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【広報基礎】広報・PRの効果測定における考え方と手法

※このnoteは、 #LAPRAS夏の自由研究リレー の8月14日分として執筆しました。(全然研究ではないですが)

PRの効果測定には多くの担当者が頭を悩ませています。
これは企業規模に関わらず、また日本国内だけの問題ではありません。広報・PR担当者すべてに共通する永遠の課題といえます。

今回のnoteでは、効果測定の理想と現状、具体的な手法についてつらつらと紹介していきます。

【前半】原則と実践的思考

原則やあるべき論は存在する

AMECというコミュニケーションの効果測定・評価を議論する国際団体は、効果測定に関する「バルセロナ原則2.0」を2015年に発表しました。
そして2020年7月には3.0に更新されています。
この原則は日本でも大手のPR会社などが導入しているスタンダードな考え方です。

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上記の文章は意訳しています。原文の「Barcelona Principles 3.0」を読むと、各項目の補足も記載されているため意味を理解しやすいです。

書かれていることの多くは企業活動における様々な測定・評価と大差ないですが、特徴的な点は下記のとおりです。

●ゴール設定は重要
 → ゴールの解像度が粗い、定量情報がないことが広報・PRでは多いため、せっかく測定した定量指標を評価できないことがあります。

●長期的な影響(潜在インパクト)にも目を向けよう
 → 広報・PRの計画は長期に及びます。表出している短期の結果だけでなく、水面下でどのような動きがあるかにも目を向ける必要があります。

●広告換算値は本質的な指標ではない
 → いわずもがな。広報・PRの影響は多面的に捉えないといけません。

具体的な手法は企業によって様々であり、それでいい

バルセロナ原則3.0で規定されているのはあくまでも測定・評価の原則であり、具体的な手法については定められていません。

恐らく「アウトカムの計測は大事」「潜在インパクトに目を向けよう」「オフラインPRも測定・評価しよう」「ゴールから逆算して目標設定しよう」ということは広報・PR担当者なら当たり前かつそうしたいと常に考えているはずです。
最適な手法が見つからないことで、有効な測定・評価を行うことができないのが現状でしょう。

私個人の考えですが、測定・評価は改善のアクションに繋げるための仮説検証を立案したうえで行うのがベストです。(※)
詳細な計測にばかり注力しすぎて、広報・PR担当者のアウトプット、そしてアウトカムが最大化しないということは避けるべきです。
簡潔にいえば、自社に合った測定・評価を行うことが重要だと考えています。

※もちろん出来る限りの計測はするべきですが、知ることだけで終わる計測には意味はないと考えています。

他企業の効果測定の実態

多くの企業では、メディア掲載数などの容易に計測できる指標とその他施策の定性的な結果を組み合わせて評価しているようです。(※)
掲載数は前期比の数字に加えて、効果的だった露出について、SNSなどは「だいたい8割くらいは肯定的な反応の様子」「●●という反応は多い」というくらいの定性情報によって評価していることが多そうです。

他部門が使っているようなMA、SFA、CRMのようなBIツールは活用されておらず、スプレッドシートとドキュメントツールの活用がほとんどの印象です。

もちろんそれがすべて間違っているとは思いません。
少ないリソースで広報・PR部門としての最大のアウトプットを行うために、より施策の方に注力していると明確に選択している担当者が多いからです。
一方でやはりどの担当者も効果測定には課題を感じています。

※少ないn数のヒアリングと、経験による超主観イメージでざっくり書いています。

アウトプットよりもアウトカムを計測しよう

バルセロナ原則3.0をはじめとする効果測定の理想やあるべき論は、多くの企業においては人的コスト、金銭的コストの問題で実現は困難ですが、それでもより理想に近い効果測定に近づける方法はあります。

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私が考える広報・PRは、企業・事業の中・長期目標をコミュニケーションによって支援すること。大目標は事業貢献です。(※)
行動によってアウトプットが生まれ、さらにアウトカム、事業貢献へと繋がっていきます。

効果測定においては、より目標に近い指標を計測することが重要です。
メディアアプローチやプレスリリース配信のような行動指標よりも、メディア掲載等のアウトプットを、さらにサイト流入や指名検索数、SNSでの波及数(ポジネガも)などのアウトカムを計測することがより目標達成度合いの評価に繋がります。

メディア掲載数などのアウトプット計測で留まっている方も、アウトカム計測を行うことでより本質的な指標を捉えることができます。

※このあたりの考えについては下記の資料にも書いています。主観ですみません...m(_ _)m

【後編】具体的な効果測定手法

測定・評価の具体的な手法

自社に合った測定・評価とは、自社で重要視している領域において必要な定量・定性指標を収集・分析できているかということです。
簡単に例を挙げると、プロダクトPRにおいては認知度を上げることが重要です。サイト訪問者数や指名検索量は、認知度向上を測るための指標の1つになるでしょう。

上記のような指標で測れないものも存在しますが、具体的な手法についていくつかを紹介します。

難易度【低】 アウトプット計測

●Webクリッピング
Webメディアでの記事掲載を調査するクリッピングは必ず行うべきです。
具体的な手法としては、クリッピングサービスの活用、またはGoogleアラートを活用することも有用です。

※Googleアラートで取得した記事をスプレッドシートに繋ぎこみ、Webクリッピングツールを自作する方法は下記のnoteで紹介しています。

また、上記のWebクリッピングツールの活用方法でおすすめしたいのは競合企業のクリッピングです。
自社の掲載数の増減だけを見ていても、業界の盛り上がりなどの外部環境により評価が難しいものです。競合企業の掲載数等を見ていくことで、業界全体の状況に対してのメディア露出を測ることができます。

難易度【中】 アウトカム計測

●ソーシャルリスニング
主にTwitterを対象にして、自社名、自社プロダクトについての投稿を収集し、ポジティブ/ネガティブの評価を行います。もちろんポジネガ以外のインサイトを得ることにも有効です。
理想としては、すべての投稿を取得し、ポジネガ判定を行って定量指標に落とし込むたいものです。それが難しい場合でもSlackの特定のチャンネルと連携して通知するなどフロー型でも計測していくことは最低限行いましょう。

※Webクリッピングツールと同じようにIFTTTで設定可能です。が、LAPRASは類似キーワードなどが多いため実施していません。

●サイト/LPのアクセス計測
自社サイトや特定のLPへのアクセス数を計測することで施策の反響を知ることができます。PV、UUだけでなく指名検索の数なども定点で見ていくと良いでしょう。
BIツールなどに連携して管理するのは難易度が高いですが、月に1度など定期的に情報を抜き出して広報・PR施策のタイミングと重ねてみることをおすすめします。

難易度【高】 アウトカム計測

●アンケート調査
Webアンケートやグループアンケートなど、アンケート調査を定期的に行うことによって自社・プロダクトに対しての態度変容を計測することができます。アンケートにはコストがかかり、また正しい手法で実施しないと誤った情報(それも説得力がある)を取得してしまうため、ベンチャー・スタートアップで実施している企業はあまり多くありません。

おわりに

効果測定は広報・PR担当者にとって永遠の課題です。
効果は定量で表れず、短期では生み出せないこともあるからです。
一方で、そういった背景から定量化から逃げてしまっているケースも多くあると感じています。出来うる限りの計測を行い、定量・定性ともにより事業貢献に近い指標で評価していきたいものです。

また、全体的にマーケティングPR向きの話が多くなりましたが、広報・PRの領域は多面的です。それでも同じような考え方で進めれば大きな間違いはないはずです。


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