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『自傷行為』

self-inflicted wound
Charles Bukowski

やつはスタインベックとトマスウルフについて話しをし2人を掛け合わせたような文章を書いた
オレはフィゲロア通りにあるホテルに住んでいた
近くにはバーが所狭しと並んでいる
やつは郊外の小さな部屋に住んでいた
オレたちは2人とも作家になろうともがいていた
オレたちは市民図書館で会い、石のベンチに座り話しをする
やつはオレに短編を見せた
よく書けていた、
オレの短編よりもはるかに優れていた、
やつの短編にはオレにはない静寂さと力強さがあった
オレの短編は鋭く尖っていて、粗く、自傷的だった

オレはやつにオレの書いたものをすべて見せた
やつはオレの酒豪ぶりと世俗への態度に感心していた

少し話しをした後オレたちはクラフトンのカフェテリアに行きその日唯一の食事をした(1941年には1ドル以下だった)
それでもオレたちは健康だった
オレたちは仕事をクビになり、仕事を見つけ、またクビになる
たいていオレたちは働いていなかった、オレたちはいつもニューヨーカーやアトランティックマンスリーやハーパーズからすぐに定期的なカネを受け取れると思い描いていた

オレたちは何の未来も描いていない若い男たちの集団とつるんだ
だがやつらには勇敢で無法者としての魅力があった
オレたちはやつらと酒を飲みケンカをしロクデモナイほど素晴らしい時を過ごした

そうこうするうちやつは海兵隊に入った
「おれは自分に何ができるか試したいんだ」やつはオレにそう言った

やつは入隊した:ブートキャンプのすぐ後に戦争が始まりその3ヶ月後にやつは死んだ
オレは自分自身に誓った
いつの日か小説を書き上げそいつをやつに捧げようと

オレは5つの小説を書き上げ、そのすべてを別のやつらに捧げた

なあ、ロバート・バウン、アンタの言った通りだった、
アンタが1度オレに言っただろ、「ブコウスキー、おまえが口にする半分以上のことは聞くに値せん」

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