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硯考 硯のはたらき 下墨と発墨

今回は硯のはたらきについて考えてみましょう。

墨はどのようにして磨れるのかと考えるとき、おろし金のようなものを思い浮かべるかもしれません。おろし金は物を削って下ろします。
では硯はどうでしょう。おろし金のように墨を削って下ろしているのでしょうか?

硯は単に墨を削っているだけではありません。墨は単に下ろせばよいかと言えばそうではありません。細かく下ろさなければなりません。そのため硯には大きく分けて二つの働きがあります。

一つ目は、おろし金のように、鋒鋩という突起が墨を削り落としながら下ろすというはたらきです。(下墨)

二つ目は、下りた墨を細かく分解して分散させるというはたらきです。(発墨)

墨を磨ること(磨墨)はこのような二つの働きから成り立っています。
ですから、良い硯の条件は、墨がたくさん、細かく磨れることになります。

もう一つ良い硯の条件を加えるとすると、それは寿命(耐摩耗性)です。硯は長く使用していると鋒鋩が摩滅して磨れなくなってしまいます。この場合、再度目立てを行えば元通り磨れるようになります。

以上のような3条件がそろった硯というのはめったになく、あったとしてもとても高価です。ふつうはどれか一つの特性が欠けています。万能選手はほとんどいません。
ですからふつうは書作に合った使い分けが必要になってきます。硯を使いこなすには、それぞれの硯の個性を見極めることが大切でしょう。


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