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【昭和50年男〜小室哲哉がオレたちにかけたマジック】一部無料公開[1]後半

TK.STAFFです。編集部さんのご好意により一部無料公開して頂いた昭和50年男、第一弾は「音楽を絶えずアップデートし続けるTKが仕掛けたマジック」。前半いかがでしたでしょうか?

それでは後半です。

昭和50年男〜小室哲哉がオレたちにかけたマジック

■音楽を絶えずアップデートし続けるTKが仕掛けたマジック(文:ふくりゅう)後半

小室が作った現代の音楽シーンのフォーマット

小室が開発協力したヤマハのスピーカー付きシンセサイザー「EOS」の影響で音楽を始めたクリエイターが多いことにも着目したいPerfume、きゃりーぱみゅぱみゅ、CAPSULEのプロデュースで知られる中田ヤスタカ、ヒャダインこと前山田健一、ryo(supercell)、nishi-kenなど、枚挙に暇がない。

さらに言えば、日本におけるダンスミュージックのパイオニアであり、洋楽的要素を絶妙にポップミュージックに取り入れたJ-POPオリジネーターである小室哲哉。発明とも言える少数ユニット構想やDJ&ダンサー編成スタイルの発案。シンセサイザーやコンピュータによる打ち込みサウンド、曲とアレンジを同時に創作するトラックメーカー文化など、小室の影響が現在の音楽シーンのフォーマットを形作ったことは言うまでもない(それも現在進行形なのだ)。

そして、繰り返すが世界的にみても作詞・作曲・編曲、時にはミックスまでも自ら手がけ、さらに、ライブ演出やプロモーション、ビジュアル面まで含め一気通貫にプロデュースした音楽家は小室哲哉しかいない。

一般的にTKソングといえば打ち込みのダンスミュージックが思い浮かぶかもしれない。小室の音楽性としては骨太なメロディやリフに耳を奪われがちだが、ルーツをひもとけば、多種多様としか言いようがない雑多さをもっている。

たとえるならば、エレクトリック・ライト・オーケストラ、ハワード・ジョーンズなどに代表されるシンセサイザーが活躍するエレクトロポップや、10ccやバグルスに代表されるモダンポップなどニューウェイヴ文脈からの影響。そして、デュラン・デュランや、トンプソン・ツインズ、トーキング・ヘッズなど、ファンキーなブラック・ミュージックを白人がチャレンジしたホワイトディスコ/ファンク。さらに、TMのリミックス・オファー(※3)を受けた世界的音楽プロデューサー、ナイル・ロジャースとの交友も興味深い。

プリンスや、楽曲提供の噂もあったマイケル・ジャクソン、マドンナらとルーツを同じくするモータウン文化からの影響(皆1958年生まれで同い年)。続くジョルジオ・モロダーに代表されるユーロディスコの進化。TKブランドの方向性を決定づけたPWL(※4)に代表されるユーロビート、そしてC+C Music Factoryに代表されるハウス、レイヴ期のテクノ、プロディジーやケミカルブラザーズによるブレイクビーツを効果的に活用したデジタルロック、そしてジャングル、マッシヴ・アタック(※5)などのトリップホップ、アンビエント、トランス、EDMなど、時代において進化し続けデジタライズされたダンスミュージック/エレクトロミュージックのイメージ。

相反するかのように、エマーソン・レイク・アンド・パーマーなどテクニカルなプログレッシヴ・ロック、ジャーマン・プログレへの憧れも色濃い。

そこに通じるように、バッハやメンデルスゾーン、チャイコフスキーなどクラシックや、映画音楽を手がけたデイヴ・グルーシン、ミュージカルにおけるアンドリュー・ロイド=ウェバーからの影響も大きい。

T・レックスやデヴィッド・ボウイなどのグラムロックや、カジャグーグーなどニューロマンティックからの洗礼も大きかった。ハードロックにも興味は広がり、時にはカバーも試みた。90年代以降は、敬愛していたソウルミュージックやAORから進化してR&B、ヒップホップ、ラップミュージック、ジャズへと音楽性は広がった。

そして、意外にも吉田拓郎などフォークソングからの影響も公言している。リスナーとしては、実は山下達郎からの影響も大きかったという。シティ・ポップなキラキラ感だ。その背景には、生粋の音楽好きであった一面が垣間見られるだろう。

ストリーミングサービスの普及以前から、小室のハードディスクにはあらゆるジャンルのあらゆる楽曲が独自の感性、フィルターによってアーカイブされていた。小室哲哉は、プレイヤー耳のみならず、リスナー耳にも長けていたのである。

これら、小室が摂取してきたさまざまな音楽からTKヒッツは生まれ、昭和50年男世代の音楽的嗜好をアップデートし続けた。そう、小室哲哉はリスナーにとってもプロデューサーであり先生だったのだ。

※3…1989年発売の『DRESS』は、ボーカルトラック以外の音を新たに作り上げるべく海外の有名プロデューサーに依頼して制作された。
※4…音楽レーベル。80年代を代表するプロデューサー・チーム。マイク・ストック、マット・エイトキン、ピート・ウォーターマンの三者が運営していた。
※5…前身ユニットのワイルド・バンチ時代にTMの楽曲「Passenger ~ A Train Named Big City」に参加している。

パイオニアとしての歩みを止めないTM

TMが、常に未来を予言してきたことにも注目したい。88年にリリースしたアルバム『CAROL〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991〜』では、コンセプチュアルな作品として、メンバーである木根尚登執筆による原作小説を通じて、現在でいうメタバース(※6)のような仮想空間を〝ラ・パス・ル・パス〞としてクリエイトした。

物語の主人公キャロルは、自身が通う学校の教室にあったメタバースへと直結するグラフィック・コンピュータ・システムを使って電脳空間へダイブする。ポイントはここだ。〝ラ・パス・ル・パス〞という世界には、アバター化したようなTMの3人が存在した。

現在へと通じるエンターテイメントの未来を予見した物語を30数年前に描き、かつミュージカルのエッセンスを取り入れ斬新なメディアミックスのスタイルで全国ツアーとして具現化していたのだ。そのツアーファイナルでは、全国10ヶ所で衛星を使って同時中継という、現在のライブビューイングを先取りしていた驚きの事例もある。しかも89年に、だ。

あれから幾度となくパイオニアとしてのチャレンジは続き、2022年夏には、全国ツアー『TM NETWORK TOUR 2022〝FANKS intelligence Days〞』を大成功させた。23年に結成40周年を迎えたTMの遺伝子を感じられる音楽プロジェクトが、この数年に同時多発的に勃発していることも興味深い。

物語性あふれるテーマパーク的なコンサートの楽しみ方といえばSEKAI NO OWARI。テクノロジーを駆使したサラウンドやビジュアル表現など最先端の音楽表現といえばサカナクション。自作の小説を含むマルチメディア表現といえばボカロP・じん(自然の敵P)。それらすべてのアプローチを、TMは80年代に予言者のように先行して実現していた。

小室が音楽シーンへ与えた影響は大きい。TM時代にはアニメソングの在り方を変えた二段階イントロが画期的な「Get Wild」、シャアとアムロの物語を終わらせた「BEYOND THE TIME(メビウスの宇宙を越えて)」をヒットさせた。ユースカルチャーを変えた角川映画『ぼくらの七日間戦争』主題歌「SEVEN DAYS WAR」と傑作サウンドトラック。

TMファミリーとも言える、バンドのサポートメンバーから派生した、B’z、FENCE OF DEFENSE、accessを生み出した系譜を感じるフックアップ構造。YOSHIKIとレーベル間を越えて結成した、早すぎたプレミアムユニットV2の存在。

楽曲制作においてもマックス・マーティンの〝トラックアンドフック〞に先駆け、シンクラビアなど、当時1億円以上したシステムを活用してデータによるハードディスクレコーディングにいち早く取り組み、楽曲パーツを組み替えるなど、複数作家による分業制作へとチャレンジした共同制作の実施。海外で流行する洋楽サウンドやダンスミュージックのリズムを、日本のポップシーンへ独自のセンスで翻訳したローカライズ手法。アイドルをポップアイコン化、アーティスト化する独自のプロデュース手腕。

さらに、90年代、いち早く取り組んだホームページ「PlanetTK」運営、テレホーダイ時代に実現させていたネット上でのライブチケット販売、早すぎたフリーダウンロード施策。

さらに、高音質レコーディングやハイレゾ配信、AI活用や、コンサートの1曲目をメッセージ付きでNFTとして事前に限定販売するなど、テクノロジー活用の先駆者=パイオニアであることは今もなお変わらない。

時代を超えて音楽をアップデートし続ける小室哲哉によるマジック。小室哲哉とは、CD総売上枚数1億7千万枚以上を記録するなど、昭和〜平成〜令和を代表する時代の寵児であり、前人未到の音楽家なのだ。そして、その活躍や作品は2023年の今もなおサステナブルに持続している。僕らは小室哲哉のマジックにずっとくびったけなのである。

※6… メタバースのルーツはSF作家・ニール・スティーヴンスンのサイバーパンク小説『スノウ・クラッシュ』(1992年)における架空の仮想空間サービスの名称であると一般的に言われる。

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以上「音楽を絶えずアップデートし続けるTKが仕掛けたマジック」でした。

そして企画からサポートしてくれた"小室哲哉オフィシャル音楽コンシェルジュ"ふくりゅう氏による70曲のプレイリストも公開中!こちらのプレイリストを聴きながら昭和50年男とのひと時をお過ごしくださいませ🙌

Infomation

■【発売中】昭和50年男〜小室哲哉がオレたちにかけたマジック

■【5月27日開催 TK SONGS RESPECT NIGHT】小室哲哉の音楽に、愛と感謝とリスペクトを込めて...DJ KOO、hitomi、マーク・パンサー(globe)が集結

■小室哲哉の音楽世界を直接感じることのできる場所TETSUYA KOMURO STUDIOがオープン!このSTUDIOは小室哲哉とみなさんが 一緒に創る特別な場所です♪


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