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【しんぞう #2】健常者と障害者の狭間での「執筆活動」

古川 諭香さん(後編)


前編から続く)


「単心室・単心房症」という先天性心疾患や「無脾症」、「内臓逆位」といった病気を持つ、古川諭香さん。幼少期に周囲の大人から受けた対応で、「差別」というものがこの世にあることを知った。

また、社会人としての一歩を踏み出そうとした時には目で見えない内部疾患を伝えることの難しさに直面。数多くの不採用通知に絶望し、ようやく雇用された会社では持病と上手く付き合うことができず、自信を喪失。結婚を機に勤めていた会社を退職した古川さんは再び会社員になることが怖く、ゲームセンターでパート。1日6時間ほど働いた。

ところが、夫の散財によって家計が苦しくなったことから、パートをかけもち。隙間時間にアンケートアプリを利用し、お金を稼ぐようにもなった。

「アンケートにはレビューや体験談を投稿するものもあり、稼げる金額が高めだったので回答するようになりました。その中で、文章がお金になるという不思議さと喜びを知り、ライターという職業に興味を持ち始めたんです」

そこで、古川さんはクラウドソーシングサイトで実績を積み、ライターデビュー。フリーライターとして、大手出版社や新聞社が運営するウェブサイトに寄稿したり、小説の解説を手がけたりと忙しい日々を送るようになった。

収入が安定しないことや社会保障が心もとないことなど、フリーランスという働き方における課題の多さに悩むことはあるが、体調を考慮して、やりたい仕事ができるこの働き方を古川さんは尊く思っている。

「やっと社会の歯車になれた気がします。仕事を通して繋がった縁も多く、世界が広がりました」

そう語る古川さんは現在も健常者とほぼ変わらない暮らしを送っているが、フォンタン手術の経過は個人差が大きいため、いつ体調が悪化するか分からないという不安を抱えている。そして、そんな自分を「健常者と障害者の狭間にいる人間」と捉え、双方の壁をなくしたいとの思いから障害者の現状を取材し、世に配信している。

「どちらの気持ちも分かるのは、この体で生まれたからこそ。当事者の気持ちをできるだけそのままの温度感で誤解されないように伝えることで、健常者と障害者の間にある心の壁を薄くしていきたいです」

また、自身の半生もコラムで公開。かつて自分が情報に辿り着けなかったことから、先天性心疾患が抱えやすい身近な悩みに対して下してきた自身の決断を配信。次世代を生きる先天性心疾患者が自分と似た孤独を抱えることがないよう、努力している。

「専門的な情報はもちろん大切ですが、私は恋人や友人と過ごす中で悩んだり、就労で困ったりした時に寄り添ってくれる情報もほしかったし、同じ境遇の子とも繋がりたかった。いつか先天性心疾患者やその家族が気軽に情報交換でき、病気のこと以外も話せる場を作りたいです」

なお、古川さんは機能不全家族で育ち、複雑性PTSDという精神疾患も抱えているため、身体だけでなく、心の病にも理解が寄せられる社会になるよう、当事者が抱える生きづらさを取材・執筆している。

健常者と障害者は、見える世界が違って当たり前。だからこそ、双方の気持ちを伝達するパイプ役になりたい。そんな願いも込められた記事に触れ、自分が歩まなかった人生にも思いを馳せてほしい。


▷ 古川さんのコラムサイト



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