不思議と鏡がお隣同士
お隣同士に並んだ本を買ってもらったおかげで、
今の自分の好みが形作られているなんて、その当時は思いも寄らなかった。
ルイス・キャロル著、ジョン・テニエル画の『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』。
確か7〜8歳の頃、買い物の最後にスーパーのテナントに入っていた書店で本を買ってあげる、と母に言われた。
その時手に取ったのは講談社の青い鳥文庫『ふしぎの国のアリス』(高杉一郎訳)。
なぜこの本にしたのか、明確な理由は覚えていないが、背には『ふしぎの国のアリス』というタイトルと、チェシャ猫と向き合っている挿絵から取ったアリスの後ろ姿が印刷されている。
本棚を見たときに目に入る「ふしぎ」「アリス」という言葉に魅かれたのだと思う。表紙の青い服のアリスや、周りのピンク色も好きになった理由かも知れない。
すると母は「もう1冊選んでいいよ」と言ってくれた。当時の金額で定価430円、同じくらいの金額の本ならもう1冊買ってよし、と判断してくれたのだろう。
そこで2冊目を何にしよう、と棚を見ると、隣に並んだ『鏡の国のアリス』(芹生一訳)が目に入った。
同じ「アリス」が入っているし「鏡の国」だから続きかな?と思ってこちらも買ってもらうことにした。定価500円也。
しかし、実は『鏡の国のアリス』は偕成社文庫なのだ。
高さと本の幅が微妙に大きい。また、背の上部には数ミリのオレンジ色のラインが入っていて、青い鳥文庫とは若干装丁が異なる。
背のタイトルの更に下には、白の騎士と出会った時の挿絵から切り取ったアリスの姿が印刷されている。2冊の背が並んでいると、全然違うという程でもない。
アリスと赤の女王がお話している場面が表紙で、カチューシャ姿のアリスが素敵なおねえさんに見えた。
偕成社文庫の『ふしぎの国のアリス』はこちら。
講談社の方がカラフルで子どもの目に留まりやすく、アリスのほっぺたがピンク色でかわいい。
あの書店に偕成社文庫の『ふしぎの国』があったのかなかったのかは藪の中。
当時の青い鳥文庫には「鏡の国」がなかったのは確かだ(1994年に出版)。
2つの物語が姉妹編だから、という理由で違う出版社の文庫を並べていたとしたら、いい仕事した書店だなあ。
こうして2冊のアリスは、ヴィクトリア朝イギリスとその生活文化、紅茶、英文学、更にシャーロック・ホームズまで、大好きなものと出会わせてくれた!
(インターネット情報は2024.4.7確認)