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「選べない」という贅沢な選択〜ストラト、リヤハム一発〜

ギターは好きなんですが、演奏技術はありません。
言い訳になりますが、グランジ・オルタナから音楽に入ってからというもの、長くギターボーカルを担当してきたため、コードで演奏ばかりしてます。速弾きやボリューム奏法なんか憧れるのですが、ぼくのバンド活動においては必要性を感じません。

カートのギターが、世界中のぼくみたいなギタリストを許してくれた

とりわけピックアップの切り替えなんかすることもなく、使うのはもっぱらリヤのみ。なんなら演奏中にセレクターに手が当たり音が変わってしまって困ることの方が多かったわけです。それほど音にこだわりも知識もなく、「あれ、なんかおかしいな、まあいっか、でもなんかいやだな」という心持ちでライブを終えた後に「あ、ピックアップ変わってたのか」と気づいて残念に思ったものでした。

ピックアップセレクターは当然、手の届きやすいところにある

利点であるはずの「音色の選択」が、ぼくにとっては不必要なばかりか邪魔なもの。そう感じ始めたときに出会ったのがFenderのBroncoというギターでした。1960年代に発売された、いわゆるスチューデントモデルというやつで、できる限り廉価に仕上げられたもの。ボディも小ぶりでショートスケール。

最も人気がないとされるブリッジユニットを搭載


ラージヘッド!かっちょいい!
流線型を思わせるサイクロンボディ!美しい!
何よりピックアップはリヤに一発!潔い!
このギターに、ぼくは強く強く心を奪われました。この出会いからすでに20年以上が経った今でも、ぼくの理想のギターの形はずっとこれです。

ある種ヴィンテージものではあるのですが、手が出ないようなとんでもない金額ではありません。なにぶんスチューデントモデルであること、不思議なブリッジユニットが搭載されていることからか、人気もないようです。しかしながら、未だぼくはこのギターを手に入れていません。というのも、やはり身長185cmのぼくにはちょっと小さいんです。ショートスケールもそうなんですが、ボディの小ささは致命的です。何度か試奏をしましたが、音が云々よりも持った自分の姿がカッコよくない。これ大事です。

では作ろう、と考えました。まずぼくが感じるBroncoの魅力は以下の通り。
① ピックアップがリヤに一発のみという潔さ→そこから生まれるデザイン性
② ラージヘッドであること
次に残念な点は以下の通り。
❶ショートスケールであること
❷ボディが小さいこと
こう考えると、答えは一つしかなく、「ストラトを改造すればいい」という簡単な結論にたどりつきます。

Fenderのラージヘッドストラトを手にれるのは難しく、ぼくの生まれ年生産のTokaiのSilverstarが手に入ったため、1号機はこれでいくことにしました。色もキャンディレッドですてきです。とはいえ、Broncoのようにリアにシングルだと音色が細く鼻詰まり感の強い音になるので、シングルサイズハムであるDimarzioのFast Track2を取り付けることにしました(後からシングル/ハム切り替えスイッチャーもつけました)。トーンコントロールもするつもりはなかったので、ノブもボリュームのみ。で、完成したのがこちら。

サイクロプスっぽくてかっこいい

もうめちゃくちゃ満足な出来で、なんならBroncoよりもこっちの方が好きなくらいです。音はやっぱり細めだし、ジリジリ感が強い音にはなるけれど、音も見た目も唯一無二です。
また、棚ぼた的にメリットだったのが、ぼくの弾き方に合っていたということ。アルペジオなどのとき、ぼくにはピックガード部に小指を置いて弾くクセがあります。叩くのはネックの根本からリアピックアップの中間地点あたり、しかもピックが結構深く刺さっているんです。だからセンターのピックアップがないことですごく弾きやすくなりました。セッティングに迷うことはなくなりましたし(だって1種類しか音出ない)、何より「ぼくのギター」という自信と所有欲を一気に満たしてくれました。

カスタムは、音の向上はもちろんですけど、ぼくにとって今回の改造は「被らない」そして「自分専用」のギターにすることが最優先事項でした。そういう意味では、最高のギターが完成したのではないかと思っています。

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