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合同会社ARTの地産地消とは何か?


基本情報

会社名:合同会社ARTの地産地消
代表:井上正行
WEBサイト:https://lplcofart.wixsite.com/art-chisanchisyo
連絡先:lplc.of.art@gmail.com

アートを通じて、地域社会を豊かにしたい。
今まで以上に市民がアートを身近に感じられるようにしたい。
アーティストが気持ちよく創作に打ち込めるような環境を整備したい。

こんな思いのもと設立された合同会社の紹介です。
記事を読んでくださる皆さん、本当にありがとうございます。
今後とも末長くよろしくお願いします。

以下、私の思いが書かれています。
お忙しい方は、直接「お知らせ」のページまで遷移してくださいませ。

ARTの地産地消とは何か?

 「ARTの地産地消」とは何か。この言葉を会社名にしたきっかけは、私が2019年に携わった企画展「アートビューイング西多摩2019 ARTの地産地消」(青梅市立美術館)にある。この企画は青梅や西多摩地域で活動するアーティストを地域住民に紹介することを主としている。なぜ紹介することになったかといえば、地域住民たちは身近な場所でアーティストが生活し、活動していることをほとんど知らないと考えたからである。西多摩地域に住んでいる何人かの友人や知人に「青梅市立美術館に最近いつ行った?」と問いかけた時、「青梅に美術館があるの?」「小学生くらいの時に行った気がする」といった反応がほとんどだったのだ。
 この企画は、2019、2021、2023年と実施された。当時の展覧会カタログには次のように書いた。

「アート(Art)」と「地産地消」という言葉は結びつかない。地産
地消は、あくまでも農水産物に向けて使われる言葉である。狭義に
は地域で生産された農水産物をその地域で消費するという意味だ
が、実際にはより広い意味が含まれている。単に使ってなくしてし
まう意味での消費はそこでは行われない。

アートビューイング西多摩2019 ARTの地産地消」展覧会カタログ、2020年発行 より

どこででも展示できるような内容ならばその展覧会はその場所で行う必要があるのだろうか。この問いに答えるためには展覧会を成立させるための条件を提示する必要がある。その条件とは、「“身近なクリエーション”(身
近にある芸術家の創作活動)を、市民をはじめ様々な人々に気づい
てもらうこと」である。

当時私は、地産地消という言葉に含まれる「消費」に注目していた。社会学者ボードリヤールの言葉を借りて、現代人が消費する対象は「ものではなく意味どうしの差異である」とし、この企画展は他の企画とはどういった意味で異なっているのか述べた。今思えば、美術の展覧会自体それ自体が「消費」の対象になっているのではないか、という問いかけもしていたのかもしれない。同時に当時の私は自身の企画が他と比べてどう違うのか、を示すことに注力していたのだと思う。では、何がどう違うというのだろうか。カタログでは、展覧会を成り立たせるための原則を提示している。

「作家と鑑賞者は作品を介して関係性が築かれると同時に場所
(地域)を介して関係性が築かれる。そして、これらの関係性の
ためには対話的な雰囲気が必要だ」

少々分かりにくい表現だが、作家、作品、鑑賞者の関係性は「展示空間」内で築かれ、展示空間は「地域」と関係しているという2種のあり方について述べており、それら2つの関係性を成り立たせるものは「対話」である。そして対話は、偶然の出会いによって生じているとしている。
 この文章を書いてからしばらく経って、そもそも展示空間すらも数ある場所のうちの1つにすぎないと考えるようになった。展示空間が存在するのはある期間に限定されており、それだけでなくもっと恒常的な場所でアートと出くわすようになるのが良いのではないかということである。つまり、いつでもどこでも、アートと触れ合える状態を用意すること、それが「ARTの地産地消」なのではないかと考えるようになった。

ARTの地産地消を実行する

 「ARTの地産地消」とは具体的にどこで、何を行うことなのだろうか。私は、地域のアーティストが参加する美術展を企画するうちに、なぜこの場所で作品が生まれたのか、ということに大きな関心を抱くようになった。

しかし、企画を実行していく中で次第になぜ私はアーティストにARTの地産地消運動を担わせているのだろうかと思うようにもなった。つまり、私の願望を達成するためにアーティストを利用しているような気がしてきたのである。何も生み出せない自分が人に何かをさせるなんて、とんでもない欺瞞ではないかということである。
 とはいえ、私は芸術系の大学を出ていない。では、何を生み出すことができるのか。そう思っていた時に思いついたのが詩集を作ることだった。といっても、ずっと詩を書いていたわけでもないし、誰かに習ったわけでもない。でも、言葉はずっと使ってきたし、言葉について考えることは好きだった。妙な思いつきやフレーズをSNSに上げることもあった。そのせいか、「Twitterポエマー」などと揶揄されることもあった。さらに、前職では絵本を取り扱うことが多く、素朴で誰にでもわかる味わい深い言葉の並びには親しんでいたし、どこか憧れもあった。よしならば、言葉の束を形にしようじゃないかと思いついたのだった。それが詩集を作るざっくりとしたきっかけである。
 青梅生まれ、青梅育ちの人が、青梅で書いた詩を、青梅の文字(精興社書体)でレイアウトして、青梅の印刷会社で制作し、青梅の人たちとお話ししながら売ってみよう。これが自分なりのARTの地産地消だと思い、詩集を作
った。

そして、それらを私が懇意にしているカフェやBARに置かせていただき、なるべくお店に行って、私の知り合いと対話しながら手売りした。すると、販売してから数ヶ月で100冊以上も売れたのだった。それが多いのかどうかわからない。でもまさか、自分が作ったものが100人の手に渡るとは思わなかった。彼らからは「詩人だなんて知らなかった」「初めて詩集を買った」「青梅に詩人がいるだなんてね」「青梅で本を作れるんだ」などコメントを貰った。彼らは、詩という表現行為よりも、地元の人が地元のものを使って地元で何かを作り、販売しているということに興味があるようだった。そして私は詩という一般の人たちにとってはあまり馴染みのない表現が、地域のつながりによって、ゆっくり広まっていく光景を目の当たりにした。
 私は、やはりこれこそがARTの地産地消なのだ、と思ったのだった。

創造の拠点 「THE ATELIER」

 なぜ、あそこではなく、ここなのか。私があらゆる創造行為に向ける問いである。私が活動する西多摩地域には、さまざまなクリエイターたちが生活し、日夜創作活動に励んでいる。なぜここで創作をするのかと聞くと、よく耳にする答えはこうだ。「自然が豊かで、静かだから」「都心に比べて家賃が安いから」。これは、西多摩地域が誇る大きなポテンシャルである。しかし、行政や自治体はそれに対して十分なアプローチが取れているとは思えない。
 では、どのようなアプローチが必要なのか。まず場所が必要である。会社ARTの地産地消を立ち上げるきっかけになったのは、青梅駅から歩いて30秒くらいのところにある空きスペースである。そこはかつて、長らく青梅市議を務めていた方の選挙事務所だった。そこが利用できるかもしれないと聞き、飛びついた。

THE ATELIER内部
THE ATELIER内部

 空き家や空きスペースは全国的な課題である。以前、とあるシンポジウムでこんな話を聞いた。「現代の日本社会は先行きが見えません。だけどはっきりわかっている未来があります。このままいけば必ず人口が減るということです。」メディアでは長きにわたって少子高齢化を取り上げてきたし、様々な書籍や記事で人口減を取り上げてきた。だから、頭ではきっとそうだろうと思っていたが、いざこういう言われ方をするとショックだった。人が減り続ければ、空き家や空きスペースが増えるのは当然である。どうにかしてこの課題を解決しなければいけない。なぜならば、人がいなくなるということは、アーティストもいなくなるということだからだ。私はアートが好きだ。好きなものが消えていく様子をただ黙っているのは我慢がならないのだ。
 とはいえ、毎年美術系大学や専門学校からはアーティストが輩出されている。若いアーティストたちが、自分専用のアトリエを持つことは難しい。彼らのほとんどは、大好きな創作活動を成り立たせるために、仕事をしなければいけないからだ。そんな彼らのために、創作の場所を提供したいと思った。
 地域社会がアーティストに活動の場を提供する試みは以前からある。一般的にアーティストインレジデンスと呼ばれている。THE ATELIERを検討する際に、大変参考になったし、今も相当参考にしている。しかし、このような事業は期間限定であることがほとんどだ。ちゃんと調べていないが、3ヶ月から1年くらい滞在することが多いように感じている。

なぜ、期間限定なのだろうか。もちろん、アーティストインレジデンスとはそういう試みなので、仕方がないといってしまえばそれまでである。以前、実際に事業を展開する公共団体に期間について聞いたことがあった。結論からいうと、特に決まりはないようだった。また、別の団体の職員からは、「数ヶ月の滞在に適したアーティストとそうでない人がいるだろう」という声も聞いた。私がイメージする地域は、パリのモンパルナスやそれを受けて成立した池袋モンパルナスや椎名町のトキワ荘などである。芸術家が地域で泣いたり笑ったりしながら、一生懸命創作活動に励んでいる。そして、その様子を地域住民が優しく見守っている。そんな日常が営まれる地域を築き上げたいのだ。そのためには、期間限定では物足りない。それが私の正直な感想である。

 だから、今回使っていただきたいアトリエの利用に期限を設けていない。そして、複数人で利用してもいい。もちろん、私たちと一緒に地域の人たちと関わってもらいたいと思っているが、それは強制ではない(要項には書いてしまったが・・・)。
 アトリエを使用してくれたアーティストから「ここだからこそ、創作できる作品がある」という声が聞ける日を楽しみにしている。そのために、全力で彼らをサポートしていくのが、私たち合同会社ARTの地産地消の役割である。

今後の展望

 ARTの地産地消を全国で展開することである。青梅や西多摩地域だけで行う活動だと感じる人がいるかもしれない。それは違っている。私の理想は、北海道でも沖縄でもどこでもARTの地産地消が行われており、いつ行っても何かしらのアートと触れ合える状況を生み出すことである。そして、アーティストたちには、常に創作場所を選べるような状態を提供したい。空き家や空きスペースの募集状況をいつでも確認できるアプリケーションを開発してもいいかもしれない。

お知らせ

アトリエ利用者募集中!

 
2024年4月1日現在、「THE ATELIER」の利用者を募集しています。2024年の8月1日以降から利用可能です。見学するだけでもとても嬉しいです!

必ず募集要項をお読みの上、ご応募ください。

イベント開催!


2024年5月11日(土)に国立奥多摩美術館で活動する美術家の佐塚真啓氏を招いたトークイベントを実施します。
5月25日(土)には、音楽家の金井隆之氏を招いたトークイベントも行います。2人とも青梅に居住しながら創作活動を行うアーティストです。
THE ATELIERで開催しますので、見学も兼ねてぜひいらしてください!

応募はこちらから

詳細
■第1回ゲスト:佐塚真啓氏
日付:令和6年5月11日(土)

■第2回ゲスト:金井隆之氏
日付:令和6年5月25日(土)

いずれも
時間:14:00開始 15:00終了予定
場所:THE ATLIER(青梅市本町130−1ダイアパレスステーションプラザ青梅204)
定員:15名
参加費:1000円(資料代)当日お支払い
主催:合同会社ARTの地産地消
https://lplcofart.wixsite.com/art-chisanchisyo
lplc.of.art@gmail.com
0428-84-0678(喫茶ここから内10:00-18:30/担当:風間真知子)


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