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沢田太陽の2020年間ベストアルバム 10-1位

どうも。

では、沢田太陽の年間ベストアルバム2020、トップ10を残すのみとなりました。

結果は、こんな感じです!

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はい。これまでの10枚は遊びの感覚で並べてたんですけど、これは、もう、この順番でガチです。本当に心から大好きなアルバムばかりです。

では、10位からいきましょう。

10.Petals For Armor/Hayley Williams

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10位はパラモアのヘイリー・ウイリアムズのソロ・アルバム「Petal For Armor」。これはですねえ、もう聴いてるだけで、すごい感動があるんですよね。10年ひと昔前、エモいパンクを歌うアイドル的存在だったヘイリーが、パラモアでアルバムを重ねていけば行くほど音楽的に脱皮していき、このファースト・ソロではもう完全なる先鋭的なフィーメール・インディ・ロッカーですよ!「In Rainbows」以降のレディオヘッドのフォークとエレクトロニカの路線をベースに、ジェイムス・ブレイク的な間や、ソランジュやSZA以降のネオ・ソウルのテイストに挑み、さらにはバック・ヴォーカルにフィービー・ブリッジャーズ、ルーシー・デイカス、ジュリアン・ベイカーのボーイジーニアスの3人を迎えて共演ですよ。ここ最近のインディでのおいしいところに真正面から取り組んで自分のモノにしています。そして中でも一番嬉しいのは、ヘイリーと共に楽曲を作っているのがテイラー・ヨーク。そう、パラモアと全く一緒なんですよ。パラモアの前2作での進化を支えてきた彼との、実質「裏パラモア」のアルバムなんですよね。あと、この音楽的進化の裏に、自身の離婚劇とそれに伴う打つの克己、フェミニズムへの目覚めと、心身の成長が伴ったものであることも特筆すべきです。「変化」ということでテイラー・スウィフトが話題な1年でしたけど、変わろうとしていた女性は何も彼女だけではないことを確認していただければ、と思います。

9.Ungodly Hour/Chloe x Halle

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続いて9位はクロイ&ハリー。これ、今まで当ブログで騒いでなかったんですけど、つい最近知って、大騒ぎしてるところです(苦笑)。ここ数年、一般の年間ベストのリストを見て、聞いて慌てて入れることってここ数年なかったし今年もぶっちゃけこれ1枚だけなんですけど、これに関しては「僕としたことが・・・。僕が騒がないなんて悔しすぎる!」と思ったので急遽、ここにメガン・ザ・スタリオンの代わりに入れました。彼女たちが数年前に「ビヨンセの秘蔵っ子」としてデビューしてたのは知ってたんですけど、姉クロエ22歳、妹ハリー20歳の今作での成長が目覚ましい!端的に言うと、これ、「20年後のデスティニーズ・チャイルド」ですね。おそらく彼女たちは物心ついた時からのデスチャ、ビヨンセのファンだったんだと思いますけど、その自身に染み付いたルーツを2世代後に見事に今の音でやってるんですよね。しかも、すべての曲に関わってるだけじゃなく、2人の単独楽曲が4曲あって。クロイの方にトラックメイカーの才能があるようで、他者提供できるくらいの高いレベルです。残りをケンドリック組のサウンウェイブだったりビヨンセ組のHitBoy、Mike Will Made It、さらにはディスクロージャーといったR&B/ヒップホップ、エレクトロのビッグネームが絡んでいるのにプロデュースされてる感じが全くない。それだけでもすごいんですけど、僕はこれで一番ぶっ飛んだんですけど、ライブが本当にかっこいいんですよね。2人の美しいハモりと掛け合いのテンポの鮮やかさも見事なんですけど、後ろを全員女性のロックバンドに弾かせて、クロイがスタンドマイクにハリーがギター持って歌ったり、そうかと思ったらギンギラのコスチュームで巧みに踊ってみたり、見た目のコーディネイトも完璧なんですよね。彼女たち、次、時代来ると思いますよ。

8.Women In Music Pt. III/HAIM

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8位はHAIMの「Women In Music Pt.3」。彼女たちの場合はこれが3枚目ですけど、2013年のデビューのときに多くの人を驚き、喜ばせた類まれな才能が帰ってきましたね。彼女たちの曲って、親の影響が濃厚だと思われる70sのMOR系のラジオヒット(わかりやすく言えばフリートウッド・マックとかイーグルスとか)のテイストを今の時代のアレンジでユーモアと明るさでカラッと翻訳するのが痛快だったりしたものですが、それが2017年のセカンド・アルバムの際にどこか消えてしまっていたというかですね。後でわかったことなんですけど、この時期、ダニエールの彼氏が癌を患って、エステルが糖尿病の診断を受け、アラナの親友が亡くなったりと、とても明るく振る舞える状況じゃなかったんですってね。本人たちも、そういう暗い気分を振り払って一からやり直したかったからなのか、今回のアルバムは先行シングルが次々と切られていて、それらがすごく評判よかったんですけど、書けば書くほど調子よかったみたいで、結局、先行の曲がボートラみたいな状態で、後からできた曲中心でのアルバムになりました。で、このアルバムですが、ファーストの彼女たちが戻っただけでなく、プロデューサーにあたったロスタム・バットマングリと、まさにダニエールの彼氏のアリエル・レキテシャイドが、すごくひとつひとつの音色こだわって作ってますね。とりわけギターの音の切れとキックとベースの重量感、見事ですね。曲の方も突如として90sのR&Bみたいな曲がいきなり入る遊び心もあったりとか。盟友のヴァンパイア・ウィークエンドと制作関係者も思い切りかぶってますけど、VW同様、「今の時代にロックの音を鳴らす」ことの意義がしっかり考えられたアルバムだと思います。

7.Map Of The Soul :7/BTS

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そしてそして、ここでBTSが登場です。もう、このコロナ・イヤーの2020年を思い返す時に、バンタンのことを思い出さないことはないでしょうね。もう、とにかく、いつでもどこでも本当に登場しましたからね。この多くの人たちが家にこもらざるをえない状況で、自分たちのできる限りに表に出て、パフォーマンスで世界中に新規アーミーを増産させてたと思います。ただ、それもこれも、その快進撃はこのアルバムからはじまったと思ってます。彼らはもちろん、その前からも十分ビッグでしたけど、ポン・ジュノの「パラサイト」がオスカーの作品賞に輝いた快挙から2週間で出たこのアルバムが英米日独仏の5大マーケットで1位になったのは今年の世界のエンタメが韓国イヤーになることを決定づけましたけど、内容も十分それに値するものでしたよ。路線的には「BOY WITH LUV」からはじまった本格的な英米ポップス化路線が軸にありつつも、彼らがデビューのときから得意の3人ラッパーによるヒップホップにはしっかり力が入れられ、そこにプラスしてジョングク、ジミン、テヒョン、ジンの4人のシンガーの見せ場もしっかりあって。彼らの場合、これまでミニ・アルバム形式が目立ってただけに、ヴォリュームしっかり持ってメンバーの個性が出せ、かつ、世界対応の音も主張しつつ、同時にルーツも披露する、総合力でも最高傑作と僕は思います。ただ、まだ世界の音楽媒体、判断に迷いがありますね。まだKポップを軽視しているのか、「どう実力を測っていいかわからずまごついている」のか。多分、その両方だと思うんですけど、ぶっちゃけ言います。歴代でも、こんなすごい技能持ったアイドル・グループなんて誰もいません。歌、ラップ、ダンスでこれまでの、どこの国の誰だったら上回るんですかね?少なくとも僕は誰も思いつきません。それを考えたら、評価なんて難しくないんですよね。

6.Zeros/Declan McKenna

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6位はデクラン・マッケンナ。今年まだ22歳のイギリスのソロのインディ・ロックシンガーであり、僕の今年最大の思わぬ収穫でした。今年の諸々の年間ベストを見て思うのは、夏以降にUKチャートに突如起こったロック勢巻き返しの現象を過小評価しすぎていることですね。スポーツ・チーム、フォンテーンズ、クリーパー、グラス・アニマルズ、ビーバドゥービー、そしてこないだのヤングブラッドまで続々とチャートの5位以内に入ったというのにですよ。その新しい流れの中で僕がもっとも絶賛するのがデクランですね。彼のことは10代でのデビューとなった前作のときから見てますけど、ソングライティングも歌も完全に力不足だったところから、たった2、3年で嘘のような成長ですよ!今回はこのジャケ写からもわかるようにデヴィッド・ボウイからの影響が強いんですけど、思いっきり「Space Oddity」から初期グラムな「Be An Astronaut」から「Scary Monsters」の影響濃い「Daniel,You're Still A Child」まで幅広い時期にわたってフォローしてるのがまずうなります。プラスして、このアルバム、ギター・ロック・アルバムとしてはここ数年でも屈指の出来なんですよ。彼自身、ギター弾きなんですけど、リフの着想とソロの音色センスが素晴らしいんですよ。ブルージーな名曲「Beautiful Faces」はその典型ですけど、彼とバックバンドの美しき女性ギタリスト、イザベラ・トーレスとの掛け合いもすごく聞き応えがあってね。これで一躍全英2位まで一気に台頭したんですけど、もう次から国を代表するロックスターになるとキッパリ言っておきましょう。

5.Letter To You/Bruce Springsteen

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そして5位ですが御大ブルース・スプリングスティーンの最新作。22歳のデクランに続いては71歳のブルース。実にその年齢差49歳。そういう時代なんだなと、しみじみ思います。このアルバムは久方ぶりのEストリート・バンドとのアルバム、ということでもうれしいものなんですけど、それだけじゃなく、このバンドの音としても本当に久方ぶりの「明日への暴動」「闇に吠える街」の頃、そのまんまのロックンロール・サウンドが、かなり正確なニュアンスで戻ってきてるんですよね。これだけでかなりしびれるものがあるんですけど、そのサウンドに乗ってる歌詞がとにかくグッとくるものでね。なにか特別に社会的なメッセージを発しているわけではないんですけど、アルバム・タイトル曲の曲名にも現れてるように、曲の対象としてボスが歌いかけてる「きみ(You)」に対しての誠実な思いがしみじみ伝わる内容。その中には、その相手がすでに「ここにいない」場合も多々あって。「Ghosts」なんてタイトルからあからさまだし。僕はそれこそが、数多くの死者を世界で生んだコロナ下における一番の思いやりなのではないかと思ってすごく胸に刺さるんですよね。そうじゃなくても彼くらいの年齢になると多くの知人を失う年齢でもあるわけで。そこをあえて「Last Man Standing」と、生きて不屈に歌い続ける自身を託したりもして。本当に彼らしい、リスナーへの勇気の届け方です。さらに今年はジョー・バイデンがトランプに選挙で勝った年でもあって。バイデンが当確を決めたスピーチの入場曲がまさにスプリングスティーンでした。そういうわけで、もっと「象徴的な人物」として注目されないと本来おかしのです。

4.RTJ4/Run The Jewels

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4位はラン・ザ・ジュエルズ。これも、2020年ならではのヒップホップのマスターピースですよ。まず、前から言ってるように今年のヒップホップは「オヤジたちの逆襲の年」。彼らこそがその最大の象徴ですね。キラー・マイク、EL-P、共に45歳。それこそ今時のトラップやエモ・ラップを聞いてるキッズのお父さんくらいの世代ですけど、ヒップホップが本来一番失ってはいけない、黒人の置かれている社会的な立場に対する鋭い眼差し、これに関しては若い連中が束になってもかなわない圧倒的な強さがあり、そこで強いリスペクトも集めてきましたが、今回のこのアルバムは、そんな彼らこそがもっとも耳を傾けられるべき絶好のタイミングで出た賜物でしたね。リリースは6月。まさにミネソタでジョージ・フロイド事件が起き、ブラック・ライブス・マターを叫ぶプロテストが毎日のように展開されていたそのタイミングですよ。そこで彼らが、まさにジョージ・フロイドの最後の言葉となった「息ができない」の一節をはからずも含んでしまった「Walking In The Snow」を世に出した。それだけでなく「首を絞めても連中はかねもうけ」(JU$T)、「警察に囲まれたら俺は自殺を選ぶ。やつらに殺されるほど、俺のプライドはくさっちゃねえ」(Yankee And The Brave)」と、身につまされる言葉がたて続きます。そんなリリックに対し、ザック・デ・ラロッチャやジョッシュ・ホーミといったロック畑から、ファレル・ウイリアムズ、2チェインズといったR&B/ヒップホップのスターまで、黒人と白人のデュオがゆえだから可能な多彩なトラックでそれを盛り立てる。懐の深さでは今、もっとも聴かれるべきヒップホップですね。

3.Shore/Fleet Foxes

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3位はフリート・フォクシーズ。一般的にはこれ、週の中頃にいきなりポツンと突然出たアルバム出し、元々がかなりカルト支持に支えられたバンドなので、どれだけ世間一般の話題になったかはわからないのですが、聞いてみて、やっぱりちょっと表現の才能が他のアーティストとはレベルが違うなと改めて感じたので、この順位ですね。このアルバムはロビン・ペックノルドのソロ作に近いとの情報でしたけど、それが内向きに影響はしたのだとは思うんですけど、蓋を開けたら、もういかにも「この人だけ」の世界ですよね。いうなれば、ペット・サウンズの時期のブライアン・ウイルソンがクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングの曲を、フィル・スペクターばりのウォール・オブ・サウンドでやったらこうなった、みたいなね。こういう、歴史あるレジェンダリーな音楽要素にこだわった音の作りしてると、勢い現実の音楽シーンの流れから乖離する恐れもあるんですけど、彼の場合、その出来があまりに他と違い完成度もやたらと高いのでどうしても気にならざるをえない。そんな人、なかなかいません。あと、前作「Crack-Up」が「f御ークロック内プログレ」みたいな非常に手の込んだアルバムですごいんだけどわかりにくい作品だったのに対し、こちらはストレートに曲の良さを生かした分、曲がよりスーッと入ってきやすい作風にもなってますね。あと、ブラジルの音楽ファンとしては、去年の僕の年間ベストにも入れたオ・テルノのチム・ベルナルデスのゲスト参加がうれしいですね。音楽のテイスト的には「ロビンの腹違いの弟」みたいな感じで本当によく似てます。これ、「時代性」は感じさせない作品かもしれませんが、「普遍」としてすごいです。


・・で、いよいよ、ここから上位2枚なんですけど、今年の場合、もう、リリース時のときから「年間ベスト、もうこの2枚のどっちかしかトップ、ありえないよ」とずっと思ってました。もう、リリース時から評価が圧倒的なこの2枚。さあ、どっちが上にくるか。2位からいきます!

2.Fetch The Bolt Cutter/Fiona Apple

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はい。2位はフィオア・アップルの「Fetch The Bolt Cutter」。もう、すごく圧倒的なアルバムでした。これはフィオナの8年ぶりのアルバム。非常に寡作な人なのでこれでもまだ5枚目なんですが、キャリア25年くらい経ちますけど、最高傑作、更新されたと思います。この人も、さっきのフリート・フォクシーズ同様に時代の流れとかとは本来関係ない表現者で、時代が勝手に合ってくるのを待つタイプだと思うんですけど、彼女のデビュー当時の、90s特有のダークで孤独でふてくされた感じが、ビリー・アイリッシュやラナ・デル・レイのアルバムが絶賛された2019年に再評価される機運が実際にあったのですが、フィオナはこの流れを全く意識せず、本人の意思の赴くままに自由に作品を作るだけで、そうした世間の期待に図らずも答えてしまうのだから、大したものです。今回のアルバムなんですが、基本はこの前のアルバムと同じで、ピアノに思う限りの感情を体ごとぶつけて歌う感じではあるのですが、それがいきすぎて時にエキセントリックだった前作よりはいい意味でかなりコントロールされ、それがひとつひとつの楽曲の完成度の高さに結びついてますね。あと、彼女自身の肉感的で原始的な鼓動そのものが音楽性に直結してますね。こういうこと過去にできた人って、キャプテン・ビーフハートとかトム・ウェイツくらいしかいないんですけど、女性の表現者でここまでたどり着けた人、めずらしいんじゃないかな。あと、歌詞はそこまでわかりやすいタイプでもないんですけど、今回はものによってはかなりキャッチーでわかりやすいのも評判ですね。中でも、フィオナが中学のいじめられっ子だった時代に、強くて優しい女の子シャミーカに「アンタ、才能あるわよ」と言われた実話をもとにした「Shameika」は彼女の新たなアンセムになりそうだし、今の若い子にも響きうるものだと思います。

そして、いよいよ第1位。もう、これしかありません!

1.Punisher/Phoebe Bridgers

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沢田太陽の年間ベスト2020、第1位はフィービー・ブリッジャーズのセカンド・アルバム「Punisher」。もう、これは愛すべきアルバムだったし、フィービーがこの2020年代という時代において、間違いなく不可欠なシンガーソングライターになることを宿命付けたような素晴らしいアルバムでしたね。このアルバム、何が良いって、「ここまで正統派なメロディメイカー、久しぶりに聞いた!」って思えるくらい、とにかくメロディ・センスが美しいですね。しかもそれはフォーク、カントリー系の曲でも、ストリングスのバラードでも、インディ・ギターロックでも、なんでも合っちゃうんですよね。しかも、それをつむぐフィービーの、優しく語りかけるような歌い方がまた見事なストーリーテラー的でね。しかも、非常に癒し効果の高い声してるのに、歌詞になると、「たいがいにしないと殺すよ」(Kyoto)みたいな過激なこととか、ちょっとひねくれ気味の疎外感とか悲しみとかを歌ったり。だいたい、このアルバム出てからしばらく骸骨のコスチューム着続けてたような人ですしね。あとSNS上の言動も一瞬意味わからないジョークをよく飛ばしていて、彼女のアカウント、かなりウケてますね。こういう正統派な実力がありながらパンチ効いた人なので人望も強く、ブライト・アイズやヘイリー・ウイリアムズ、The 1975とも共演して知名度も広げてね。でも、そうした共演ならやはりボーイジーニアスが一番で、ジュリアンとルーシーの3声コーラスはこの時代最強の音楽の宝のひとつにもなりうることは、このアルバムの最後の2曲でも証明してますね。あと、テイラーがインディ・フォークに接近してきたことで比較する人がかなり増えてることで注目度が上がってきてもいるようですね。僕もフィービーのファンが「こっちの方が先にそういうことやってるよ!」みたいな感じで挑発するの見てます。そういう意味でも今年はインディ・フォークの年だったのかもしれないなあ。そういうシーンの活性化なら僕も歓迎ですよ。



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