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『2人の作家』

two writers
Charles Bukowski

近頃、皮膚癌に悩まされていて
そいつを焼き払うために医者に通っている

奇妙な待合室
芸術関係の分厚い光沢のある雑誌で溢れている
絵画、彫刻、その他もろもろ

その医者に通って3度目か4度目のころ
やつはオレが作家だと嗅ぎつけた

やつは芸術の博士号かあるいはそんなものに取り組んでいた
そしてやつはオレに膨大な量の論文を渡した

「読んでくれ、ぜひ読んでくれ、どう思うか言ってくれ」

「なあ、ドク、アンタは理解しないだろうが、オレが書いているのは単純なものだ」

「そんなことは問題じゃない、読んでくれ、ぜひとも読んでくれ、、、」

オレはそれを家に持ち帰った
375ページ、隙間なくびっしりだ

ある文明が別の文明を制服するとどうなるか
征服者たちは自分たちの芸術をそこに植え付ける:
建物、彫刻、神社、その他あらゆるもの

ある程度は興味を持って読んだ
深くまで研究しているし現地にまで行って調査もしている

オレに口出しできるようなものではなかった

論文を医者に返したときオレはそうやつに言った

「どう思ったかだけでも言ってくれ?」

「いいんじゃないか、ああ、大したもんだ」

「他には何かないのか?」

「オレにはわからないな、、、」

「頼むよ、なら燃やしてしまうしかない」

やつはそうした
肉の焼ける臭いがした
えらく時間がかかってるように思えた
そしてやつは燃やし終えた

「あんたの本はいつ持ってくるんだ?」

「次に来るとき持ってくる」

オレは部屋を出て
受付の女にメディケアで支払いを済ませた

「彼は書くたびに良くなっているの、」女は言った

「オレだってそうだ、」オレは言った

オレは外に出て陽に当たらないように
駐車場に停めてある車の方へ向かった

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