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代々木散歩

新緑が目立つ代々木公園。ずっと5月だったらいいのに。


この日は「散歩がしたい!」と友人を誘って代々木へ行った。何度か代々木には行っているのだけれど、歩くのが楽しい街だと感じる。わたしは何故か飲食店を眺めるのが好きで、代々木には歩いていると入ってみたくなる飲食店たちと出会う。

人や建物で圧迫された感じはなく、道はひらけていて、ごちゃごちゃしていない。かといって、有楽町や三越あたりのような整った高級感が醸し出されているわけでもなく、いい感じに落ち着くエリアなのだ。

友人が寝坊したというので30分くらい代々木上原駅の周辺をうろうろする。すると、高校の同級生らしき人物(絶対そう)を見かけた。同級生は颯爽と歩いているし、わたしも全く予定していないところで知り合いと出くわすのは得意ではないので声はかけなかった。

Fireking cafe

友人のRが到着した。わたしもRはお昼を食べていなかったので、代々木上原駅近くにあるファイヤーキングカフェで遅めのお昼ご飯を食べた。

腹ごしらえが終わったら、散歩のはじまりだ。代々木上原から代々木八幡を通って代々木公園まで歩く。

「代々木上原いいね!ここに住もうかな」とRが言った。一昨年くらいから「一人暮らしする!」とRからは50回以上は聞いている。

どんな流れでそうなったのか忘れてしまったが、歩いている途中、フランス語風に日本語を話すRがおもしろかった。本当にそう聞こえるからすごい。Rはモノマネがうまいのだ。

代々木八幡駅近くの高架下に差し掛かったとき、「ここ、わたしの推しがインスタに載せた写真を撮影してた場所だ!!ここだったんだ〜!」とRが興奮気味に話す。最近、インスタで見つけた一個上の高身長なイケメンが推しらしい。

わたしたちはどんどん先を歩き、代々木公園近くにあるフグレントウキョウにはいった。コーヒーを飲みながら、代々木公園でまったりしようという企みだ。

Fuglen Tokyo Tomigaya

この日は肌寒かったので、わたしはホットのカフェラテを頼んだ。

Rはなぜかダブルショットでアメリカーノを頼んだ。「お湯を注ぐので、ストップって言ってください」と、店員さんから予想していなかった一言が飛んできた。

それを頭で処理しきれなかったのか、Rはカップの半分くらいで思わず「ストップ」と言ってしまった。そう言ったRの顔は見れなかったが、きっと慣れていないシステムに内心驚きながらも、どうにか済ました顔をしていたに違いない。

「初めて言われたから、間違えて早めにストップって言っちゃった(笑)」「お湯を足してもらったら?」と言ったが、Rは頑なに「いや大丈夫」と答えた。ダブルショットにカップ半分しかお湯が注がれなかったコーヒーを一口飲むと、苦そうな顔を浮かべた。そりゃそうだ(笑)。

公園のなかを歩き、ベンチを見つけたので腰をかけた。

ベンチからみあげるとこんな感じ

Rが物件を調べはじめた。「全然住めるわ。会社からも近い! この周辺に住めば、いつでもここに来れるんでしょ〜」と目を輝かせていた。「連れて来てくれてありがとう〜!」と言い、Rは今まで代々木にあまり行ったことがなかったみたいだが、気に入ってくれたようだ。

早稲田も一人暮らしの候補地に上がっているらしく、「早稲田周辺は周ってみたことあるの?」と訊くと、「ある! あれ? ないや、ないない」と言ったので、わたしは笑った。候補地が多過ぎて、その地に訪れた記憶が捏造されるのはよくあるらしい。

「代々木に住んでいる人は、きっとたこやきを食べる時に白ワイン飲む人だよ」と言って、そこまで想像豊かな人が友人でわたしは幸せである。

代々木公園まで歩いたわたしは満足した。なので、このあとRと過ごせるなら、どこへ行ってもよかった。Rは予ねてから欲しかった財布があるらしく、青山にあるお店まで行くことになった。代々木から徒歩30分。遠いよねと心配するRに歩いていけると踏んだわたしは「歩こう。いけるいける」と言った。

18時前だったため、狐色の夕日がビルと車道脇の木々を照らし出しだした。都会でも、都会でなくても、夕方の時間帯がわたしは好きだ。もちろん代々木とは違い、人々が波をつくるように歩いているのでムスカ大佐のセリフが頭をよぎった。

代々木から表参道まで歩く道は知っていたが、Rが案内してくれた表参道から青山までの道は、今まで通ったことがなく、胸が高鳴った。知らない道を歩くのはウキウキする。歩いていると有名人がよく来るという高そうなショップが並んでいる通りを、小学生くらいの女の子が荷物を持たずスクーターに乗って走り抜けた。

お店に着くとお目当ての財布が見当たらなかった。上の階にも上がったが置かれていない。スタッフさんに尋ねるとどうやら下の階に置かれているとのこと。よく見ると、レジ奥のショーケースにお目当てとは色違いの財布が置かれていた。欲しかった色はお店の裏にあるようだ。在庫がないわけではなかったので、Rとわたしはホッとした。

スタッフさんは色違いの財布を裏から4つ持ち出してきた。ショーケースにあるものと合わせて財布は5つ。こうなると悩むに決まっている。「どっちがいいかな〜」と事前に決めていた色と違う色とのあいだで揺れるRに対して「え〜むずかしいね〜」と共感するだけした。わたしは余計なこと言わない方がいいと思って意見は述べなかった。しばらくして、Rは元々買おうとしていた色に最後は決めた。財布が買えて、とてもうれしそうにお店を出た。

わたしたちは帰宅するのに都合がいい渋谷駅まで歩いた。久しぶりに友人にも会えて、たくさん歩けたいい日だった。

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