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【みみ #9】“聞こえる”課題を解決する元ソニーマン

羽原 恭寛さん


 羽原さんは、SONYに20年間在籍された。

 機械工学を修めた大学院からメカエンジニアとして入社し、プロジェクトマネジメント、ソフト開発と経験したのが前半10年なら、後半10年はさらに商品企画や新規事業を担う事業開発まで幅を広げ、多様なバック・グラウンドを身につけていった。


 「自分が欲しいものを作りたい」が原動力だった。昔から月に1回はライブに通うほどの音楽好き。例えば2006年、音楽を聴きながら好きな曲やプレイリストを共有したりコミュニティを作るコンセプトでデバイス&アプリ&サービス開発の新規事業を立ち上げた。「いろんなアプリを直感的なユーザーインターフェース(UI)で提供するハードとソフトのプラットフォームを作り上げる。それを通じたコミュニティによるビジネスを世界中に広げる。」という目標を立て、アメリカに持ち込んだ。デバイスを抱えてパートナーを探して回ったのは、いわゆる今を時めくGAFAMなどネット企業。当時はどこでも大歓迎で迎えられた。

 しかし、その後iPhone、Androidが綺羅星のごとくローンチされ、事業は縮小を余儀なくされた。それまで会っていたネット企業の経営層とはアポも取れなくなった。「新規事業とはこういうことなのか」と身をもって知った。
そうした経験から「新しいコンセプトが大成功するのは奇跡に近い。やることやりきって、さらに運も必要」と振り返る。


 そんな羽原さんの原動力が、現在所属する『ピクシーダストテクノロジーズ』に入社して以来、それまでの「自分が欲しいものを作りたい」から「世のため人のために作りたい」に高まってきた。率いる事業は、職場での会議などにおいて聴覚障害者と聴者の間で聞こえの違いが起きずにコミュニケーションをスムーズにするワイヤレスマイク『VUEVO(ビューボ)』。「こういうものが出てくるまで生きていてよかった」というユーザーの言葉に「現場とダイレクトにつながっている」ことを実感している。

 場所が大企業からベンチャー企業に変わっても、昔と変わらずにデバイスを抱えて顧客を回る。昨年には、『全難聴(一般社団法人 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会)』の全国大会。約200人のほとんどが手話やスマホや筆談でコミュニケーションをとる中にも混じって製品を説明した。


 「世のため人のために作りたい」もさらに膨らむ。前述の『VUEVO(ビューボ)』は、会議の場で“聞こえる”ことはサポートできるが、“発言する”ことがサポートできるわけではない。「発信をスムーズにする課題も解決したい」。

 また、“聞こえる”をサポートする技術を聴覚障害者のみならず、聴覚過敏の困りを持ちやすいことが知られている発達障害のある方や、認知症の大きな危険因子とも言われている難聴への課題にも応用できないかと考えている。


 無類の音楽好きでもある羽原さんは他にも、聴覚障害のある方でも抱きかかえることで音楽を視覚と触覚で感じられる球体型デバイス『SOUND HUG』事業も率いている。


 日本を代表する電機メーカーで開発と事業の経験を持ち、同時にそれらを成功させることの難しさも知る音楽好きが、障害のある方や高齢者がもつ“聞こえる”という課題の解決に邁進している。なんか、よくないですか?



▷ ピクシーダストテクノロジーズ


▷ VUEVO(ビューボ)


▷ SOUND HUG


▷ 一般社団法人 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会



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