonとは本質的にどのようなもので、なぜwebtoonが成功することで日本の横のマンガも大きく伸びるのか、その理由を分析していきたいと思います。

まず、制作側最大の新規参入がフーモアです。フーモアはゲームのキャライラストの受注などを中心にしたゲーム制作系の会社だったのですが、社長の芝辻氏が数年前から縦スクロールコミックの可能性を追って韓国へ頻繁に出入りするなどの準備の果て、今回日本で最大規模の縦スクロールコミック制作スタジオとなりました。というかもはや世界でも最大手のひとつです。


その制作可能本数は年間50本以上。おそらく2位につけるであろうソラジマさんが26本と言われていて、その後に続くスタジオは5−10本程度が平均だと思われるので、かなり大きな規模感であることがわかります。
ぼくはご縁あってこのフーモアの顧問をしていて、今まさに縦スクロールマンガ市場に起きていることを最前線で体験しています。ありがたや。

さてこの「マンガを作る」という部分において、横と縦の最大の違いは「個人で作るか」「チームで作るか」という部分です。縦はカラーリングやCG的な特殊効果を多用したり背景なども技法的に省略したりせずできるだけ描き込むといったアプローチをとるため、多くの人員を必要とします。どちらかというとマンガを描くというよりはアニメを作るときの工程ですね。現にアニメスタジオさんが制作を受けている縦スクロールマンガもたくさんあるようです。

加えて縦には(現状)編集がいません。
特に今年来年と韓国資本で大量に作られる縦マンガは韓国や日本の投稿サイトで既に人気のあるテキストで書かれた原作を元に縦マンガ化するというアプローチで作られるので、どのようなマンガを作ろうかという話合いやこうしたら面白くなるというアドバイスをする編集をおかずに、忠実に原作を再現していくというアプローチが取られています。編集に対応するポジションにはアニメで言う絵コンテを書く監督のような方が着かれるというイメージですね。
再来年以降は編集のついた縦マンガや限りなく個人で作るような縦マンガなども増えてくるとは思いますが、現時点では縦がアベンジャーズのようなハリウッド大作、横がカメラを止めるな!やパラサイトといったいわゆる従来の「映画」といった対比のイメージでいてもらっていいと思います。
この喩え的にもやっぱり両者が併立して産業が発達していくイメージですね。

配信を行うプラットフォーム勢ではゲーム会社のアカツキさんがアプリで参入を発表しました。

横と縦マンガには実はもうひとつの対比ポイントがあって、それは「従来通りに1冊や1話単位で課金=読む前に課金」と「待てば無料で課金=読み始めてから課金」という対比です。
縦マンガはこの「待てば無料」課金と一体のビジネスモデルです。まず冒頭4話ほどが無料で読めてそこから先は1話が24時間ごとに無料で読めるのですが、先まで早く読もうと思ったら課金してくださいね、というビジネスモデル。
横マンガはどちらのビジネスモデルにも対応しています。「待てば無料で読める横マンガ」はたくさんあるので、そういう意味では正確な対比点ではないのですが、やはりこのどのように課金するかが作るマンガの傾向さえも決めていくので、横か縦かの話に加えて、待てば無料かそうでないかがそれ以上に重要です。
その視点でいくと日本ではコミックシーモアやkindle、めちゃコミやDMMなどが横中心、ブラウザベースで待てば無料ではない勢。ピッコマとLINEマンガがアプリで縦中心で待てば無料勢。comicoが縦でアプリだけど待てば無料ではない勢、マンガbang!がアプリで横で待てば無料ではない勢、と「ブラウザかアプリか」「横か縦か」「待てば無料かそうでないか」の2×2×2で8通りに電子書籍ストアは分類できます。
アカツキさんが新規参入してくるのはこの中の「アプリ×縦×待てば無料」ということになりますね。
最も最新の組み合わせなので、ゲームで培ったノウハウが投入されて新しい成功の形を示してくれるのが楽しみです。

というわけでそもそも近年のマンガ市場の発展にはこの「ビジネスモデルの多様化」が大きく寄与しています。

キーワードは「ストレージ型読者とクラウド型読者」

長くなったので記事分けます!

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