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山口法子さん 個展『おいてかない』(ondo gallery)

ノアの方舟。方舟に乗れた者に我が身を重ねる特権意識と傲慢さ。方舟に乗れず/乗らずに残された者に寄り添わぬ想像力の貧困。
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山口法子さん 個展『おいてかない』(ondo gallery)
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ノアの方舟に乗らなかった者たちのその後の暮らしを描いた「おいてけぼりの方舟」、という視点に盲点をつかれます。
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おいてかれた者たち(人も動物も植物も、霊性を帯びた存在も)が残された地でつむぐ、やさしくて毅然としてわけへだてないつながりと、その背後にあるいつまた洪水がくるかわからない厳しい世界と、だからこそひとときの豊かさやあたたかさと。
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空想のようで現実。天井のない監獄においてかれている人々をはじめ、身近にもいるおいてかれて存在を認知されすらしない(だから忘れられすらしない)人たちのことを思います。
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おいてかれても、可哀想なわけじゃない。おいてかれても、美しい。でもおいていく世界は、望みたくはない。素晴らしい個展でした。
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清澄白河で日曜まで。実際に見て感じてさまざまなものがたりを想像してほしいです。


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