ストーカー被害に遭って、作家として限界を感じたこと(今日のお話は暗いです。笑えるトコロは1つもありません)

 正直、知りたくなかったです。一生知らずにいたかった。

 わたしは作家です。言葉で仕事をしています。言葉の力を信じています。言葉で誰かを笑わせたり、愉快な気持ちにするのを生業(なりわい)にしています。

 ストーカー被害に遭った際、加害者に伝えました。

「あなたのことが怖いです。あなたが怖いから、わたしに関わらないでください」

この言葉は、ぜんぜん相手に伝わりませんでした。だから被害は続きました。こりゃアカンと警察へ相談しました。刑事さんたち(いずれも男性)はとても親切で迅速に対応してくださいました。おかげで速やかに警告がなされ(それでも2週間もかかった!)、加害者は「今後はソウに関わりません」と念書を書かされたらしいです。だからたぶん、もう被害に遭わないと思います。たぶん。

刑事さんたちに何度も言いました。

「わたしは怖いんです!」

ぜんぜん伝わりませんでした。口ではわかっていますと言ってくださいますし、それは本心だと思います。でもぜんぜん違う次元で理解してくださっている。

これ、身体が女性(心の性別は問いません)なら、一発でわかってくださると思います。そして身体が男性(心の性別不問)は、一生わかってくれないと思う。言わなくてもわかってくれる方と、言葉を尽くしてもわかってくれない方がいる。

わたしは怖いから、ストーカー行為をやめてほしかった。法的に表現すると「自身の生命や財産をおびやかされる行為がうんぬんかんぬん……」です。一応はストーカー対策の仕事をしていた(以前は相談員でした)から、法的なことも頭では理解しています。でも、そういうコトじゃないねん。本能的に怖いねん。脳じゃなくて脊髄反射やねん。

「何をされるかわからない。抵抗しても力ずくでやられたらどうしようもない」これが怖さの内容です。自分はイヤだと言っても腕力でやられたら抵抗できない。たとえば家に押し入られたり、拉致られたりした場合、腕力でやられたら抵抗できない。わたしはそれが怖かった。すごく怖かった。

でも加害者にも、刑事さんにも伝わりませんでした。なぜなら彼らは腕力があるから。彼らは力で負けるという状況を知らないから。だからいくら説明しても伝わりませんでした。

身体が女性(心の性別は不問)なら、一度くらいは力で負ける経験があると思います。自分ではイヤだと思っていても、抵抗できずに屈してしまう。そして二度と同じ目に遭いたくないと思うでしょう。だからそういう方に「怖い」と言うと、すぐわかってくださる。だって同じ恐怖を感じたことがあるから。

う~ん! ずっと例えを考えているのですけれど、「蛇」なら伝わりますか? 蛇って生理的に怖くないですか? でも世の中には蛇が好きな方もいらっしゃるし、わたしも種類によっては「カワイイ♡」と思うので、蛇はちがう気がする……。それでは「ミスターG」はいかがでしょうか? 太古から生き延びている黒くてツヤツヤしたアイツです。アイツの動きは問答無用で気持ちがわるい! でも北海道にお住いの方はアイツを見たことがないでしょうし、アイツを食べる(!!)国もあるのですよね……。怖いという気持ちが伝わる表現をずっと考えているのですけれど、万人を納得させる例が見つからない。

ストーカー被害はなくなった(と思う)ので今回は結果オーライなのですけれど、言葉を尽くしても通じないという経験は、作家であるわたしの人生に暗い影を残しました。ストーカー被害でも傷つきましたけれど、言葉で説明できない経験は別の意味で深く傷つきました。

わたしは作家です。言葉で仕事をしています。言葉の力を信じています。でも言葉の力が通じませんでした。わたしが信じている言葉は、わたしを助けてくれませんでした。こんなこと、知りたくなかった! 一生知らずにいたかった!!

でも……それでも……わたしは言葉の力を信じていたいです。わたしの紡いだ言葉で誰かを幸せにしたり、楽しい気持ちになってほしい。今回の経験で通用しない場合もあると知ってしまいましたけれど、それでもわたしは自分と言葉を信じて作家として生きてゆきます。

そしていつか「ソウさんの言葉で救われました」誰かがそう言ってくれたら、わたしも救われると思います。その日を信じて、生きてゆきます。



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